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第六話 初めて部室以外だけでの話by梓

 目が覚める。枕元に置いてある時計を見ると六時四十分ごろ。いつもより三十分早く起きてしまった。

 今日は梓が朝食とお弁当を作る番なので二度寝してもいいのだけれど、なんとなく起きることにする。

 ベッドを降りて大きく伸びをしたあと、リビングに向かう。

「梓、おはよう」

 リビングに入って台所にいる梓に挨拶する。

「おはよ~、早かったね~」

 梓は料理をしながら返事をしてくる。

「楓、おはよう」

「おはようございます、部長」

 椅子に座って新聞を読んでいた部長の挨拶に返事をする。

「顔洗ってきたら? サッパリするわよ」

「そうですね」

 部長にそう言われて洗面所に向かう。

 洗面台の蛇口を捻り、冷たい水をすくって顔を洗う。部長の言ったとおり、とてもサッパリして頭が冴え、

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 僕はリビングに向かって走った。そしてリビングに入って、椅子に座って新聞を読んでいる人物に叫ぶ。

「なんで部長がウチにいるんですかっ!?」

「随分と遅いツッコミありがとう。あ、梓、コーヒーもう一杯」

「はいは〜い」

 そう言って梓は部長の持っているコップにコーヒーを注ぎはじめる。

「何くつろいでるんですかっ!? そして梓もコーヒー注がなくていいからっ!!」

「え? あれ? 部長、いつからここに!?」

「気づかなかったの!!?」

 梓がとても驚いてたけど、僕はそれと同じぐらいそっちに驚く。

「これは私にも予想外だったわ」

 部長も驚いてる。

「まあ、それは置いといて、部長、どこから入ったんですか?」

 部長に尋問を開始。

「私にとって普通の鍵しかついていない家は、泥棒にとっての鍵のかかっていない家と同等よ」

 部長は格好よくそう言ってコーヒーを一口啜る。

「なに格好つけてるんですか。不法侵入で訴えますよ」

「できるものならやってみなさい!」

「あー、もしもし、警察ですか?」

「てやっ!」

 僕がそこまで言ったところで、部長が僕の持っていた電話を払い落とし、踏み付けて壊した。

「ふう、まさか本当にやるとは……。私は楓のことを油断していたみたいね。成長したわね」

「額の汗を拭ってないで、ウチの電話どうしてくれるんですかっ!?」

「はん! 知るか!」

「自分で壊しといてその態度、最低ですね。次は器物破損で訴えてやる」

 そこで僕は自分の携帯電話を取り出す。次は壊されないようにしないと。

 そして番号を押そうとした瞬間、

「はい、ストーーップ!」

 梓がそう言って僕のケータイを取り上げた。

「あっ! なんで取り上げるの!?」

「だって!」

 そこで梓は一旦言葉をとめ、そしてテーブルをビシッと指差す。

「朝ごはんが冷めちゃうでしょ!」

「そこなんだ……。というかもうできたんだ」

「何その呆れたような言い方は? 私の作ったごはんがどうでもいいとでも言いたいと?」

「滅相もないです!」

 梓にギロリと睨まれ、僕はすぐさま席につき、食事を開始する。

 部長はそれを見て笑っていたが、僕と同じように梓に睨まれて、しぶしぶと僕の前の席に座る。

 梓は僕と部長が食事を始めたのを確認すると、部長の隣の席について同じく食べはじめた。

 今日の朝食は目玉焼き。……この前の先輩の話が頭に浮かぶ。そしてふと思った疑問。

 部長って醤油とソース、どっちなんだろう?

 あのときは先輩の話で忘れてたけど、部長となつめちゃんがどちらか聞いてない。先輩とその親友と仲がよかったっぽいからソース? でも先輩の親友は醤油だったから醤油?

