第29話 全員集合、そして
最終回
強大な何かの波動は途中で消え、すっかり周囲は元通りの静かな状態になった。何があったのか俺たちには分からず、ぽか~んとしている。誰も言葉を発しない。座ったまま、また膝立ちしてる、という感じだ。
暫くすると一人の少女がタッタッタと早歩きでこちらに向かって来た。あれはハルちゃん?遅刻をしちゃったテヘっ、みたいなハニカミと苦笑いが混ざった感じで俺たち5人に向かってきている。
「ヨシくんたち、良かった~、ちゃんと会えた~~嬉しい。瑞葉ちん、また一緒だよーー」
「ハルちゃん、貴女もなのね、こんなところまで来てしまうと感覚がおかしくなるよね」
「は、ハルちゃん!君まで来たのか」
……と勢いよく聡が飛び出していく。あーそういえば聡君ってハルちゃんの事、大好きだったよな。片想いを長々と引きずっているらしい(情報By瑞葉)。聡は物凄くいい笑顔でハルちゃんに向かって駆け寄っているではないか。
一方のハルちゃんは瑞葉を見ているな。俺の事も。先の瑞葉の夢では、彼女は未だ俺の事を想っているというセリフがあった。俺は思わずニヤけてしまう。このニヤケ顔が瑞葉と由愛に見つかるまでは大丈夫。
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オジサン「さ、仕事しましょう」
助手席娘「はい」
「私は出来ればヨシくんとアバンチュールを楽しみた……」
「ハルちゃん」
「瑞葉ちん、ごめんして、怒らないで、許して……」
「貴女が私の大切な恋人と二股になってたことを思い出したわ」
「ちょ、ちょっとーっ」
(ハルちゃんはまだ西之原君のことを想っているのか……僕も頑張るぞ)
「俺は恋人が出来るかもな。オレにも春来る?」
「小林はいつもそれだな」
「お兄ちゃんとわたし、お兄ちゃんと一緒に夜更かし、うふふ……」
ハル「どうせ皆すぐに色々と詳しく思い出すから先に言うけど、前回はヨシくんが一人寂しく寿命を終えたのね、他の4人はヨシくんを生かすために魔王戦で命を犠牲にしたの。私の蘇生魔法もミスして間に合わなかったの。あんな悲しいことは二度とイヤ。私は泣きっぱなしだったわ。だから今度は全員で寿命を全うするわよ!それと、フフ、地球では大観覧車の頂点で思い出のハグとキスをヨシくんから頂いたわ。私は想像以上に満足、思い残すことはないわ!」
「ハルちゃん、高校の学食で会話してるのと変わらないよ……、一部の心の声が外に出てるし」
「運転手と助手席娘、転移トラックの準備を」と女神様が指示を出す。
「「はい」」
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サトシ。彼はまじめで率直、聖剣エクスカリバーを擁してあっという間に敵を両断、瞬滅する。死する前までは史上最強の勇者と尊敬されていた。ハルに片想いをしており、高校で隣の席になってからというもの、ゾッコンである。ハルの嘘告ではさりげなく問題解決になるアシストをしていたが、ヨシタカの誤解で上手く運ばず、ハルは長い間ヨシタカに謝り、悲しんでいた。悲哀に包まれる彼女を常に慰めていたのがサトシであった。母親が女優という事や成績優秀、スポーツ万能なため女性にモテて皆から一目置かれるものの、男子からは強い嫉妬も受けるという諸刃の剣である。しかし本人は、本命と結ばれないのなら、モテるとか全く不要だ……と黄昏ている。前魔王戦で死亡。
小林ミキオ。正統派の力と技で王都民からも国民からも尊敬を集める鉄壁のタンク。剣聖のスキルを持つ。実は冒険者ギルドでも女性に人気が高い。優しく理論派でありながら活発で行動派。謎に直面すると理論的に分析し的確な判断を下す。横柄な言動が目立つが、細かい気配りができるため、仲間内にあっても強く信頼されている。時々ポカをやらかすヨシタカを上手く叱る立場でもある。ユアイに一目惚れして恋心を抱いている。前魔王戦で死亡。
