第4話 お兄ちゃんのばかっ
コンコン
「ん、何?」
「お兄ちゃん、わたし」
まだ寝るには早い時間だというのに、黄色いパジャマに着替えた由愛が扉を開いて入ってきた。そしてベットに寝転ぶ俺の傍、ベットの端に腰かけて俺の目を見る。
「お兄ちゃん、嬉しそうだね。何か、いい事でもあったの?」
「ん、何もないぞ。どうした由愛」
「あのね、ちょっと相談したいことがあって」
「うん、それで」
「今日ね、クラスメイトから告白されちゃったの」
ぶっ、ぶーーーっ!お前もか由愛。
相談内容を聞くと、同じクラスの男子で告白を断ったら気まずくなるかも…という事、どうしたら無難に済ますことが出来るか、といった内容だった。
「うーん、そればかりは、どうしようもないな。男子だって断られたら気まずくなるぐらい承知の上だろ。お前に責任はないぞ」
「そう、どうしようもないのかな……」
「それ以前に、どうして断るんだ?」
「だって好きな人がいるんだもん」
「え、何だって?」
「私、もう好きな人がいるんだってば」
俺の心になぜか衝撃が走った。とても辛い何らかの衝撃だ。初めて受けるその衝撃の正体は分からなかった。口は大きくアングリとしてボ~っと由愛の顔を見るばかりであった。
可愛い妹が遠ざかっていく……夏祭りの思い出がフラッシュバックする。
少しばかりの空白があり、由愛は突然ベットに寝転んできた。
「お兄ちゃん、ぎゅっとして」
「えっ?」
「ぎゅっとして」
俺はベットの奥に身体を移動させ、背中を向けて寝転んでいる由愛のスペースを広くとると、背中から俺がくっつき、お腹に手を回すという優しいお兄ちゃんバージョンを作り上げた。
「なぁ由愛、お前、片想い中だったんか?」
敢えて耳元で言葉を発するイヤラシイ俺。由愛は耳が真っ赤である。由愛のやつ、恋煩いで自分が制御できなくて、一杯いっぱいだな。
こういった時にお兄ちゃんとして俺が隙間を埋めてやらないとな。母さんから義理の妹?宣言があったんだ。もう一歩、進んでいい筈だ。何を?とは言うまい。
由愛のお腹をマッサージする感じでサワサワし、ちょっとだけ、ちょっとだけだからと、上の方へ舵を切ろうとしたら……危機を察した由愛が凄いスピードで振り返り、正面から抱き着いてきた。
驚愕して動けない俺に向かって由愛は言う。
「お兄ちゃんのばかっ」