テリュー
数日後、
宴の日だ。
タニアは、今度は一人で服を選ぼうとしたが、
「タニア、君は目を肥やしておきたまえ」
そう言う、ロックが、コーディネートした。
今度は、黄色のドレスだ。頭には大きい帽子を被っている。
宇宙船パウラ。
「タニア、こっちだよ、おいで」
「ええ、ロック」
ロックはタニアの手を取ると、エスコートした。
宇宙船の、コンピューターが対応する。
「オナマエヲ、ドウゾ」
「ああ、ロックと、タニアだ」
「ハイ、ロックト、タニア。……チェックOK」
しゅっ……、
と、扉が開いた。
「ドウゾ、ゴユックリ、オタノシミクダサイ」
「ありがとう、さ、タニア。行こう」
「ええ」
中へ入る二人。
優雅な光景が、目に入った。
「ああ、素晴らしい」
「ふふ、君は、すっかり宴の虜だね」
「ええ、こんなの、今までになかったもの」
そういって、一人で踊りの間まで滑るように近づいた。
宇宙船の天井を突き破るんじゃないかと思うくらいに、
大きな、白い城が建っていた。
オーケストラが曲を奏でる。
まあ、アイラと、さほど変わった様子ではない。
タニアは、覚えたばかりの、社交ダンスを踊っていた。
クラシックが、彼女の踊りを讃える。
また、男性が集まってくるか……、の所で、ロックが彼女の手を握った。
たたたーー、と、オーケストラの後ろまで逃げる。
「おい、ロック」
そんな声がした。ロックは振り返り、
「ああ、シイン、久しぶりじゃないか」
「ロックこそ」
すると、ロックと、シインは昔話に花を咲かせていた。
タニアは、その隙をみて、踊り場へ、
踊るタニア。
そのタニアに、いち早く話しかけてきた、男性はこういった。
「タニア、前の踊りの方が良かったのに、なぜ変えるんだい?」
「えっ?」
タニアは予想と違うその声に驚いて、男性を見た。
その人は、黒く長い髪と、白いタキシードを、少しだらしなく着ていた。
瞳は、トパーズのよう。
「君は君のままが良いのに」
「……貴方は?」
「僕は、テリュー」
「テリュー、貴方、私の前の踊りを?」
テリューは、頷いた。
「ああ。見たよ。そして確信した。
君は、僕と同じ、人間。そして原始の人だと」
「……そう、私は島から来たわ。何故知っているの?」
「タニア、どこかへいこう」
「ええ」
そのまま、二人は、テラスへ、
「タニア、くつろいで」
「ええ……テリュー、優しいのね」
「君がそうさせるのさ」
「私の、何処がお好き?このお顔?それとも……」
「僕は、君の“君な所”が好きなんだ。可愛いと思う」
「え?」
「その、声、その、しぐさ、その君な所が好きなんだ」
「お上手ね。私のことなんか、知らない癖に」
「そう、悲しいことだ……」
テリューは、悲しい顔をすると、
「だから、今日から、僕は、君について考え、知って行こうと思う」
「テリュー……」
「だから、お願いだ、君と少しでも話していたい」
「ええ、私も……」
二人は見つめ合った。
「タニアー!」
ロックの声が聞こえた。
「ロックだわ」
立ち上がりかけた、タニアの手を握った。
「?」
手の中に何かある。
手を広げると、
「これ……」
石を、ネックレスにしたものだった。
「君に……」
「テリュー……!」
「僕の事が気になったら、コンピューターに聞くんだ」
「タニア!」
「ロック!」
テリューは、ロックに気づかれる前にその場から、立ち去った。