ミズハ。なぜか神聖浄化魔法なのに破壊音や破裂音が轟くという火力が持ち味。これはミズハのヲタ趣味のおかげで改造された魔法であり(師匠は女神ハル)、毎回唖然とする周囲が見もの。ヲタであり腐が少し入っている。ヨシタカの事が大好きだが、結婚するまでは1年に1回のキスしか許可を与えていない。でも本人はいつもヨシタカに抱き締められたいと思っている。ユアイとは本当の姉妹のように仲がいい。前魔王戦で死亡。
ユアイ。小さくて可愛い姿にも拘わらず操る魔法の破壊力は凄まじく、火力はパーティ最大。時間があればお兄ちゃんについて回る、勇者パーティのマスコット的存在。お兄ちゃんが大好きで、いつか唇にキスしたいのだが、兄妹ではキスが唇にできない。夢の中ならセーフかもと勇気を持ち始めている。最近、兄ヨシタカへ自分の想いを告白してしまい、少しだけ、否、かなり恥ずかしくて困っている。女神様に次は妹ではなく恋人&幼馴染という設定でお願いしますと希望を出している。ハルからは即却下された。前魔王戦で死亡。
ヨシタカ。付与術師とは厳密には異なる聖付与師。前魔王戦で唯一生き残り、魔王亡き後も守護を継続し人類に平和をもたらし続け、歴史的にも英雄として語り継がれている。最終的には特SS級冒険者。最初ギルドが間違えて元勇者パーティなのにF級のカードを渡された。C級冒険者あたりから馬鹿にされた際「うるさい、黙れ!」とラノベでは滅多にない反応を見せた。ユアイと一緒に育ったため、魔法を教えるために勉強し、肉体的戦闘力なども日々訓練し、何でもソツなくこなせるオールラウンドプレイヤーであることは意外と周知されていない。変わったところでは、特に家族ハグの破壊力が凄まじく、固有スキルの特別版と推測される。由愛はいつも多幸感で大興奮で、瑞葉もたまに餌食となる。女神すらも余りにも幸せを感じすぎて気絶したことがある。瑞葉とは恋人4年目で且つ幼馴染。
ハル。各世界の大神たちを統べる御主神様である。最高神ともいう。まさか仕事をさぼって地球でヨシタカに嘘告をして遊園地の大観覧車でキスをし、それを後ろのゲージで片想い追跡してきたサトシにリアルタイムで実況されていたなどとは気づいていない。誰も知らない、知られちゃいけない。決して語ってはならない。ヨシタカの事をヨシくんと呼んで恋心は前世代からの筋金入り、長年気持ちを大切に育てており、実は真に乙女である。真剣で真っ直ぐな愛情は半端ではない。恥ずかしがり屋。地上では100万分の一の神力で周りに迷惑をかけず過ごし、外見も普通の可愛らしいゆるふわ系(人間)の姿をしている。ハルは全てに万能な力を持つ根源的存在だが、自らを律した法を重んじ人々に平等を心がける。教会では10~12歳ごろの全子供を対象に役立つ女神の加護を与える為、大人になった人々からも敬われている。スキルはそれまでの子供の努力に応じて適切な種類を与える。剣を訓練したら剣のスキルを、自宅で料理を手伝っていれば料理のスキルを、間違って与えたら努力した子がガッカリするからと、決して努力に反するゴミスキルは与えない方針だという。
こうして再集結した元勇者パーティ5人と女神様。
前世でも魔王より戦闘力が圧倒的に強力過ぎたため解決がスムーズだったが、この6人が巻き起こす新たな騒動は、まるで規模が別次元で半端ではない。今度は上手く行くのだろうか。
【Fin】
会話している内容は以下の物語です。
☆勇者たちの使命感
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ヨシタカ(と女神様)以外は全員が死亡するという悲劇ではありますが、しっかりと転送されており、NTRを装ったコメディのこの物語にちゃっかり全員で高校生をしていますので、結果はハートウオームです。
★隣の席の華に恋をした聡(BSS)
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ハルちゃんがヨシタカとハグしてキスした大観覧車、ハルに恋するサトシが目撃し涙を流しながら実況しています。