プロローグ
初めまして、LIONと申します。小説を投稿するのは初めてで、表現や話の運びなど拙い文章だとは思いますが、一人でも多くの方に楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
この小説はいわゆるゾンビものです。私はダークでシリアスな話が好きなので、苦手な方はご注意ください。
「ぎゃあぁぁぁっ! 痛い、痛いぃーっ!」
「いやっ……いや、来ないで、来ないでぇぇー!」
「や、やめっ……うわああぁっ!」
私――伊東皐月――は今、数多の絶叫が響き渡る廊下を全速力で走っている。一体何が起きているのかというと、この騒動の渦中にある私でさえもとても信じられないようなことだ。だって、こんなこと治安のいい平和な現代日本で誰が信じてくれるだろう――私の通う大学のキャンパスのいたる所で、無差別で残虐な大量殺戮が行われているなんて。それも普通の殺人とは違う。人が人を食い散らかす――カニバリズムのお祭りだ。
こんな非常事態なので当然同じ大学の仲のよい友達の安否が心配だが、他の人の身を案じてもいられない。少しの気の緩みが、自らの死につながる。こうしている間にも背後から殺戮者の気配が、呻き声が迫ってきているのだ。
死をこんなにも身近に感じることになる日が来ようとは考えてもみなかった。宇宙人やモンスターの襲来なんて、空想上の出来事だと心の底から信じて疑わなかった。でも今となっては平和だった日常の方が嘘のようにも思える。いや、十数分前までは確かに平和だったのだ。退屈な講義中、いつものように居眠りをしたあの時までは。