 うーん、何か気になる。とてつもなくどうでもいい話なのに……。

「部長、そういえば部長って醤油とソース、どっちで目玉焼き食べるんですか?」

 聞いてみることにした。

「そうね~、まあ、ぶっちゃけどちらでもなく、コショウで食べるわ」

「まさかの第三勢力!!」

「ということで梓、コショウちょうだい」

「わかりました」

 梓が台所からコショウを持ってきて部長に渡す。部長はそれを目玉焼きに振りかけると、一口サイズに切ってパクッと食べる。

「やっぱりコショウが一番ね。醤油とソースなんてカス以下のカスよ」

「うわー、先輩とその親友全否定……」

「さあ、無駄なことは話してないで早くごはんを食べましょう」

 部長は僕が言ったことをその一言で切り捨て、食事に専念し始めた。今話し掛けても無視されそうなので、仕方なく食べることに集中した。

「ごちそうさまでした」

『ごちそうさまでした』

 まるで小、中学校の給食のときのように、梓が手を合わせてごちそうさまでしたと言ったあと、僕と部長がそれに続いて復唱する。

「さあ、学校に行く準備しよ」

 食事が終わると梓はそう言って自室に戻っていった。

「僕も支度しよう」

 そう呟いて自分も部屋に戻った。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

「部長……。何で僕の後ろにピッタリと、音もたてずについてきてるんですか?」

 僕は自分の部屋のドアのとってに手を掛けた状態で振り向かずに言った。

「あれ? バレた?」

 部長は少し驚いた声をだした。

「言っときますけど部屋には入れませんよ」

 僕は振り向いてそう言うと先輩を睨む。

「別にいいじゃない、部屋を見るくらい」

 部長は微笑みながら本当にどうでもよさそうにそう言ったけど、僕は絶対にイヤだった。僕にとってはとても重要なのだ。

「絶対に入れません! 何がなんでも!」

 僕はそう宣言したあと、ドアを開けて中に入り、入った瞬間にとってをおもいっきり手前に引く。

 しかし、部長はどこからか取り出した拳銃を隙間に挟み、閉まることを防ぐ。

「見るなって言われると見たくなるのよね~」

 部長は微笑みながらそう言うと、とってを掴んでおもいっきり手前に引きはじめた。自分も負けじとさらに力を込めて手前に引く。

「諦めなさい、楓!」

「そちらこそっ!」

 自分と部長の力が釣り合っているため、ドアは同じ場所から動かない。

(そうだ!)

 ある考えが閃く。今この状況で手を離したら多分部長が転ぶ。そうすればドアを閉められるはずだ!

 自分はその考えに至り、手を離す。

 どうか部長が転びますように!

 しかし、残念ながら僕の考えは甘かった。

「残念ね! その行動は読めていたわ!」

 僕が手を離した瞬間、普通にドアが開いて普通に部長が入ってきた。

「ええっ!?」

「いや〜、予想通り。楓ならやると思ったわ」

 部長はそれだけ言うと部屋の中を探索しはじめた。

「出てってください!」

 自分は部長の腰辺りにしがみついて部長の動きを止めようとしたけど、まったくもって無意味で部長は僕を引きずってでも部屋の探索に没頭している。

「ぬいぐるみが結構あるわね。女の子の部屋みたい」

 ベッドの上の僕のぬいぐるみコレクションに感心したようで、そのぬいぐるみをいじくりまわす。

「見ないでください! 恥ずかしくて死んじゃいます!」

「ぬいぐるみを見られたぐらいでそんな真っ赤になるなんて……。可愛すぎるわ、楓」

「感心したように言わないでください! そして着替えるから出ていってください!」

 目尻に涙を溜めた状態で僕は部長に訴える。

「はいはい、わかったわよ」

 部長は楽しそうにニヤニヤしながら部屋から出ていった。

「はあ、いつも部長は自己中で、人のことも考えないで……」

 ため息をついたあと部長に対しての愚痴をブツブツ言いながらパジャマの上を脱ぐ。


カシャ


……カシャ? まさか!

 僕はすぐさまドアのほうに振り返った。

 そこには予想通りケータイを僕に向けている部長が……。

「何してるんですかっ!?」

 僕は上半身を隠して部長に聞く。

「盗撮!!」

「堂々と胸を張って言わないでください!! そして何のために!?」

「いや~、貴重だから?」

「どこがですかっ!? そして疑問形で締めくくらないでください!!」

「ホントに女の子みたいね。肌も白くてきめ細かいし、男の子なのがもったいない」

「だから感心したように言わないでください!! てか出ていけーーーーーッ!!」

 手に取れる距離にあった文庫本を投げつける。

「をっほっほ!」

 お嬢様とかがしそうな笑い声をあげながら部長は逃げるようにリビングに走っていった。

「まったく……」

 投げた文庫本を拾って机の上に置き、制服に着替え、バッグを持ってリビングに向かう。

 リビングでは梓と部長が楽しそうに話していた。

「あっ、お兄ちゃん遅かったね、どうしたの?」

 梓が僕を見るなり支度が遅くなった原因を聞いてきた。

「ちょっと変態さんが現れてね……」

 部長を見ながら梓の質問に答える。

「あはは……、そうなんだ」

 梓はその視線の先を確認すると苦笑いしていた。

 当の本人である部長はその視線を気にすることもせず、ケータイの画面を笑みを浮かべながら見ている。多分さっき撮った写真を見ているのだろう。どうにかして削除しないと。それが今日の部活中のミッションになりそうだ。

「それじゃあ学校に行くぞー!」

「おーっ!」

 部長が元気よくそう言って玄関から外に出る。それに梓が続く。

 その光景を見て苦笑する。

 今日も一日大変そうだ。頑張らないと……。

 そんなことを考えたあと、僕は二人に続いて外に出た。


     *     *     *     


同日、二年A組


「櫺、ちょっとこっち来て」

「なんだ? 急いでるんだが……」

「ちょっとこれ見てくれる?」

「ん? 写真か? ……なっ! こ、これは!?」

「楓の着替えを撮影したものよ。欲しい?」

「当たり前だ!!」

「はい、じゃあお金」

「…………………………」


 二万円で売れましたとさ。


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