間違った選択
ブスリッ ドバァ
次の瞬間、俺の右腕に激痛が走った。
「えっ……?」
振り向くと別れ話をしていた彼女が手に血の付いた短刀を持っていた。俺の腕を深く切り裂いたのは間違いなく彼女の持っていた短刀だった。
「あなたが悪いのよ……あたしがこんなにも愛しているのに、別れようなんていうから……確かに浮気を疑ってあなたや、あなたの家族や友人を悪く言ったのはあたしが悪いけど……一番悪いのは、私に嘘を吹き込んで関係を迫ってきた……アノバカオトコデショ?」
彼女はそういうと恍惚の表情を浮かべながら短刀についた血を、まるで一滴も逃さにとでも言うかのよ
うに舐めていた。
「あなたの血、とても美味しい……、こんなに美味しいなら、もう食事は毎食あなたのチニクだけでいいわよね?」
俺は怖くなって彼女が血を舐めている隙に部屋から脱出した。
俺は自分のマンションから奪取した後近くの公園のトイレの裏に隠れ、自分のけがの状態を確かめた。
けがの状態は最悪だ。腕から出ていた血はさっき制服のブレザーで腕を縛ったから止まったけど、血を流しすぎたのか視界が定まらない。
(なんでこんなことになったんだよ。畜生!)
元々気が強くて明るい性格の彼女のここまでの変貌の原因は一週間前までにさかのぼる……
一週間前。俺は突然彼女から呼び出しを受けた。大学受験も控え忙しい時期で、正直デートなんかしている場合ではなかった。
「どうかしたのか突然?」
呼び出されていたファーストフード店に行くと彼女は先に待っていた。いつも凛とした雰囲気をまとった彼女ではあるが、今日は何処か怒気に似た何かを纏っていた。
「突然で悪いけどこれどういうこと?」
そういうと彼女は写真を二、三枚叩きつけてきた。そこには俺には全く身に覚えがないが、俺が他の見るからにギャルっぽい女とデートをしている画像だった。
「何だよこれ? 俺はこんなのは知らないぞ」
俺が知らないと言った次の瞬間彼女はすごい形相で、卑怯者やら嘘吐きやら言ったうえで、俺の家族や友人が俺がこんな人間だったと知ったらさぞかしショックでしょうねと吐き捨てた後、
「まあ、あんたの友人も嘘吐きばっかりだろうし、あんたの両親も陰で浮気ばっかりしてるんじゃないかしら?」
これには俺もさすがに切れかけたが、彼女はそれだけ言った後そのまま立ち去って行った。
それから俺は、このままじゃ下手すると悪い噂を流されるかもしれないというのもあり、大学に進学した先輩に相談してみると、噂と写真の出所を三日で突き止めてくれた。その結果浮き出てきたのは俺の隣のクラスの女癖の悪いチャラそうな男子生徒だった。最近彼女とよく話をしているという情報があり、後日先輩と俺とでそいつの女癖の悪さを証明する証拠と、写真に写っていた女子を見つけ彼女とそいつの会っている喫茶店に行くと、そいつは泣いている彼女に「そんな奴忘れて俺と付き合おうぜ?」 とか言っていたのでそのままそいつの席まで突入して証拠をばらまいた上で女子に証言してもらい、誤解を解いた後そいつは彼女にビンタされ、そのまま先輩に何処かに連れて行かれた。
その後、彼女と話し合いをすることになっていたのだが、俺の中では家族や友人を散々けなした彼女とはもう続けていきたくないとも考えていたので、そのまま伝えると
「いやぁ、あたし別れたくない。あなたが望むなら奴隷でも、ペットでもいいから傍にいさせてお願い。」
としか言わないので今回はそのままお開きにした後に、後日、俺の家で話し合うことになったのだが……
(それでこれじゃ洒落になってないって……)
今日の話し合いでもほとんど昨日と同じだったが、唯一の違いは、彼女がブツブツと独り言を言っていたことだ。黒い前髪が目を隠していて正直かなり無気味であったがそのまま俺はこれ以上お前とはやっていけないと言い続けていたが、ふと彼女が独り言を止めると次の瞬間、俺の右腕を短刀で深々と刺していた。正直あれはヤンデレかメンヘラか何かだろう。暗くなってきたし、ここで捕まったらかなり危険だ。
「ここにも長居は出来ないな。早く移動しないと……」
「アンタアタシヲオイテドコニイクキヨ?」
俺は驚いて声のした方向を振り向くと、そこには短刀を持ったまま佇む彼女が立っていた。逃げるにも彼女が立っている方に道があって、後ろには壁しかない。彼女は俺に近づきながら今までに見たことがない妖艶な表情を浮かべながらブツブツ言っていた。
「あたしがあなたや、あなたの周りの人のことを悪く言ったのも悪いし、あたしがあんな馬鹿男のいうことを信じたのも悪いのは分かっているよ?でもあたしはあなたがいないとダメなの。生きていけないの。それなのにどうしてあたしから離れていこうとするの?酷いよ」
俺のすぐ前まで来た彼女は俺を無理やり抱きしめて
「でもあなたがいない世界なんてもういらない。だから……アタシトイッショニイコ?」
恐怖で固まっていた俺はようやく意図を理解し、顔面蒼白になりながら謝罪した。
「俺が悪かった。何でもするから許してくれ!」
死にたくないと思った俺は必死で頼み込むと彼女は俺のよく知る明るい笑顔で笑った後に耳元でつぶやいた。
「嘘吐き」
彼女はそう吐き捨てると俺を押し倒して馬乗りになり、
「どうせ死にたくないからその場しのぎで言っているだけでしょ?あたしには分かるんだから!! あんたのことを手放すなんて絶対いや! だってあなたが最初に私に声をかけてくれたんじゃない!!」
泣きながら叫んだ彼女は今度聞こえるぐらいの声の大きさでブツブツと喋り始めた。
「あなたの不器用だけれど優しい心も私のモノ。私のことヲ写ス綺麗な目モアタシのモノ。アタシのあタまを撫でてクれるテもアタシノモノ。アナタノゼンブはアタシノモノ。絶対ニテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイテバナサナイ」
彼女はしばらくブツブツ恐ろしい言葉を言った後慈愛に満ちた、しかし目には光の代わりに狂気を宿した状態でひとこと言った。
「好き……大好きよ……」
「アタシダケノモノニシテアゲル」
そう言った次の瞬間に俺の首元にナイフを突き刺した。薄れゆく意識の中、首から血を吹き出すのを見ながら俺は何を間違えてしまったのかだけをただ考えていた……
終わり
おはこんばんちはドルジです。今回は前から書いてみたかった普段は気が強いけど彼氏に病的に依存している彼女と、修羅場を通してその彼女を捨てようとする男の話が書いてみたかったので書いてみました。
正直言うと彼女の性格が少し悪く(自分勝手)なったかなぁと思ったのですが僕としてはこれぐらい言われないと騙されていた彼女と別れようだなんて思わないのでこんな内容にしてみました。
実はこの小説には元があり、元は高校の時に隣のクラスの友人に嫌がらせで書いたヤンデレ小説で、それを元にアレンジしてみました。
正直話す内容がなくなってきたので最後に【彼】と【彼女】のプロフィールを書いて終わりにしたと思います。
【彼】
身長180cm 体重78kg
部活 バスケ部
趣味 バスケ 食事 寝ること
【彼女】
身長163cm 体重49kg
髪型 ロング(黒髪)
スリーサイズ B81 W59 H80
部活 バスケ部のマネージャー
趣味 散歩 猫の世話 スポーツ鑑賞