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第十三話 閉まった理由は聞かないよーに!by楓

「先輩……、もしかしてこれって……」

 僕は心配げに扉の前で屈み込んでいる先輩を見る。

「……閉じ込められたな」

 ポツリと。本当にポツリと小さな声で先輩はそう言った。

 …………………………。


 体育倉庫に閉じ込められました。


「って! どうするんですか!?」

 先輩に向かって喚く。こうゆう場所は大嫌いだ。

「落ち着け。今は状況を判断するんだ」

 先輩が真剣さを際立たせて、僕たちが今、どういう状況下に置かれているかを確認していく。なんだかいつもと違って頼もしい感じがする。

「まず、ここがどこかだ」

「いちいちそんなの確認する必要あるんですか?」

 そんなの二人とも理解しているから別にいらないと思うんだけど……。

「ある!」

 しかし、先輩はなんだか絶対に必要といった感じで断言する。

「……わかりました。……ここは体育倉庫です。ちなみに普段使っている体育倉庫とは違い、普段の授業とかでは使わないようなものばっかりなので、大体数ヶ月に一回しか開けられません……」

「…………そういえば、……そうだったな」

 僕が言った絶望的な言葉に感慨深げな表情で相槌を打つ先輩。

「…………………………」

「…………………………」

 ガクンと二人とも膝から崩れ落ちた。

「……僕たちここで死ぬんですね」

 諦めの言葉が口を出る。

「いや、まだ諦めちゃいけない。きっと誰かが助けに来る。とりあえず今は状況判断を続けよう」

「……わかりました」

 先輩の言葉に元気付けられ、提案どおり今の状況を判断することにする。

「よし! それじゃ、どうして俺と楓がこの体育倉庫に来たのかを述べるんだ」

「先輩に強引に連れ込まれて……」

「おいこら。なにデタラメ言ってんだよ! ここに来たのは楸先生に頼み事されたからだろ!」

「懐かしい……、名前ですね……」

「なに哀愁漂わせてんだよ!! 先生可哀相だから!」

「で、どうやって脱出しましょうか……」

「俺の言葉無視か! でもなんか自分自身よりも楸先生の方が可哀相に感じる!」

「さて、ケータイを持ってなく、外部と連絡取れないこの状況で、どうやって閉じ込められていることを外の誰かに訴えるか……。ちなみに体育着着用中」

「最後の一言はいるのか?」

「状況説明ですよ」

「あっ、そ」

「……ウザい反応ですね」

 先輩の“もうどうでもいい”みたいな投げやりな態度にイラッときたから、とりあえず足をおもいきり踏み付けてあげた。

「痛ッ!!」

「ざまぁ」

「……なんか急に黒くなってないか、お前」

「そんなことはないですよ。それよりここからどうやって脱出するかですよ」

「そうだな。……でも」

 先輩がそう言って周囲を見渡す。そして僕に向き直ると、

「どうしようもなくね?」

「それを言っちゃおしまいですよ」

 ……………………………………………………。

「……助けが来るまで暇だな」

「ですね」

 ……………………………………………………。

 なんだか辛気臭い空気になる。何を話したらいいかわからない。こうゆうときこそ、テンションを上げなければ! そんなわけで!

