第1話 母親から義妹と明かされる
「由愛は血の繋がっていない義理よ」
そう断言して親指を立てる我が母上。
「な、なんだってー」
恐れおののいた俺こと西之原義孝は愕然とする。
「お父さんが拾ってきたの。マッチを売ってたって」
「マッチ売りの少女か……」
「嘘よ。」
「嘘かい~」
「本当の事情はさておき、由愛が高校卒業するまでは内緒よ。絶対に伝えてはいけません」
いきなり降ってわいた妹は義理、という話。家族にとっては大変な事実だというのに、全く重要そうな雰囲気がなく、夕食が流れる。
妹は自室で引き籠っている。父親は残業中だ。
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学校帰り、俺は幼馴染の瑞葉と二人で歩いていた。
「なぁ、一般的に言って、兄と妹の関係で恋愛で成立してることってあるか?」
「へ?兄と妹って、義孝君と由愛ちゃん?」
「いや一般的にって言ったろ」
「ないんじゃないかな、シスコンはあるだろうけど、恋愛してるって感じは聞いたことがないわ」
「そうだよな」
「由愛ちゃん、とっても可愛いから私と姉妹にはなりたいな」
「俺と由愛がそんな関係になったら、どう思う?」
「ファイアーボール放つわ」
「燃えるな」
「燃やすわよ」
「バカな話題ですまんな」
歩き続けていると近所のスーパーが見えてきた。
「あ、お母さんから食材の買い物頼まれたんだった」
「大変だな」
「うん、じゃ先に行くね、またね」
「おう」
走ってスーパーに向かって行く瑞葉の背中を眺める。
瑞葉とは幼稚園からの付き合いだ。こういうやり取りも意識せずにできるし、男女関係ない友情や絆も構築出来ている。
「おーい義孝!」
振り向くと、後ろからクラスメイトで友人の小林幹夫が追いついてきた。
「お前、今、村越(瑞葉)さんと話してなかったか?いいなぁ幼馴染なんだろ、あんなに美人と普通に話せるなんて羨ましい」
「お約束の腐れ縁ってやつだな」
「オレもあんな幼馴染が欲しかったぜ。みんなが羨ましがる」
「うーん、可愛いと言ったら俺の妹の方が可愛いな。美人度では瑞葉だが」
「オレ、初詣の時、メガネとコンタクトを忘れて、妹ちゃんの顔を正確に観られなかったんだよな」
「同じ高校になったんだから、これから見れる機会はあんだろ」
歩く途中で駅が見えてくる。
「おっと、オレはこっちだ。じゃぁーな、義孝」
「おう、また明日な」
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小林と歩いていると、後ろからポンと肩を叩かれた。振り向くと妹の由愛だった。
「お兄ちゃん、追いついたわ」
「おう、我が愛しい妹よ。学校はどうだ?変なこと起きてないか?」
「うん、部活をお兄ちゃんと一緒のバスケ部にしたよ。」
「背が低いのに大丈夫か?」
「平気、へーきよ。ただ男女別に分かれているのが残念ね。」
「男女別は体のつくりからして仕方がないな。」
「フフッ……」
妹は隣にちょこんと並び、俺の歩くスピードに一生懸命あわせようと頑張っていた。
まだ新学期が始まったばかり。桜の花が5分の1の開花であった。
左から、小林幹夫、由愛、義孝、瑞葉
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