次の場所
「おい。」
!!!・・・・・見つかった!声のする方を見ると私より頭1つ大きな男の子が立っていた。
警察官じゃなかったとホッとする私。
突然男の子が私の手を引っ張り「早くしろ!こっちに来るぞ」と走り出した。当然私の手を引っ張っているのだから私も一緒に走りだしたことになるのだけど・・・
知らない細い道を走り、道路を横断しまた細い道を走り抜けていく。
もう息が切れて走れないっっもうムリ・・・
そう思ったところで歩き出す男の子。周りを見ると民家が並ぶ知らない場所。並んだ民家の向かいは海の香りのする川が。
きっと海が近い川の河口付近なのだろう。
並んでいる民家の前の道を奥に進んでいくとボートと小屋があるのが見えた。小屋の前で男の子は止まって振り返りニヤッと笑って川に止めてあるボートにヒョイッと乗ってしまった。
警察からは逃げるのに成功したみたいだけど、また変なのに関わってしまった気がする。
そう思いながらも笑顔で手招きをされ、ついボートに飛び乗ってしまった。
乗ってから気がついた。その男の子の他に2人別の男の子がいたことに・・・
2人の男の子は異様な笑いを浮かべていた。変な臭いがする。この臭い知ってる・・・シンナーだ。
マズイのと関わってしまったので適当に誤魔化してさっさと逃げようと心に決めた。
様子を見て察したのか助けてくれた男の子は「俺はしないから安心して」と声をかけてきた。
2人のラリった男の子から少し離れてボートの先端に腰掛け隣の隙間をポンポンと私を呼ぶように軽く叩いた。
促されるまま隣に座る私。何してるんだろう?私
「あの公園に何日もいたろ?俺見てたんだ」ふいに喋りだす男の子。男の子は裕というらしい。
「家出でもしてたの?」裕は笑顔で聞いてきた。
「うん。・・・・」それ以上は言うつもりがなかった。聞かれたくもなかったからそのまま黙って座っていた。
しばらく沈黙が続いたボートの上で裕が突然喋りだす。
「夏ももう終わりだなぁ~」
「そうだね」テキトーな相槌を打つ
「外で寝るのは、そろそろムリだと思うよ」
裕は家出はもう終わりにしろと言ってるのだろうか?でも帰りたくない・・・自然に私の手が涙の出そうな顔を隠すように動いた。
黙って見つめる裕の視線を感じる。
見つめる・・・見ていたのは私の左の手首・・・
何本もの傷跡
裕はそっと私の左手を掴み自分に寄せた。何が起こったのか私は突然すぎてただ見つめるしかなかった。
裕は私の傷の1本1本を指でそっとたどり最後の1本をたどった後、自分の掌をかぶせて笑顔で私の顔を覗き込んでこう言った。
「今日から俺の家で寝ればいい」