第一話 僕たちが天文部に入るまでby楓2
ハッと目が覚める。体中が汗だらけだ。
……なんだかすごく嫌な夢を見ていたような気がする。疲れがまったく取れた気がしない。
そんなことを考えながら枕に顔を押し付ける。
そのとき部屋の扉が大きな音を発てながら開き、妹が部屋に入ってきた。
「朝だ~! 起きろ~!」
そう言って僕の背中の上に乗って僕の体を揺すってくる。
「うぐっ……う、上に乗らないで~」
「いいじゃんいいじゃん、少しくらい」
「いや、少しとかないから」
「えぇ~」
妹は頬を膨らませてブーブー言う。
「えぇ~、じゃないよ……それで、そろそろ降りてくれないかな? 重い」
「女の子に向かって重いだなんて酷いなぁ、お兄ちゃん。嫌われるよ?」
「いいよ別に。それより、とりあえず降りてくれないかな?」
「はぁ、仕方ないな~、……………………………………………………だが断る!」
「なぜっ!?」
「それにはとても深い理由があるんだよ」
「……まさか、重いって言ったことを根に持った、……とか?」
「それは、…………………………………………なんとなくに決まってるでしょ!」
「なんとなくなの!? てっきりさっきのを根に持っての行動だと思ったよ!」
それからまた結構な時間じゃれあった。
そしてやっと満足したのか、妹は僕の上から降りる。そのあと僕はベッドから降りて妹を見た。
ここで妹の説明をしとこう。
名前は桐谷梓。少しクセがかかっている、肩にかかる程度のオレンジ色の髪で、少し強気な顔立ち。僕より少し背が低い。僕と同い年。……だけど双子というわけじゃなくて、義理の妹。小さい頃にとある理由で僕の家に引き取られた。僕をからかっては楽しんでいる。でもかわいいから許す。妹バカ。
「お兄ちゃん……」
「なに?」
突然梓が真面目な顔で僕と顔を見合わせる。ちょっとドキッとする。
「このままじゃ……、学校間に合わないよ」
「……え?」
時計を見るといつも朝起きてる時間から結構な時間が経っていた。
ちょっとじゃれあい過ぎたかな。早くしないと妹の言うとおり学校に遅刻する。
「よし、早く支度して学校行こう」
「うん、そうだね。早くしよう」
そうしてすぐさま支度をし、僕と梓は一緒に家を出た。