第一話 僕たちが天文部に入るまでby楓4
「全授業終了! 帰ろう、お兄ちゃん! なつめちゃん!」
「ちょっと待って。今かたづけるから」
僕となつめちゃんは帰る支度をする。
そのとき、校内放送がはいった。
こういうのは自分に関係無いとわかっていても、聞いてしまうものだと思う。
放送で流れた声は大人っぽい女の人の声だった。それと、少し聞き取りにくいけれど注意するような男の人の声も聞こえる。
“ちょっ! やめろ! 生徒が無断で放送するのはいけねぇんだよ!”
“うっさい。別にいいじゃない? これくらい”
“イヤ、ダメだって! 俺が注意されるんだって!”
“もう、しつこいわねぇ。……………………堕とすわよ”
“どこに!!?”
“そんなの……。フフフッ……”
“不気味に笑うなっ! お前の場合マジでなにかありそうで恐いわ!!”
“じゃあ使ってもいい?”
“…………はぁ、もう勝手にしろ”
“オッケー。え~、では、生徒の呼出しをしま~す。一年C組、桐谷楓くん、桐谷梓さん、来栖棗さん。至急部活棟五階、天文部部室に来てください”
ブツッという音とともに放送が終了する。
………………えと、何コレ。それに……。
「なんで僕たち呼ばれたの?」
僕はそう言うと梓となつめちゃんの方に振り返る。まさかこんなはちゃめちゃな放送で自分が呼ばれるとは思ってなかった。しかも天文部に。いや、天文部だからこそ、はちゃめちゃなのかもしれないけど。
「さあ?」
梓は、こっちが聞きたいといった顔で返事をしてきた。
「……行ったほうがいいのでしょうか?」
なつめちゃんがおずおずと質問してくる。その質問に梓が答える。
「いいんじゃない、行かなくても。あの天文部だし。行ったら絶対ろくなことないよ。さっきの放送からしてもね」
この学校の天文部は、いろいろな意味で“有名”な部活で、先生達の悩みの種だそうだ。噂によると、天文部とは名ばかりで、やっていることはオカルト紛いなことらしい。そのうちの一つで有名なのが、一夜にして校庭に巨大な魔法陣を描いたとか。噂好きな友人に写真を見せてもらったけど、凄く細かいところまで描いてあってとても一日で描いたものだとは思えなかった。いったいどうやって描いたんだろう。
「さあ帰ろう」
梓がバッグを持って教室から出ようとする。その時、また校内放送がはいった。
“え~、さっき呼んだ三人。もし来なかった場合、これからの学校生活、天文部行っとけばこんなことには……、って後悔することになるんで、来ないと大変だよ~☆”
ブツッ………………。
(明るく脅してきた!!)
三人同時に心の中で叫ぶ。
「……お兄ちゃん、どうするの? あの天文部だったらやりかねないよ」
梓が僕に決定権を握らせてきた。というよりそこまで言われたら行くしかないと思うんだけど……。
「………とりあえず行く?」
「そ、そうしましょう」
なつめちゃんが賛成してくる。もう既に脅しに屈してしまっている模様。
「……よし、それじゃあ、行こうか」
そして僕たちは行きたくもない天文部に向かって歩きだした。