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~神の視点~


「本当に、愚かな生き物だな。人間は」


真っ白な空間の最奥――絶対的安全圏たる神座(玉座)。

 そこに深く身を預けながら、その“神”は退屈しのぎに言葉をこぼした。


宙に浮かぶ無数のウィンドウ。

 そこには、神から与えられたポイントで『異世界転生』を果たした直後、次々と無様に命を散らしていく地球人たちの姿が映し出されている。


大気中の魔素を分解できず、全身の穴から血を噴き出して倒れる者。

 自ら選んだ『最強の攻撃スキル』の出力に肉体が耐えきれず、内側から破裂する者。

 言語も常識も理解できぬまま、スラムで底辺の悪党どもに狩られ、奴隷に堕ちる者。


死が訪れるたびに――彼らの魂からきらめく光が抽出され、黄金の粒子となって神の掌へと還元されていく。


「世界の均衡システムを保つため、別次元からエネルギーに満ちた魂を呼び寄せる。そして、スキル選択を誤ったことによる“死”という形で、その莫大なエネルギーをすぐに回収する……」


神は指先で黄金の粒子を転がし、恍惚と目を細めた。


「完璧な循環だ。実に合理的で、美しい」


上位存在である神々には、たった一つだけ絶対の規則ルールがある。

 ――『自らの手で、直接人間を殺してはならない』。


だから、罠を張るのだ。許されているのは、ただ一つ。

 【選択肢という名の盤面を与えること】のみ。


彼ら自身の欲望を刺激し、強力なチートスキルという餌で目を眩ませ、自らの意思で死地バグへと飛び込ませる。

 神は直接手を下していない。ただ、死に至る『仕組み(デフォルト設定)』を置いただけだ。


「……やれやれ。どいつもこいつ『最強』や『無双』といった甘い言葉に飛びつき、自ら崩れていく。馬鹿の一つ覚えか」


光がまた一つ、神のもとへ還る。

 退屈な作業。その中で、神の視界の隅で、わずかにイレギュラーな動きがあった。


「おや?」


無数にあるウィンドウの一つ。そこに映る、冴えない男。

 強力なチートスキルも、特別な魔法も持っていない。ただの底辺のモブビルド。だが、あの焦燥を煽る短い時間の中で、神が巧妙に仕組んだ『デフォルト設定の罠(即死トラップ)』の数々だけを、パズルを解くように正確に回避してみせたのだ。


「ふむ。過去にも極稀にこういう手合いはいたな。あの短い時間で、よくぞ生存インフラの欠如に気づいたものだ。褒めてやるべきか……いや」


神の視線が、男の最終的なステータス画面へと滑り――そして、鼻で嗤った。


男は確かに大きな地雷を避けた。致命傷は回避した。だが、絶対的なリソース不足ゆえに、どうしても見落としてしまった『致命的な欠落』があった。

 所詮は、器の小さな凡人だった。


神は、男が路地裏の空中に放り出されたのを見届けると、退屈そうに首を振った。


『――こいつも即死か』


神はそれ以上、その画面を追うことはしなかった。

 仮に奇跡的に生き残れたとしても、どうでもいいことだ。


大量の愚者たちからエネルギーを十分に回収できた今、これ以上この世界に干渉する必要はないし、一人のモブを観察し続ける意味もない。

 神の瞳から、男や世界に対する僅かな関心という光が完全に消え失せる。


パチン、と指を鳴らすと、宙に浮かんでいた無数のウィンドウがすべて閉ざされた。

 そして――

 真っ白な神座には、再び絶対的で無機質な静寂だけが残された。

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