3日
「美那もう帰ろうよ~3日も公園に座ってるよ?」
さっきから私に向かって言い続けてるのは幼馴染の響子である。
「帰りたかったら響子だけ帰ったら?私に付き合うことないんだよ?響子は家族が心配してるんじゃないの?」
私も同じく響子に言い続けている。
「だから美那が一緒じゃないと帰りたくないんだってば~」
響子は私を1人置いて行く事が心配で3日ここに一緒に座っている。
なぜ3日も座ってるのかって?家に帰りたくないから・・・
家には姉と父親と祖母がいる。
姉は私がここにいる事を知っているが、どうして家に帰らないのかも聞かないし、家に帰るよう促すことしない。きっと呆れているのかもしれない。
祖母は昨日ここに来た。たぶん姉から聞いて心配してきたのだろう。帰らないの?と聞かれたが、帰りたくないと言ったら食べ物にも困るだろうとお金を少し置いていってくれた。
深夜になり睡魔に襲われ2人で大きな滑り台にもたれて眠りに着いた。
顔に光が当たり眩しくて目を開けると警察官が私達の顔を照らしていた。
「君たちだね?ここ何日も公園にいるというのは。近所の人から連絡があって見に来たんだ」
警察官は私たちをパトカーの中に放り込み警察署に連れて行きそれぞれの家に連絡をした。
響子の家族はすぐに迎えに来て警察官に頭を下げ、響子の手を引っ張り連れ帰って行った。
私の親はというと・・・「勝手に出て行ったんだから勝手に帰ればいい」と言って電話を切ったらしい。
そう言われて当然と言えば当然だが、警察官は呆れた顔をしながら私に話しかけてくる。
「迎えに来ないとココから出られないんだけどなぁ~どうしようか」
別の警察官が温かい缶コーヒーを私に差し出しながら声をかけてきた。
「どうして家が嫌なのか話を聞かせてもらえないかな?」
缶コーヒーに釣られたわけではないけれど、私は話ながら涙が勝手に出てくるのを必死で我慢した。
嫌だと言ってもお風呂に一緒に入ってくること。カギを閉めて風呂に入れば出たときに殴られること。
毎晩アルコールの臭いをさせながら私の布団に入ってくること。
その先のことは泣きじゃくって言葉にもならなくなっていた。
そこまで話すと警察官は、もういいよと肩や頭を優しくなでながら渡されたコーヒーを飲んで落ち着こうと促してくれた。
心が落ち着くと自分の話したことを後悔した。たぶんこの先どこかに連れて行かれる気がして心配になってきた。
周りをよく見ると別の警察官が電話を掛けている。耳を澄まして聞いていると児童相談所と電話で話しているのがすぐに分った。
私はトイレに行きたいと警察官にトイレの場所を聞いてトイレに向かうフリをして階段を下りて行った。私が子供だと思って安心してたのか、思ったよりも簡単に警察署を抜け出せた。
出てきたのはいいけれど・・・さてどこに向かえばいいのだろう。
子供の私が行く場所など最初からあるわけもないのだが。先が決まらぬまま、さっきまで3日座っていた公園に到着してしまった。
ここにいたらまた警察が来るんだろうなぁ~・・・と思った矢先。入ってきた道と反対側の木の隙間からパトカーらしき赤い光がチラリと見えた。
「ヤバ・・・もう来ちゃったの?どこに行こう」
私は焦りつつ、入ってきたところから出た。