第7話 幼馴染・瑞葉
自宅の部屋のベットで寝転んで、ハルちゃんのことを色々と考えていた。思春期の時間は濃い。一か月もの間、毎晩ハルちゃんのことを考えていたのだから、損失感も半端ではない。
俺の心にぽっかりと穴が開くなんてレベルではなく、体中からエネルギーが抜けていく感じで、救いようのない虚無の感覚が全身を襲っていた。
小林は、嘘告の時点から何も教えてなかったせいで、俺が「片想いした女の子が彼氏を作った」程度で察していた。
「片想いを潔く諦めろ、そもそもお前の周りには美女が多いんだから、贅沢し過ぎで一回死んで来い」という優しいお言葉だけだった。
もう二度と俺に向けられないであろうハルちゃんの笑顔を思い出し、また、二度と出来ないであろう彼女とのキスを思い出し、黄昏に拍車をかけていた。
「キスから先に進みたかったな……」
頭の中では、未だ仲良しだった頃のハルちゃんが微笑みを向けてくれるし、キスした後の俯き恥ずかしがる彼女を思えば、枕をぎゅっと抱き締めて悶々としていた。
ピンポーン
今、家には俺以外いないので、玄関に降りて扉を開けた。外には幼馴染の瑞葉がいて、ほっぺが膨らんで拗ねていた。
彼女を自分の部屋に連れていき、お茶を出して「よく来たね」と歓迎する。
「ねぇ、義孝君、どういうことなの?」
「えっ、何が?」
「ハルちゃん」
「ええっ」
「隣のクラスの稲垣華さんことハルちゃん」
「彼女とは……なんでもないよ」
「毎週、毎週、私とのデートをなくして、ハルちゃんと会ってたでしょ?会うを逢うにした方が好いかしら?」
「み、瑞葉さん、いったい何のことでしょうか?」
最早、具体的な話をされているのに、どもってしまって会話が出来ない。俺、絶体絶命のピンチ?
「義孝君、はぁ……、ハルちゃんが毎日休み時間にうちのクラスの廊下に立っていれば分かるわよ。貴方のことが大好きだって」
「いや、そうか。正直に話す方が好いな。瑞葉、もう二度と週末に、ハルちゃん、彼女と出かけることはない。実はな、彼女から嘘告されていたんだよ俺」
「何ソレ」
「いやさ、一か月ちょっと前に彼女からラブレター貰ってさ。校舎裏で告白されたんだよ。好きです、付き合ってくださいってさ」
「ふんふん、それで、続けて」
「それが嘘告と分かって、彼女は俺の事なんて好きでも何でもなかったんだ。それがショックでさ、寝込んでた。だから彼女とは今後、出かけることもないよ」
「そうなの?」
「うん、そう」