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第65話 ゴブリンテイマー、奪還作戦を開始する

「あれ?」


 ボッテリィが自慢げに言ったとおり、ラスミ亭の料理は僕が今まで食べてきたどの料理よりも美味しかった。

 謎の肉の入ったスープや、香草入りのパン。

 普通の焼き魚でさえ、淡い味付けがされていて未知の料理と化していた。


 食事を終えた後、ボッテリィにお礼を言って別れ、カスミさんに「明日はよろしくお願いします」と告げて部屋に戻った。

 そして今日の出来事を思い出しながら荷物を整理していた時、僕は初めてそのことに気づいた。


「通行証が……ない」


 少しだけ開いていた小物入れを不審に思った僕は、中を確認した。

 すると王城前でもらった例の通行証を含め、予備に入れておいたお金がなくなっていたのである。


「まさか、きちんと閉めてなかったなんてことはないよな」


 記憶をたどるが、王城前で僕は絶対に亡くさないようにと、きっちり小物入れの口は閉めたはずだ。

 そしてそれ以降、一度も僕はこの小物入れを開けた記憶はない。


「どこかで落とした? いや、もしかしたら」


 少し前のことだ。

 ボッテリィとの食事の最中、彼からこんな話を聞いた。


「王都は人が多い分だけ犯罪も多いんですよ。特に初めて王都に来た旅行客なんかは狙われやすいんです」

「物騒ですね」

「でも突然襲われたりとかは滅多に……」

「そういえば今日、僕も襲われましたよ」

「ええっ。そ、それで無事だったのですか? 怪我とか、何か取られたものとか」

「あの程度の相手なら問題ないので倒しましたよ。辺境の魔物に比べれば、全然怖くないですし」

「そうですか。エイルさんはお強いのでしたね」


 安堵の表情を浮かべたボッテリィだったが、もう一度真剣な表情を浮かべると、こう忠告をしてくれた。


「ですが王都の犯罪者は、そういった直接暴力に訴えてくるのは滅多にいません。むしろレアケースでしょう」

「そうなんですか?」

「はい。大体の犯罪者は相手に気づかれないようにこっそりとものを盗んだり騙したりするので。例えばスリとか空き巣とかが多いです」


 その話を聞いた直後、追加注文していた焼き鳥が届いたためにすっかりそっちへ意識を奪われてしまったけれども。

 そのどちらかが通行証とお金を盗んだとすれば大変だ。

 お金は諦めればいいとしても、通行証は再発行してもらうとなるとまた長時間王城前で待たされることになる。

 最悪、滞在期間も延びるかもしれない。


「ゴチャック、ゴブハルト、出てきて。それと――」


 僕はテイマーバックに手を当てるとゴチャックとゴブハルト、他にもゴチャック同様ゴブリンシーカーへ進化している二十ほどのゴブリンたちを召喚すると、盗まれた通行証の奪還作戦を開始するのだった。


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