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エピソード13 帰還

Episode13

登場人物

加地 伊織:主人公

吾妻 碧:幼馴染み?

館野 涼子:妹?

源 香澄:色々始めてのヒト?

池内 瑠奈:お姉さん?

難波 優美:友達?恋人?


伊織、駅の自動販売機で悩む


伊織:「どれ買えばいいんだ?」


パソコンのモニターほどの大きさのタッチパネルに無数のボタンが並んでいる。


伊織:「パーキングじゃないよな。 ロンドンユーストンを選べばいいんだっけ? スタンダードとファーストとオフピークとエニタイムとリターンとデイリターンとどれにすればいいの?」


碧:「私が知ってる訳ないじゃない。 なんで調べとかないのよ?」


伊織:「トラベルカードゾーン1to6って何だ??」


碧:「なんで地●の●き方くらいもって来なかったのよ。」


伊織:「なんでも俺の所為なの?」


碧:「当たり前でしょ、あんたが責任取らないでどうするのよ?」


まあ、こういう事態に落ち着いたすべての原因は伊織にあると言えば…その通りである。


伊織:「窓口で買ったほうが良いかな?」

碧:「あんたが喋ってよね。 言っとくけど私英語喋れないから。」


涼子、伊織の肩をポンポンと叩く



碧の要請でロンドンに出かけることになった。 涼子もくっついてきている。 要するにサイトシーイングである。


碧:「私イギリスに来たのにどっこも観光してなかったのよね。」


香澄はあれ以来なんだかつれない。 口をきいてくれない

優美は観光には興味ないらしい。

瑠奈は何だか鳥越啓太郎とのやり取りで忙しい。



あの事件の二日後にはヨリマシの精神も復活して元の香澄たちに戻ることが出来た。


結局コインは反対側のポケットに入っていた。

あまりにも危険な代物だということで厳重にテープで封印された後、香澄が管理することになった。



最終的に、碧が近くを歩いていた日本人を捕まえてどの切符を買うのが良いのか聞いた。 で、トラベルカードゾーン1to6のオフピーク、デイという切符を買うことになった。 要するにオフピーク専用で、ゾーン6と言う結構広い範囲まで地下鉄もバスも含めて一日乗り放題…という意味らしい。


