第10話 最終回:イチゴケーキ
コンコン
「由愛、まだ起きてるか?」
「お兄ちゃん、起きてるよー、入ってー」
由愛は可愛い黄色のパジャマを着て、机で勉強していた。
「私まだ寝るのは早いから勉強してたんだ。どうかしたの?」
後ろ手に持っていた買ってきたばかりのイチゴケーキを出す。
「俺、バイト代が出たから買ってきた。お前の分な。ほら、好きなイチゴケーキだぞ」
「お兄ちゃん、ありがとう! 嬉しい!」
そう言って机から立ち上がり、俺に抱き着いてきた。
「まて、ケーキが落ちる。机に置かしてくれ」
由愛はずっと抱き着いたままだ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ、ありがとう、お兄ちゃん……」
由愛は頭をぐりぐりと押し付け、甘えに甘えている。可愛い妹だよ本当に。俺は左腕で彼女を抱き支えながら、右手で頭を撫でる。
「よしよし、いい子だな」
母さんは、由愛を血の繋がっていない義理の妹だと俺に言った。しかも親指を上に立てて片目をつぶる勢いだった。
きっと義理はハッタリだ。そういうの好きな親だし。DNA鑑定でもすれば一発でバレるような嘘を……いや、確かDNA鑑定を実施した国が二割ほど親子関係が出なくて問題になって、日本でも離婚調停あたりで裁判所から許可を貰わないと出来なかったんだっけな。うん、まずは血液型で合ってるか調べればいいな。
なんでこんな知識が高校生の俺にあるかって? それは神の啓示があったからなんだ。
その前にだ、母さんが俺を弄る理由としては、俺が妹に暴走するかどうかを判断するためだろう、と推測できるな、うん。それほど妹と俺は仲がいいように見える。親としても近親相姦が心配になる筈だ。
いやいや、このまま母さんの話に乗っかっちゃって、キスなんてしても大丈夫か、妹なら許してくれないか? しちゃってもいい?
キモいって言われない?
バカなことに悶々とする俺だった。
「お兄ちゃん、また変なこと考えてるでしょ」
俺
「はい、すみませんです、ハイ……」
★★★★★
恋人と一年に一回しかできないキス。
甘えたがりの可愛い妹。
本気の告白なのに、嘘告で終わってしまったハルちゃん。
一か月間とはいえ、二股になった義孝を叱る面々
妹が義理の娘だという悪戯(謎)を仕掛ける母親。
このようなストレスが背景となってか、今年、大変な出来事に発展していく。