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ゼロから始まる野球人生

初めて小説を書きました。あったらいいなを形にしたいと思います。

筆者は野球未経験ですので、温かい目で見てもらえると嬉しいです。

プロローグ:ある男の記憶


かつて、プロ野球の舞台にひときわ輝く一人の選手がいた。その男の名前は秋月誠。圧倒的な打撃力と勝負強さでチームを何度も勝利へと導き、多くのファンに愛されていた。観客が彼のバットに注目し、スタジアムが歓声に包まれるたび、秋月はグラウンドに立ち続けた。

だが、どんな名選手にも終わりが訪れる。秋月もまた、人生の最期を迎え、その輝かしい記憶を胸に静かに消えていった。



目覚めた朝

「蓮、起きたの?」

母の優しい声に、藤崎蓮は目を開けた。朝の光がカーテン越しに差し込む中で、布団の中で体を伸ばしながら「うん」と返事をし、自然に起き上がる。制服に袖を通し、さっさと準備を済ませて階段を降りた。


ダイニングに降りると、父と母が朝食の席についている。テーブルには焼き魚や温かな味噌汁が並び、蓮は「おはよう」と挨拶をして席に着いた。


「蓮、今日は何時に帰ってくるんだ?」


父が気にかけるように尋ねてくる。蓮は少し考え、


「特に予定もないし、いつも通りかな」と答えた。

「そうか、あんまり遅くならないようにな」

母もにこやかに見守っている。


部活に所属していないため放課後はのんびりしているが、そんな時間が落ち着くと思っていた。蓮は朝食を食べながら、穏やかな家族の雰囲気にほっとしていた。


朝食を終え学校に向かう道中

家を出た蓮は、通学路を歩きながら学校へと向かった。周囲の生徒たちの会話が耳に入る。


「今週末の練習、かなりキツいらしいよ。うちの学校、野球部は強豪だから手を抜けないってさ」

「そうそう、先輩たちもピリピリしてるみたいだし」


蓮の通う中学校は、野球の強豪校として知られていた。部活に属していない蓮にとっては、そこまでの熱量は想像もつかないが、クラスメイトたちが語る「強豪校」という言葉には少し惹かれるものがあった。



学校へ着き教室に入ると、クラスの友人たちがそれぞれ楽しそうに話している。

蓮も自分の席に着き、周りをぼんやりと眺めていると、隣の席の真田陽介が話しかけてきた。陽介は野球部のエースピッチャーで、誰に対しても気さくに接する人気者だ。


「蓮、昨日の試合見てなかったのか? すごかったぞ」


蓮は少し笑って、「いや、見てないんだ」と答える。

野球部の活動には興味がなかったが、陽介の話す熱量にはなんとなく引き込まれるものがある。


「お前も野球やってみないか?運動神経、悪くないだろ?」


陽介が誘ってくるが、蓮は「いや、いいよ」と笑って軽く断った。運動が得意なわけでもなく、勉強や読書に時間を使いたいと思っていた。

そのやり取りを見ていたのが、クラスメイトで野球部のマネージャーをしている森下あかりだった。彼女は蓮の横顔を眺め、少し微笑みながら声をかけてきた。


「蓮くんも、野球向いてるかもよ?」


あかりの言葉に、蓮は「向いてないって」と笑って否定する。あかりの優しい雰囲気に、クラスメイトも自然と気を許し、蓮もどこか引き込まれるような気持ちになった。


午前の授業が終わり、次は体育の時間だった。今日の体育では「野球」を行うことになり、蓮も他のクラスメイトとともにグラウンドに出ることになった。

「今日は実践的にバッティングをやってもらうぞ!」

体育教師が指示を出すと、クラスメイトたちのテンションが一気に上がった。蓮は少し気が重くなるも、順番が来るのを待っていた。普段運動をしない自分にとっては少し憂鬱な内容だったが、仕方なくバットを手にする。


「次は藤崎、しっかり構えろ!」


教師に名前を呼ばれると、蓮は少し緊張しながらバットを握り、打席に立った。バットの重さが手に馴染む感覚があり、少し驚きつつも肩の力を抜いて構える。


「いくぞ!」


教師がボールを投げると、蓮の目にはその動きがはっきりと見えた。体が自然に反応し、バットが振り抜かれる。乾いた音とともにボールは遠くまで飛んでいき、クラスメイトたちが一斉に驚きの声を上げた。

驚きと戸惑い



「おおっ!」

打球がフェンスを越えて飛んでいくのを見て、蓮自身も驚いた顔をしていた。手元に伝わる感触と、遠くに飛ぶボールの軌道が信じられない気持ちだった。

クラスメイトたちも驚きの声を上げ、野球部エースの陽介もその打球に感心した様子で、

「お前本当に野球やったことないのか?」と声をかけてきた。

蓮は返答に困りつつ、「うん、やったことはないと思う」と答えたが、自分の中でもこの感覚に違和感を覚えていた。

さらなるバッティング

体育教師も「藤崎、もう一球いってみようか?」と促してくる。蓮は少し戸惑いながらも再びバットを握り、先ほどの感覚が偶然でなかったかを確かめたくなった。

次のボールが放たれると、またしても体が自然に動き、バットを振り抜いた。再びボールが芯で捉えられ、勢いよくフェンスの向こうに飛んでいく。クラスメイトたちから大きな歓声が上がり、蓮は一瞬誇らしい気持ちを感じた。



打球を見送ったその瞬間、蓮の頭の中にふと別の光景が浮かんだ。満員のスタジアム、目の前にはバットを持った自分、周囲からの大歓声――それはまるで現実のように鮮明な記憶だった。

「え……?」

蓮はそのイメージに戸惑いながらも、周囲の歓声で現実に引き戻される。陽介が「本当にまぐれじゃなさそうだな!」とからかいながらも、興味深そうな顔をして蓮に笑いかけた。

蓮はその記憶がなんだったのかまだ理解できないものの、心の中で「もう一度やってみたい」という気持ちが静かに膨らんでいくのを感じた。

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