第4話 別れ
瑞葉に対してメッセージを素早く打つ俺。大興奮である。
内容は以下である。
「なんでだよー、なんでだよー、浮気するならキッチリ俺と別れてから新しく交際を始めろよなー」
「どうして木下と恋人つなぎしてるんだ。俺たち別れるぞ、もう付き合えない。お前に対する信頼を失った。信じてたのに瑞葉。キスだってトータル3回だぞ、十数年一緒にいて、たったの三回しかキスしてないだろ。注:幼児時代は除く」
「しかもだ、風呂も一緒に入ったことがなかった。幼少期は除くだがな。あの頃は子供だったから良かっただけだ。今ならもっと入浴したい。お前と一緒に。いや、今はそんなことは関係ない。忘れてくれ、不毛だ。意味わからん」
「木下と仲良くしてるのを観たぞ。観察しているニュアンスを入れて、観たって書いたぞ。”見た”でもいいが、意味わかってるか、ちくしょー瑞葉!」
「で、瑞葉さんは何してんの? 木下先輩とさ。恋人つなぎして、俺じゃない男とお風呂に入って、あ~~って声を出したり、夫婦チューをしたり、腕を組んで胸を押し付けたりしてるんだろ」
「俺は悲しいぞ瑞葉。なんで、なんで俺を裏切ったんだよ。信じてたのに。また遊びに行こうって、夏はプールと水着、祭りと浴衣だろ、タコ焼き、ヤキソバ、リンゴアメ、標的打ちやろうって約束したろ。ピラミッドパワーってあるのか?」
「もう木下と”した”のか? なぁ、エッチしたのか、アレしたんだろ! この裏切り者が! お前、お母さんやお父さんに顔向けできるのか? お金一杯出してもらって学校行かせてもらってるのに、恩をあだで返すのか? あ、いや、すまん、ちょっと言い過ぎた」
「瑞葉さんさぁ、オレがどれほど君を信じていたのか、分かってるかい? それはそれは深みの深淵を覗くぐらいのレベルでさぁ。もう世界一深く瑞葉を愛していたんだよ」
「オレ、将来はしっかり仕事して、お前が豊かに生活できるよう目標を立てててさ、奇麗で可愛い服を買って、似合う? キャッキャウフフってやりたかったさ」
「女の長い買い物時間だってへっちゃらさ。俺は平気で待てる男さだから」
「そのいたいけな夢をお前は壊した。俺はオレはとても悲しい。お前の下着が見たかった」
「義孝ちょっとマテ! メッセージがおかしくなってるぞっ」
☆☆☆☆☆
行くぞ、突撃だぁ!
小林によって狂乱をおさめた俺は、自分の精神錯乱を戒め、喫茶店の清算をすませ、一緒に外に飛び出した。二人の行先は小林が追っていたので方向もばっちり、たぶん、直ぐに追いつけるだろう。
出来ることならばホテルの入口でパチリと撮影しておきたい。
「なぁ義孝、リアルタイムで目撃し、メールで追及したんだから、証拠云々ってのはそれほど大切じゃないと思うぞ。写真は撮れればラッキー程度でいい」
「ああ……そうだな……」
「スパムメール級の文章をあっという間に書いて送っていたが、誤送信してないだろうな? あんなん親や先生に間違って送ったらヤバいぞ、マジな話が」
「誤送信か……やってるな……」
「?」
「女子校で連絡先交換した女の子Aちゃんに送っちまってた。ヤベっ。何やってんだろ俺」
「義孝、気にするな。そう関係のある相手じゃないだろ。平気へいき。まぁ二度とあの学校には行けないだろうがな」
「瑞葉に送りなおしたよ……」
☆☆☆☆☆
二人にようやく追いついた。まだ恋人つなぎをしているままだ。瑞葉がまたフラついて身体を木下に預ける。と同時に俺の嫉妬がさく裂する。
俺の送ったメッセージがそろそろスパムするだろうし、すでに写真を撮ったので、電話を掛けてみる。この場でケリをつけるぜ。小林は動画撮影担当だ。
プルルルル……
二人は手を繋いだまま、瑞葉は空いた手でスマホを取り出し画面を見る仕草、そして、すかさず切られた。なぜっ
「くっ! こうなりゃ現行犯だ。オレは突っ込んでくるぞ」
「おう、骨は拾ってやるぜ。念のため、瑞葉ちゃんの様子だけはしっかり観察しろよ」
……この間に、木下と瑞葉はホテルの入口に吸い込まれ消滅した。俺は小林の方へ顔を向け、一言いうのであった。
「幹夫君、帰ろうか」
「いいのかオイ」と小林
「ああ、いいんだ」