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第23話 ゴブリンテイマー、プレゼントをする

「ですから。今代表は留守にしておりまして」

「今日は店にいらっしゃると聞いて来たのですが? 本当は奥にいらっしゃるのでしょう?」

「ですから代表は急な用件で隣町まで出かけておりますのでお引取りください」


 僕たちが領都の中央通りにある三階建ての立派なダイト商会にやって来てからしばらく。

 ルーリさんと店員の押し問答が続いていた。


 店員の目を見ればルーリさんのスキル『真実の瞳』では嘘をついているかどうかはわかるはずだ。

 だが店員はルーリさんと一切目を合わせようとしない。

 もしかするとこの店員はルーリさんのスキルのことを知っているのかもしれない。

 それか誰かから彼女の目を見ないようにと言い含められているかのどちらかだろう。


「わかりました。それではウチのギルドマスターからの手紙はお渡ししておきますのでお帰りになったら領都ギルドの方へ連絡ください」

「はい一応承りますが……代表も忙しい身ですので直ぐには連絡は付かないと思いますよ」

「……そうですか。とりあえず私暫くは領都に居ますので。ああとこの髪飾り頂けます?」


 ルーリさんは小さな髪飾りを自分の顔の前に差し出して言った。


「あっ……はい。お包みいたしますか?」

「要らないわ。ここで付けていくから」


 ルーリさんがそう答えながら店員にお金を渡してからその髪飾りを僕に差し出す。


「え?」

「付けてくれるかしら?」

「僕がですか?」

「他に誰がいるの? ほら早く」


 髪飾りを僕に押しつけたルーリさんはそのまま横を向いてしゃがみ込む。


「僕女の人に髪飾りなんて付けてあげたこと無いですよ」

「じゃあ私が初めてなのね。うふふ」


 ルーリさんの肩が愉快そうに揺れるのを見ながら僕は少し頬が紅潮するのを感じながら、ゆっくりと彼女の髪へ手を伸ばす。

 指先に触れる艶やかな髪に一瞬手を引っ込めてしまうが、意を決して髪飾りを付けるため髪を掴んだ。


「こここれでどうですか?」


 僕は店員から受け取った手鏡をルーリさんに手渡してそう聞いた。

 彼女はしばらく手鏡で自分の頭を見てから「うんありがとう」と答えると立ち上がった。


「とても初めてとは思えないわね」

「は初めてですよ……人間相手には」

「人間相手では?」


 僕は怪訝そうに聞き返すルーリさんに慌てて両手を振ってごまかすように声を上げる。


「言葉のあやってやつですよ」


 まさかゴブリンの毛を整えたりしていたことをルーリさんに言うわけには行かない。

 村にいた頃はヤギの世話をしていたこともあるけれど。


「そっか。うんまぁいいわ。それじゃあ店員さんこれは貰っていくわね」


 そうルーリさんは店員に告げると「いきましょう」と僕の手を引いてダイト商会の外へ向かう。

 ダイト商会の中には髪飾りの他にも様々な商品が並べられていて買い物客もかなりいる。

 その買い物客をかき分けるように外に出るとルーリさんはその場で大きく息を吸い込むと僕に少し疲れた笑顔を向けた。


「本当に代表のダイトさんは居ないんでしょうか?」

「あれは嘘よ」

「でしょうね。店員さんの目があからさまに泳いでましたし」

「きっとダイトから聞いてたんでしょうね。私の目をなるべく見ないようにしてたからでも一瞬だけ目が合った時に読んじゃったわよ」


 そう言って自分の頭に飾られた髪飾りを指さすルーリさん。

 どうやら先ほど髪飾りを買ったのは店員が確認する時に相手の目を見るためだったらしい。


「それでどうするんです?」

「どうもしようが無いわね。しばらく待って返事が無ければもう一度来るしかないかな」

「それでも居留守を使われたら?」

「その時は店の前に張り付くしか無いでしょうね。面倒だけど」


 ルーリさんの目は四階建てのダイト商会本店の最上階に向けられた。

 そこにダイト商会会長ケリー・ダイトが居ることを見透かすように。


「調べてみます?」

「どういうこと?」

「僕のゴブリンを使ってあそこの部屋を調べてみますかって話ですよ」


 僕はルーリさんが見つめていた場所を指さして告げる。


「出来るの? だったらお願いしたいけど」

「もちろん出来ますよ。でもここでゴブリンを召喚すると目立っちゃうな」

「それならこっちよ」


 僕はルーリさんにまたもや手を引かれてダイト商会の建物から少し離れた狭い路地の奥へ向かった。

 この領都は狭い土地に様々な建物を建てたせいでかなり入り組んでいてこういった人通りが極端に少なく人目に付きにくい路地がそこかしこにあるらしい。


「本当はあまり来たくない所だけどエイルくんがいるなら襲われても大丈夫よね」

「もちろん。任せてください。それじゃあとりあえずゴブリンを呼び出しますね」


 そう答えると僕は腰のテイマーバッグに手を伸ばした。

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『悪徳領主の息子ですが、父の真似をしたら名君と呼ばれてしまいました』
https://ncode.syosetu.com/n7911kj/
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