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嘘告と二股と妹とNTRと。  作者: 九絵
NTR攻防戦
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第7話 由愛

 おクスリを使ったレイプ未遂事件で瑞葉を癒しながら夜遅くなり、深夜になってからの帰宅後、俺は自室で考え込んでいた。


 大学生が新歓コンパで女の子の飲み物にクスリを入れ、寝込んだ隙に性交をし、その時の動画で口封じするという悪質な手口、ニュース記事で知っていた。高校生にもやるやつがいるのだろうか……。


「お兄ちゃん……」


 久しぶりに妹が部屋に訪ねてきた。


「起きてたのか、どうした由愛」


「あのね、少し話したいことがあるの」


「うん、いいよ。ここにお座り」


 俺の使っている一つのクッションを勧め、座らせた。兄妹の憩いの時間は久しぶりだったのでお茶も準備しよう。


「はい、お茶。コーヒー欲しいなら淹れてくるけど」


「ううん、お茶で良いよ」


 由愛は真剣な顔つきをしており、覚悟を決めたか、ポツリぽつりと話し始めた。


「私、お兄ちゃんから木下先輩の話を聞いた時、観られていたんだと思って、ショックで引き籠っちゃったの。ごめんなさい」


「えっ」


「木下先輩にレイプされそうになって、蹴っ飛ばして帰ってきたの」


「えええ、そ、それってさ、他校巡回のMTGの後の話だよな。俺と瑞葉でホテルに入る木下を目撃したって件の……」


「そ、木下先輩から帰る途中で声かけられて、喉乾いたか、ほらって水筒を出されて、断れずに一口飲んだの。そうしたらカフェ行こう、お店行こう、ってだらだら会話していたら時間が経ち、気がついたら頭が働かなくなって、ホテルまで連れていかれたの。で、蹴っ飛ばした」


「由愛、身体が小さいのに」


「うふ、上手くヒットしたんだ。でも、あまりのショックで、いえ、頭が混乱して働かず、ホテルを飛び出し、ひとまず人の多い駅に向かって走り、駅の壁にもたれかかって、次に頭が働いて気づいたのが一時間過ぎたぐらい」


「そんなことだったんだ」


「それで帰宅したら、お兄ちゃんから目撃したみたいな話をされて、部屋に戻って泣きはらしてたの。仲良くホテルに入っただなんて思われてる筈って」


「あ、ああ……(いや妹よ、全く気づいてなかったわスマン)」


「信じてくれる? 私の事を信じてくれる?」


「もちろん」


「よかった、嬉しい」


挿絵(By みてみん)


「俺も良かった。実はな今日、瑞葉も連れ込まれそうになって危なかったんだ」


「え……」


 俺は腕を組んで考え込んでいた。


 これがラブコメなら、さっと妹を抱き寄せ、頭を撫で、お前は血の繋がっていない義理の妹なんだと、ベットに寝かして、甘いキスをする。実際、キスしたくなるぐらい可愛い妹だしな。


「お兄ちゃん、変なこと考えてるでしょ」


「実の妹を義理の妹に設定を新たに作ってた」


「ばかっ」


 由愛は顔を赤くしながら自分の部屋に帰って行った。


(いや由愛よ、お前が義理の妹だと話せるのは高校卒業してからだ。母さんから言われてるからな)


 もう俺の声は聞こえないと分かっていながら独り言ちする。


「なぁ、由愛。お前は気づいていないかもしれないが、とても可愛いんだぞ。だから男には気をつけて欲しい。今回、怖い思いをしたな。怖かったよな。お兄ちゃんが助けに行かなくて本当にごめんな。次はきっと直ぐ駆け付けるからな」


「お前が傷ついてしまうと、お兄ちゃんはとても苦しいんだ。将来、幸せになって、子供を産んで育み、立派な家庭を作り上げて欲しい。お兄ちゃんは常にお前の幸せを願っているんだ。何でも話して欲しいし、お兄ちゃんを頼ってくれ」


「少し前、お前が楽しみにしていたプリンを無断で食ってしまったのは、お兄ちゃんだ。黙ってて、ホントごめんな」



☆☆☆☆☆



 ここで終わるのがドラマである。現実ではそうはいかない。同時進行で、細かな問題がすっ飛ぶような大騒動が起こった。


「うぇ~~~~ん、うぇ~~~~ん」


 俺が瑞葉に送ったスパムのようなメッセージたち。あまりの破壊力の為、瑞葉が錯乱してしまい、うぇ~~んと泣き続けていた。


 内容が酷かったもんな。メッセージを読むなと注意喚起するのが間に合わなかった。


 ただですら別れ話で瑞葉の精神が弱っていたところに、コレである。人間の精神はある意味(もろ)い。小林幹夫も例の場にいたため責任を感じており、買い出しなどで協力してくれている。



 いくら慰めても瑞葉は元に戻ってこなかった。


 そして入院した。


 精神が元に戻るのには平均7年半という期間が必要かもしれないというアドバイスを専門医からいただき、家族、友人知人、学校の全員が震撼し、その後、愕然とした。


 一か月後、瑞葉は退院した。


 もちろん瑞葉の精神が戻ってきたわけではなかった。


 俺は瑞葉の頭を膝で抱え、太ももに乗せ、頭や髪の毛、頬っぺた等を優しく撫で、彼女へ癒しを与え続けている。もう何日間もつづけている。


 救いは瑞葉の寝顔だ。幸せそうにしている。俺にとって、あの時を後悔しない日はない。一生を瑞葉と添い遂げようと固く誓うのであった。


 瑞葉が元に戻ってきてくれたなら、楽しいことを一杯やろう。


 花火、祭り、プール、海、山、屋台の買い食い。贅沢言わず、公園の砂場でオケラ探しをするのもいい。勉強も追いつくためには頑張らないとな。クリスマスもあるな。


 初詣を、由愛、小林の四人でまた行こう。



 そうそう、あの俺の錯乱メッセージたち、女子校の女の子Aちゃんに誤送信してしまったヤツだけど、見事にコピーペーストされて学校中に広まったんだと。


 反面教師として利用されているらしい。「役立ったのなら幸甚です」ってAちゃんにメッセージを送っておいた。



 木下も無事に逮捕されたようで、薬投与でマヒさせ被害者を量産していたグループにも警察の手が入り始めているらしい。妹の体験も警察へ通報し、事情聴取のあとで被害届として提出。


 後に、由愛が木下を蹴っ飛ばして逃げ出す様子を、監視カメラの記録から確認されたと刑事課から報告を受けた。告訴状に切り替えて欲しいとのことだった。


 結構、時間をかけて問題解決に役立てたと思うのだが、感謝状はもらえなかった。少し女の子にモテるかなと思っていたから残念。







 って、なんてことだ。このままでは、バットエンドじゃないか。

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