ヴァージンに乗ってロンドンイーストンへ


碧:「伊織、私が今一番したいこと何だか知ってる?」

伊織:「ロンドンアイに乗るとか?」

碧:「何言ってるの? まずは日本食よ!」

伊織:「明後日には帰れるじゃんか。」

碧:「あんた、私がどれくらいイギリスご飯で我慢してきたと思ってんのよ。 もう限界よ。 絶対うどん食べに行くわよ!」


何でも、うどん屋だけはしっかり調べてきたらしい。 ロンドンのフィースストリートという所にある店で、ロンドンユーストンから地下鉄に乗り換える必要があった。



長いエスカレータで結構深くまで降りる。 とにかく地下鉄が縦横無尽に張り巡らされているので、一体どの線に乗ればいいものやらさっぱりわからない。


まるで昔の映画に出てくるようなSF地下都市っぽいつくりのこじんまりしたドーム状の通路を進んで、ようやく狭いプラットフォームに到達する。



碧:「こっちの地下鉄って小さいのね。」

伊織:「というか、お前英語しゃべれないのに良くわかるな。」

碧:「こういうことは気合よ、気合。」


こういう時はスマホが便利だ。 乗るべき地下鉄の種類から、歩く道まで懇切丁寧に教えてくれる。 しかし、残念ながら地下では電波が届かないので役に立たない…



ノーザンラインでトッテナムコート・ロードまで行く。 そこから歩いて5分ほどのところに噂の店はあった。


昼飯時だったので、結構人が並んでいる。 それでも待ってようやく席に座る。 伊織と涼子はざるうどん、碧は鴨鍋うどんを注文する


伊織:「普通に美味いな! ここのうどん。」

涼子:「…!」


涼子、無言だが…何か感動しているらしい


碧、泣いている



碧:「次いくわよ!」

伊織:「次って、どこ?」

碧:「そんなもん、買い物に決まってんじゃない! まずはキャス行くわよ!」

伊織:「何それ?」


碧、俄然元気が出る。

一同、バスに乗ってメリルボーンストリートまで


伊織:「この切符、バスも乗れるんだな。」

碧:「あのおじさんがそう言ってたじゃない。 あんた話聞いてなかったの?」


何でもイギリス発の人気ブランドらしい。

伊織、店の前のベンチで休憩

碧、涼子、店に入ったっきり出てこない。



ロンドンの地理が良く判らないから、かなり非効率に行ったり来たりしているはず。 とりあえずビッグベンを見て、今度はウォータールーの川沿い、ロンドンアイの真下まで来た。


結構な賑わいで、学校の遠足だろうか? 子供たちも大勢居る。 骸骨やゾンビに仮装した連中が観光客相手に写真を撮ろうと話しかけていた。


伊織、したたか疲れてベンチで荷物番

碧、涼子、屋台に飲み物の買出し




一人の男?が伊織を見ていた。

痩せてはいるが骨ばったガタイ。 目の周りの濃い隈。どうやらメイキャップではないらしい。 男の額には、何だかプレートの様なものが埋め込まれていた。 そのプレートには、ローマ数字で VIII と書かれている。



男は何気なく左手の掌を伊織に向ける。

手品でも始めるのかな? と思っていると…掌から二の腕が左右にぱっかりと割れた!


開いた腕の中から銃口らしきものが出現する!

当然、間髪入れずに発射される銃弾! しかも二発!!


伊織がそういう一連の異常に気が付いたのは、…その銃弾が伊織の目の前で止まっていたからだ。


いつの間にか放たれていた青龍のカーボンファイバーのネットが弾丸を捕らえていた。



一瞬! 銃声に驚く周りの人々!

間髪入れず鳴り始める爆竹の音!


青龍のビジョンが伊織の頭の上に出現していた。


すぐ傍まで戻ってきていた涼子の首にはヘビのビジョンが出現している。


出現した玄武は伊織の命令を待たずに男に攻撃を加える!

怪しい男にまとわりついたミストがどんどん男を溶かしていく。 溶かされながらも攻撃を続ける怪しい男! 再び放たれた銃弾が、今度は涼子の肩を打ち抜く!


伊織:「涼子!」


涼子、よろめく、致命傷ではないようだ。


碧:「何なの? こいつ!」


見ると、溶かされたはずの男の身体が、再生を開始していた。


伊織:「聖獣か?」


碧:「こいつを止めて!」


青龍、碧の号令で男の身体を作り変えようとするが、キースの時と同じように通用しない。



伊織:「とりあえず逃げるぞ!」


一同、走る。


涼子の身体は玄武が支配していないので再生しない。

肩からは血が流れ続けている。 伊織は涼子をかばいながら人ごみを走る。


結構走って巻いたつもりだが、すぐそばに再び怪しい男が現れた。


額のプレートには ローマ数字の IX

伊織:「こいつ、さっきと違うやつだ。」


怪しい男は2本のナイフを取り出して両手に構える。


玄武が、男の体内の水分を結晶化させて凍らせる!

男は、凍ったままの身体を引き裂きながらも襲いかかってきた!


むき出しになった骨格は金属製?


伊織:「こいつ? ロボット?」


ようやく玄武が金属の骨格もろとも男を溶かす。 膝を突き、地面に崩れ落ちる怪しい男…。



ところが、もう一人が追いついてくる。

さらに別のもう一人も出現! 左右から伊織たちを挟み撃ちにする。


伊織:「こいつら、一体何人居るんだ!」



周りの人達は、あまりの異常さに、これをイベントか何かと勘違いしているらしい。 遠巻きにして見物し始めた。


野次馬の中に、どこかで見た事のある男がいた。

少し赤毛が混じった長髪で彫りの深いラテン系のハンサム。 2m近い長身はかなりがっしりした筋肉質。 皮のチョッキにジーンズとブーツ、何故かギターケースを携えている。



赤毛の男の背中に光の翼が展開する!

