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第15話 ゴブリンテイマー、立ち上がる

「いったい、何の騒ぎだ!」


カウンターの向こうで、マスターが救急セットを棚から取り出しながら二人に向けて大きな声を張り上げた。

僕とルーリさんが飛び込んできた二人の元に駆け寄り、残りの客はギルドの外を警戒するため動き出す。

その動きは、さすが冒険者というもので実に無駄がない。


「エンヴィ、何があったの?」


傷だらけの男冒険者の腕の中で、息も絶え絶えな女冒険者はエンヴィという名前らしい。

後で聞いた話によれば、Cランク冒険者の中でも一目置かれる実力者なのだそうだ。


「ワ、ワイバーンに襲われて……」


エンヴィをゆっくりと床に寝かせながら、男冒険者の方がそう叫んだ。

彼の名前はマイル。

エンヴィと同じくCランク冒険者で、彼女と共にCランクパーティ【烈風の刃】の一員らしい。


「ワイバーンだと……」

「ああ……町に着く直前に突然、空から襲いかかってきやがった……」


マイルが言うには、隣の領からこの地へ商人からの護衛依頼を受け、やっと町にたどり着くという直前に油断したところを襲われたのだそうだ。


「町の近くで襲われるとは思わなかったから……油断しちまった……」

「他のパーティメンバーはどうした?」

「あいつらは軽傷だ……。今は門の所で門兵と一緒に警戒してるはずだ……」


救急セットを抱えて駆け寄ったマスターがテキパキとエンヴィの防具を外し、治療を行っていく横で、ルーリさんはマイルの傷を回復魔法で癒やしていく。

どうやらマイルは見かけほど重傷ではなかったようで、弱い回復魔法しか使えないルーリさんでもなんとか回復させることが出来るようだ。


一方、エンヴィの傷はパッと見でもかなり深い。


回復魔法が使えるならまずエンヴィの回復を優先させるべきでは、と問うた僕に、ルーリさんはつらそうに首を振る。

ルーリさん曰く、自分の弱い回復魔法では表面だけ直してしまい、逆に悪化させてしまう可能性を考え、冒険者の治療技術を持つマスターに今は任せることにしたそうだ。


「マスター、なんとかなりそうですか?」

「ええ大丈夫ですよ。見た目はかなり深い傷ですが、縫って止血をすれば問題はないでしょう。ただ早めに中級の回復魔法が使える方を呼んできた方が良いかもしれませんね」

「ルーリさん、この町で中級の回復魔法使いは――」


僕がそう尋ねると、ルーリさんは少し考えるそぶりを見せた後、答える。


「この町で中級の回復魔法が使えるメンバーが所属しているパーティは数組いますが、一組以外は遠征に出ています」

「じゃあ、その一組のパーティを呼んできます」

「しかし、彼らは確か今日は朝から近くの村に魔獣の討伐依頼に出ていたはずなので……もしそのワイバーンがまだ町の周りにいるとすれば、戻ってこられないかもしれません」


僕はその言葉を聞いて、少し考える。

そして腰のテイマーバッグに手を当てて、中のゴブリンたちに語りかけた。


『みんな、ワイバーンと戦って勝てると思うかい?』


僕はゴブリンたちと共に修行をしている間、何種類かの魔物と戦った経験はある。

だけどその中にワイバーンはいなかった。


「ルーリさん」

「なあに、エイルくん」

「ワイバーンは例の【炎雷団】の人たちなら、倒せるくらいの強さですか?」

「そうね……。多分全盛期のあの人たちなら、十分対処できたはずよ」

「そうですか」


僕はテイマーバッグの中のゴブリンたちから急かされるように立ち上がると、ギルドの出入り口に向かって歩き出した。


「ちょっと、何処に行くの?」

「何処って――ワイバーンを倒してきます」

「正気……?」

「ええ。だって【炎雷団】くらいの力があれば、倒せる魔物なんでしょう? だったら僕のゴブリンたちなら、十分勝算があると思うんです」


僕はそう言って、ルーリさんに笑顔を返す。

彼女はその僕の言葉の意味に気がついたのか、それ以上僕を止める気はないようで。


「怪我だけはしないように、気をつけてね」


とだけ言って、僕を送り出してくれたのだった。

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『悪徳領主の息子ですが、父の真似をしたら名君と呼ばれてしまいました』
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