0コ目 「…すー。…すー。」なトコ
大好きなラブコメに全力で挑戦してみました。
「じゃあ今やったとこを使って、大問5、解いてみろー。」
一斉に鉛筆の走る音で教室が埋まる。流石は進学校。みんな真面目だなぁ。
「…」
ただ一人を除いては。
「…すー。…すー。」
鉛筆でなぞる音。と言われればそう聞こえなくも…なくも、ない。
僕たちの列の間に先生が入ってきたのを確認した僕は、ため息を吐いて補助バックをがさごそ。
ピストルを取り出して、その気持ち良さそうな顔に狙いを定めて、引き金を引いた。
「いたっ。」
よし。命中。
「大問5。」
起きた彼女に僕はボソッッと言うと、彼女は輪ゴムが当たった頬をさすりながら、ジトッッとした目を向けてきた。「もうちょっと手加減してくれないかなぁ」とでも言いたげに。
僕はその目に気づかなかったフリをして、教科書に目を落とす。教卓に戻る先生の後ろ姿が横目で見えた。ふー。毎日ヒヤヒヤなんだから。
「いっ…」
左頬の痛覚が働いたと同時に、机に輪ゴムが落ちる。その輪ゴムにはノートの切れ端がテープで留められていて、その切れ端にはふにふにの文字で
「いつもありがとう。」
と書いてあった。
輪ゴムが飛んできた方…左隣を見ると、彼女はもうすでに、さっきと同じ、気持ち良さそうな顔をしていた。右頬に赤く輪ゴムの痕をつけながら。
「…すー。…すー。」
僕は苦笑しながら、飛んできた輪ゴムから「いつもありがとう。」を外して、ちょっと迷って、隣が寝てるのを確認して、ポッケにいれた。輪ゴムはピストルに装填して、補助バックに戻した。
僕は彼女―藤宮詞月のことが、好きだ。
ただ、彼女のどんなところが好きかと聞かれると…パッと答えられない。
だから、一つ一つ書き連ねていくことにした。この問に対する、なにかハッキリとした答えが見つかるまで。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
頑張りたい。