すると同時にプレートの男たちは、眩しく発光して一瞬の内に熔解した。


伊織:「お前…。」

ディビッド:「もう少し警戒してもらわないと、困るな。」


プレートの男たちは、…今度は再生してこないらしかった。


ディビッド:「どうやら逃げたみたいだな。」


周りから拍手の嵐が沸き起こる。



碧、青龍で涼子の肩の負傷を治癒


伊織:「あんた、俺たちをボディガードしてくれてたのか?」

ディビッド:「偶然通りかかっただけだ。」


ディビッド、ギターケースを提げて歩き出す。




香澄、連絡を受けてユーストンまで飛んでくる


香澄、目が赤い。半泣きになっている。

何だか珍しくしんみりしている。 …でも一応抱きついてくる。


香澄:「ごめんね。伊織…。」


多分、微妙な心境なのだろう。



何しろ、自分は一体どういう立場なのか良くわからないのだから、悩んだとしても当然である。 香澄の肉体と精神は聖獣にすっかり食われて、つまり一度死んだはずなのだ。 しかも、最終的にそうしたのは伊織の独断なのである。 もしかたら怒っていたとしても仕方がない。



再生された記憶は自分の知っているもの。 自分の意思、ペルソナも何の違和感もなく自分自身のものの様に感じている。 本当に自分は元の自分なのだろうか? それとも全く別の人間になっているにもかかわらず、気づいていないだけなのだろうか。


伊織:「香澄はまじめだから悩むんだよ。 俺は何にも深く考えなかったけどね。」


伊織も数ヶ月前に一度死んで、作り直されたのだった。 


香澄が久しぶりに微笑む。


香澄:「名前で呼んでくれたね。」





成田空港 到着ロビー


香澄、伊織に長いキス

香澄:「もう当分会えないから、もう一回。」


優美:「みっともないから止めなさい!」



瑠奈が何故か香澄に抱きつく。


瑠奈:「香澄ちゃん、また飲もうよぉ!」

香澄:「遠慮しとくわ、あんた酒癖悪すぎ!」


瑠奈、伊織の前で可愛らしく指をくわえて上目遣い。


瑠奈:「伊織、今日うちで打ち上げしない?」

伊織:「いや…遠慮しておきます。」





碧の家の前、


碧:「どうしよう伊織、私がもう一人居るよ~」

伊織:「お前がやったことだから仕方ないだろ、俺はお前ん家「出禁」だから、これで帰る。 じゃ!」

碧:「あっ! 薄情モノ! あんたちゃんと責任取りなさいよぉ!」



すったもんだあった末、最終的に日本に戻った碧は、青龍の力で二人の碧を一人の碧に合体させた。 2倍になった質量の半分は大気へと還元し、双方の記憶を共有する。


碧:「私…頑張ったんだね。」

碧:「私もね…。」


碧、一人泣き


伊織:「ところで掌の傷はどうしたの?」

碧:「残しといた。 今んとこね。」





伊織、涼子と一緒に家に到着


母親:「伊織、頼んでおいたお土産は?」


伊織、すっかり忘れてる

涼子、抜け目無く買ってある


母親:「やっぱり涼子ちゃんに頼んどいて良かったわぁ、 あんた、うちの子になりなさい!伊織にはちょっともったいないけどね。」


涼子、頷く





その夜 優美が尋ねてきた。

伊織、眠る涼子を起こさないように家を抜け出す。



月明かりの公園のベンチに腰掛けると、シロが伊織に擦り寄ってきた。


優美:「シロは私よりもミジンコの言う事を聞くのね。」


優美:「シロが私の心を消してしまわないようにしているのもミジンコ。 結局ミジンコが私のご主人様って言う事になるのかな?」


伊織:「俺はお前の友達だよ。 いや、俺はお前の友達で居たいんだ。 それだけで、何だか嬉しい。」


ふと見ると、優美がじっと伊織のことを見つめていた。 頬が赤い。 これは…恐らくビジョンの意思共鳴の所為?



優美:「私は…もう少し貴方とくっ付きたい。 多分、私 貴方の事が好きなのよ。 それで貴方にも私を好きで居てもらいたいんだ。」


優美のことを可愛いと思ったのは多分初めてだ。


優美:「駄目かな?」




月明かりの下で、二人はキスをした

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