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陰キャ探偵とギャル探偵  作者: MOGI
夜中に現る首狩り教師の章
1/3

俺とギャル探偵


【登場人物】


氷窩(ひむろ)ソウ … 主人公。霧賀丘高校2年生。探偵。


二月(きさらぎ)レイナ … 霧賀丘高校2年生。ギャル探偵。


口分田新(くもだしん) … 霧賀丘高校2年生。


禍井颯希(まがいさつき) … 霧賀丘高校2年生。


叉見恋香(さみれんか) … 霧賀丘高校2年生。


兄藤大助(えとうたいすけ) … 霧賀丘高校3年生。


興形弓人(おきがたゆみと) … 霧賀丘高校1年生。


木城宣良(きじょうのぶよし) … 霧賀丘高校教師。


 放課後、多くの生徒は部活動に勤しむか娯楽を満喫しているだろうが、俺はそうではない。

 皆が学ぶ校舎から離れて、日当たりの良くないうら寂しい場所に一軒の大きなプレハブがある。それが本校の図書室。そして俺の唯一安らげる場だ。

 既に高校に通い始めて二年目だけど、図書室こそ俺の棲み処。友人などいらない。読む本さえあればそれでいい。

 今日も全ての授業が終わったので早速猛ダッシュで図書室へやってきた。

 隅っこにある窓際席がお気に入りだ。なお、室内は閑散としていて図書委員の生徒が受付で暇そうにしているだけ。超静かで落ち着きます、はい。

 さて今日は推理小説の続きを読もう。解決一歩手前だったかな。犯人は執事だと予想してるがどうだろう。

 いろいろ考えながら席に座って推理小説を取り出して、いざ読もうとしたとき俺に声をかける人物がいた。


「やっぱ今日もここにいた~、ソウっち~」


 振り返ってみると、快活な声で俺、氷窩(ひむろ)ソウの名前を呼ぶ金髪ギャルがいた。


「…二月(きさらぎ)さん。昨日も言ったけど俺はゆっくり静かに本を読みたいんだ。アンダースタン?」

「ダメダメ。顔が暗い。もっとテンションあげてこ?」


 あなたのせいでテンションだだ下がりなんだよ。

 ダル絡みしてきたこのギャルは二月レイナさん。カースト上位グループに所属する陽キャギャル。出るとこは出て、くびれるとこはくびれてるし、顔も整っているので美少女の部類に入るだろう。

 先日偶然にも彼女と協力することがあり、それ以来図書室に、というか俺の目の前に出没するようになった。

 よく創作物でオタクに優しいギャルが跋扈しているが、まさか現実でも似たような事象が発生するとは全く思っていなかったわけで。現在進行形で俺の平穏はギャルの手によって破壊されている。悲しき。


「いつまで俺に構うつもりなんだ」

「いつまででも~? 永遠さ~」

「歌詞みたいに喋るな」


 何度も拒絶する対応をしているが、このありさまである。二月さんは攻撃無効スキルが備わっているんだろう。


「ねぇねぇ。ソウっちってどうしてそんなに賢いん? ウチも探偵やってるからさ~、もっと頭よくなりたいんよね!」


 彼女が言うように実は二月さんは探偵だ。そんで、俺も探偵だ。

 以前、巻き込まれた事件で遭遇して協力しながら解決した。ただそれだけの縁だ。俺はそう思ってる。二月さんはそうじゃないようだけども。


「そうだな。じゃあまずその長すぎるネイルとサングラスはやめてもらえる?」

「ウチのトレードマークを取り上げるなんてひどい~」


 二月さんは派手で滅茶苦茶長いネイルと、ハート型でピンク縁のサングラスを常時携えている。出会った時も、校内でも。ネイルはまぁ五千歩くらい譲るとしてもサングラスはいかがなものか。前髪を覆うように額に鎮座していて、いつでもかけられるらしい。


「見た目が賢そうに見えないんだ。ハート型グラサン探偵なんぞ俺は見たことない」

「前例を作ってあげたのに」

「変な前例を作るんでない」

「ていうかー、格好のことソウっちにとやかく言われる筋合いは無いんデスケド~」


 二月さんはジト目で俺を見る。

 ほう、黒パーカーにヘッドホンを付けている俺がおかしいとでも言いたいのか?


「俺の制服はこれだ」

「ヤバい前例作ってるじゃん」


 先生に注意されていないのでセーフです。


「やっぱウチさ、ソウっちと探偵コンビになれば最強だと思う。どう? コンビ組もうよ」

「案の定勧誘か。何度も言うが断る」

「ですが、なんと、今回に限り…?」

「より強く断る」

「ダメか~。ソウっち見た目に反して頑固だよね」


 強情じゃないと探偵なんて仕事は務まらない。すぐ感情に流されるようでは探偵失格だ。あと、見た目に反しては余計だと思う。


「あ、でもウチも頑固か。同じじゃ~ん」

「五月蠅いから早くおうちにお帰り?」

「ヤダ」


 そう、彼女も意固地というかなんというか、押しも強い。ペース乱されまくりだ。


「探偵仕事で忙しくないのか? ん?」

「今日も平和だよ~」


 なお、俺のところにも依頼は来ていないので平和なはずだが、ギャル探偵の存在でその平和はどこか時空の彼方まで消え去ったようだ。やめてくれ。


「俺と話しても楽しくないだろうに」

「普通に楽しいけど~? 返しが面白いから弄りがいがあるし~」

「本音が出てるぞ」


 弄られたいんじゃないんだこっちは。小説を読み進めたいだけなんだ。

 本当に二月さんが別クラスでよかった。同じクラスだったらおそらく一日中話しかけられているだろう。


「もちろん話しかけるよ?」

「心を読むな、心を」


 なんでバレたし。探偵じゃなくてエスパーの方が適任だろ。


「だってさ、皆と関わるのって疲れるんだもん。相手の機嫌とか窺ってコミュニケーションとらないといけないわけじゃん? 結構しんどいわけ。でもソウっちは全然疲れないんよね~」

「俺は疲れるのでお引き取りを」

「ウチ褒めたのに~」


 ぷくっと頬を膨らませる二月さん。顔面偏差値がカンストしているが故に可愛らしさがある。ただ、個人的な感想としては「黙ってれば美人」である。

 ちなみに他人と関わると疲れる、という意見については全俺が賛成している。

 なんでそんなやつらが探偵やってるんだというツッコミは右から左へ受け流させていただこう。


「もし。万が一どころか億が一にもないとは思うけども、この学校で重大な事件が起きた場合は前と同じように協力してもいい。無いとは思うけど」

「二回も言うなし! じゃあそれで~」


 二月さんは終始ニコニコしていた。

 本当になんでこんな住む世界の違う人に懐かれたんだ…。


 そして億が一にもないとは思うというセリフはフラグだったらしい。

 翌日、恐ろしい事件が幕を開けるとは思ってもいなかった…。


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