「先輩! とりあえずすべらない話を!」

「急な無茶ぶりすんな!」

「じゃあ最近あった面白い話でも……」

「あんまり変わんねーよ!」

「そんなこと言わずに……」

「……ったく、仕方ねぇな」

 先輩は渋々とした様子でそう言うと、最近あった面白いことを記憶の中から探りはじめた。

「えーっと、そういや数日前にこんなことがあったな」

「なんですか?」

「ファミレスでバイトしてたときに、」

「ふわぁー」

「あくびすんな。楓からやってって言ってきたんだから責任持って最後まで聞け」

「……わかりました」

「で、バイトしてたとき、そこに友人達が来て、」

「…………すぅ……」

「寝んな!!」

 パチン! という手と手を叩く音が聞こえて、意識が覚醒する。

「……ん、……なに?」

「『なに?』じゃねぇし! ちゃんと話を聞けよ!」

 先輩、……煩いなぁ。

「……わかりましたから、チャッチャと十三文字くらいにまとめて終わらせてください」

「十三文字とかいくらなんでもムリだから!」

「じゃあもうしなくていいです」

「やらせといてそれはないな!」

「じゃあ……、……壁にでも話しているんだな」

「ス○ールか!? スコー○のか!?」

 今日も先輩のツッコミは健在らしい。

 梓やなつめちゃん相手だとほぼツッコミに徹している自分だから、こうゆう状況になったときはボケたくもなるのだ。……人間とは欲深な生き物だなぁ。

「なにちょっと悟ったような顔で明後日の方向向いてんだよ」

「……人間の欲は収まることがないんだなぁ、と改めて感じてました」

「なんで今?」

「いろいろと思考しているからですよ」

「…………そう」

 なんか先輩は諦めたような調子でそれだけ言うとゴロンと仰向けに寝転んだ。なんか癪に障る。

「エルボォゥッ!!」

 自分は腹立つ気持ちの解消法として、全体重を込めた、全身全霊の力を使った肘打ちを、その無防備な腹部に叩き込んであげました。

「――――――――ッッッ!!」

 声にならない悲鳴を上げた先輩は、お腹を押さえながら床上で暴れ回る。なんともまあ、可哀相。

「先輩……、ご愁傷様」

 憐れみの視点とセリフ、丁寧に合掌も付け足してお辞儀しといた。

「…………………………」

 先輩が上目で僕のことを見てくる。その目は確実に『お前ヒドイ』ということを語っていた。

「それじゃあ僕は眠いんで寝ます。一人称は先輩に繋ぐんで、後を宜しくお願いします」

 もちろんそんな視線は無視して、つまらないから寝ることにした。

「ちなみに僕が寝ているときになにかしようとしたら……」

「したら……?」

 先輩がゴクリと唾をのむ。ちょっとした恐怖が顔に出ていた。

 そんな恐れを成した先輩に僕は笑顔で、

「コ・ロ・ス☆(口パク)」

「…………イエッサー……」

 先輩は恐怖で体を震わせながら僕の注意を聞き入れた。

 というわけで寝る~。

 自分は体育で使うマットに寝転がる。ここがあまり開けられないから埃が付いてたり、かび臭かったりしたけど寝れそうな場所はこの上ぐらいしかないから我慢、我慢。

「それじゃあおやすみなさい」

「あ~、おやすみ」

 諦めたような疲れたような返事が返ってきたが、やっぱり無視して眠りに落ちた。


     *     *     *     


 ……というわけで、何が『というわけで』かわからんけど、とりあえず一人称が俺に移ったわけですが……、

「なにもすることがないな」

 もう眠りに落ちているらしい楓を眺めながらあぐらをかいているこの状況。まったくやることがない。

 ……………………………………………………。

 ……………………………………………………。

 ……………………………………………………。

 ……………………………………………………。

 ……………………………………………………ハッ! なんにも考えつかないから危うく眠っちまうところだった!

「危ない、危ない。まさか一人というのがここまで恐ろしいものだったとは……」

 もうあれだな。一人でやる話はきっと作者書けないな。きっと今みたいにグダる。

 メタなことに思考を懲らしながらも周りを見回して、なんか面白いことを起こせないか考える。

「…………おっ?」

 そしたらあるものを見つけた。それを取りにそちらに近づいていった。

 予想通り雑巾。しかも何を拭いたのか、とてつもなく汚い。

「………………」

俺はそれを指先で摘むと……、

「えい」

 静かに寝息を立てている楓の顔に落とした。

「ゲホッ! ゲホッ! ゴホッ!」

 埃が気管に入ったらしく盛大にむせ返る。涙が頬を伝っていく。すっげえ苦しそう。

「ていやぁ!」

 むせ返ってた状態から唐突に握り拳が俺の腹部に飛んでくる。

「うおっ! 危なっ!」

 咄嗟に立ち上がり数歩下がる。

「ゲホッ! ゲホッ! 絶対……、ゲホッ! 殺す!」

 いままでに一度も見たことのない恐ろしい目で睨みつけられる。

 まさか楓の口から『殺す』という言葉が出るとは……。これはマズイ。ここから生きて出られる気がしない。

「お、落ち着け! クールになれ! クールになるんだ! 桐谷楓!」

「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」

 なんかケモノみたいに唸ってるんですが! 目つきも獲物を狙う狼などのようにとても鋭いんですが!

「マジで落ち着いて! 土下座ならいくらでもしますから!」

 土下座の準備完了で楓をなだめる。

 しかし、そのなだめは楓に効いているのかどうか、ゆっくりと俺のほうににじり寄ってくる。…………ムリ?

「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」

 あっ、ムリですねぇ。これはもう諦めるしかないや。

 全ての罰を受ける心構えはできた。


     *     *     *     


「お兄ちゃん大丈夫!?」

 私はそう言って体育倉庫の扉を勢いよくあけると、一仕事終えたかのように手をはたいているお兄ちゃんがこちらに背を向けて立っていた。

「おっ、梓だ」

 私の声に気づいて振り向いたお兄ちゃんは少し驚いたような顔をしていた。

「助けに来たよ!」

「ありが……、何でここに閉じ込められてるのわかったの?」

 お礼を言おうとしたお兄ちゃんが、ふと浮かんだらしい疑問を私にぶつけてきた。

「それは部長が、『そういえば今、体育倉庫に楓が閉じ込められてたりするんだよね~』って呟いてたからだよ」

「部長……、どうやって知ったんだろう」

 お兄ちゃんは半ば呆れ気味に呟く。しかしそこまで気にしてるわけじゃないみたい。部長に関することはもう大体何でもアリみたいな理解のしかたになってる。

「疲れた。アイス食べたい」

「じゃあコンビニでも行く?」

「じゃあ着替えないとね」

「じゃあ着替えたらコンビニ行ってアイスだ~」

「みんなの分も買っとこうか」

「そうだね~」

 私とお兄ちゃんは体育倉庫から出ると鍵を掛け、そこを跡にした。


 ……私はそのとき気づかなかったけど、体育倉庫の中では、綱引き用の縄でぐるぐる巻きに縛り上げられた、気絶した先輩が天井から吊り上げられていたらしい。


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