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嘘告と二股と妹とNTRと。  作者: 九絵
NTR攻防戦
12/64

第2話 不安

 ウブな俺たちが、これからイチャイチャを本格化する予定だったのに、突如、直前でお預けを喰らった気分だ。


 あれだな、ラブコメなら数週間後、なぜか俺は瑞葉にデートの約束をキャンセルされ始め、放課後も一緒に帰らなくなり、昼飯も「今日は友達と食べるから」、塩対応という予兆が徐々に現われ、その先の展開は、、、。


 俺が怒って「なんだよ、デートをドタキャンしやがって」と呟きながら駅の周辺に本でも買いに行こうとして、恋人つなぎをした仲睦まじい木下と瑞葉を見つけてしまい、街角で腕を組む姿を見せつけられ、恋で負けた~と呆然とするんだな、きっと。


 更に数週間後、カラオケ帰りの俺が「遅くなったぜ、ふっ」と呟きながら駅裏にフラフラと歩いて行き、ホテルの出入口で偶然、上気した二人が並んで歩いて出てくるのを見てしまい、愕然とするんだろ。知ってる。


 それらを乗り切っても、最後は添付ビデオが送られてきて開いたら木下と瑞葉が合体してるところが映ってるんだ。で、俺は発狂するんだろ。


 最愛の恋人を寝取られ次の日なんて学校へ行けるか。学校で会ってしまったら気まずいどころじゃなく死ねる。どんなに我慢したって無理。


 ああ、分かってるって。


 幼稚園からの仲良しこよし、両親公認、中学生から恋人同士に昇格し、十数年もの長い絆があっても、尚、NTR神のお誘いには足掻くことが出来ないのだ。



☆☆☆☆☆



 ちくしょー、勝手に俺の恋人の身体を触りやがって。


 なに照れているんだよ瑞葉! 木下ごときに腕を回されたからって、そんなに耳まで真っ赤にしてさ。目をウルウルさせるなよ。頼むよ瑞葉。俺の事だけ見てくれよ。


 海の浜辺に行って泣きながら走ろうかと、今日はやる気が霧散してしまい、小林と妹に「俺帰るわ」と言葉を残して着替えをしに行こうとした。


 瑞葉が「義孝くん、ちょっと待って」と俺を止めるために呼んでくる。


 その声に呼応し、瑞葉へ振り返った俺は、彼女にいう。


「瑞葉、愛しい彼女よ。俺はお前のことを信じているぞ」(ニコリ)


「えっ、急に何? 意味不明、エッ、ええっ、何言ってるの?」


 瑞葉は混乱の魔法にかかった。



☆☆☆☆☆



 さて、俺は瑞葉の反応を観察して、


「こいつ、すぐ寝取られそうだな」


 という判断を下した。


 残念ながらオレの勘が正解だと教えてくれている。うん、悲しい。悲哀をずっしり全身で受けているみたいだ。


 陰キャ主人公のごとく、瑞葉の幸せを祈って身を引くか、否。


 たまたまホテルから出てきた”恋人つなぎ”の二人を偶然発見して、我慢できるか? そんなのカウンターアタック、速攻だろ。お別れ宣言だ。


 そして道の角で二人が抱き合ってキスしてるの見てしまうんだろ。きっと。しかも恋人レベル接吻じゃない、夫婦チューレベルのキスだ。そんなの見たら発狂だ、ファーストブレイク、速攻だろ。別離宣言。


 浮気現場を見ても直ぐに対処しない主人公はウジウジ、問題がこじれて、まるで逆に寝取った卑劣漢のごとく、クラス中に捏造の悪い噂を流され、イジメになってしまう予定の展開か。


 主人公も堂々と怒ればいいのに、多数の人間に向かって反論も難しい、とか嘆いて我慢を強いられるんだろ。


 いいんだよ、分かってるよ。


 そうならないためにも、重要なのはコミュニケーションだ。早速スマホを取り出し、メッセージを打つべし。


 以上、俺こと主人公の妄想です。



☆☆☆☆☆



 俺は瑞葉のNTR妄想で疲弊し、彼女のスマホにメッセージを送る。


「やぁ瑞葉、木下先輩との巡回、頑張ってな」


 うん、ちが~う! ちゃうやんけ。注意喚起をしなきゃ。瑞葉へ向かって追記を即座にする。


「俺は瑞葉が大好きや。俺は君をごっつう信じとるで。とっても愛してるさかいな。ほな、今度デートしよまい」


 いかん、関西弁から乱れていき名古屋弁まで挿入されている。ま、いいか。冷静になってからちゃんと別れ話をすればいい。そもそも、まだ瑞葉は浮気してないしな。


 バスケ部の部室で着替えを済まし、さて帰るかという時、瑞葉が俺を迎えに来たらしい。


「ちょっと義孝君、急に居なくならないでよ。木下先輩からカフェと食事に誘われて大変だったんだからね!」


「あー、ゴメン、ごめん。一緒に帰ろうか」


「うん、バトミントン部で着替えてくるね」


 フッ。瑞葉ってチョロくて可愛いな。顔はアイドル級だし、出るとこ出てムッチリ女性らしさがあるし、早熟だったんだよな。でも精神はまだ子供で、俺たちは一年に一回のキスしかしてない。


 付き合ってから、通算三回しかキスしていない。幼児時代は除く、だけど。


 平たく言えば、瑞葉は貞操観念がしっかりしているという事だな。


 一緒にお風呂に入ったり、抱き合って寝たのも幼児時代しかしてない。早く今の年齢でしてみたいが、「結婚までダメ」と瑞葉は譲らず、お風呂の混浴も、ベットでのイチャコラもなし、キスも軽く触れるだけ、しかも一瞬という条件と相成った。


 そのキスすら通算三回、大人の階段はエベレストより高い。まるでハレー彗星の周回軌道に乗っかってるようだ。


 健全な高校男児としては正直きつい。彼氏の俺ですらこんななのに、木下に瑞葉の初めてを奪われるだなんて、想像しただけで死ねる。


 いや待てよ。瑞葉は本当に《初めてちゃん》なのか? 俺以外にすでにコッソリと卒業していて、それがバレるのが嫌で「結婚してからネ!」とか主張しているのでは。


 考えすぎだな。瑞葉のNTRを夢想すると頭の回転が勢いよく回ってしまう。キリがないほど。


 俺と瑞葉は正直、吊り合っていない。俺は平均的な男子で、運動も努力はしているが飛び抜けてはいない。勉強も残念ながら平均点だ。本来、文句を言える立場ではなくて、お付き合いさせていただいているという姿勢が必要なのだ。


「義孝君、お待たせ、帰ろう」



☆☆☆☆☆



 自宅に向かって二人で歩く。


 途中で小林とさよならの挨拶をし、木下、妹ら運動部の連中と明日も頑張ろうとエールを交換し、二人だけの空間になるのを歩きながら待つ。


 瑞葉は俺の左腕を取り、胸を押し付けながら近づいてくる。


「ふふふ」


「なんだ、楽しそうだな瑞葉」


「好きな人と一緒に居られるのが嬉しいのよ」


「そっか。ところでさ」


「なーに」


「俺って自分で考えていたより独占欲が強くてさ、嫉妬も凄くするんだよ。瑞葉に親しく声が掛かるだけで嫉妬」


「だからさ、今日のように瑞葉の肩に腕を回されたりすると死んでしまうんだ。ウサギのように」




「ウサギは寂しくなったら、だね」


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