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八十九、ジェイミーは、鳥頭なので。







「ジェイミー様。そろそろ、おふたりをお迎えに行きましょう」


「へ?」


 その日の午後。


 じっとしているから、余計なことを考えるのだという見解に至ったぼくは、侍従さん・・マクシムさんと一緒に、庭でカシムに作ってもらった風車を持って走ったり、カルヴィンに作ってもらった水鉄砲でマクシムさんと対戦したりして、思い切り遊んだ。


 そうしていると、カルヴィンやカシムと一緒に遊んだことを思い出して、落ち込みそうにもなったけど、また一緒に遊べるのだからと、ぼくは腕を磨くことに専念した。




 うん。


 がんばった、ぼく。




 そして夕方になる頃、マクシムさんに笑顔で言われ、ぼくは首を傾げる。


「ふふ。きょとんとされたお顔も可愛いです、ジェイミー様」


 マクシムさんは、何やら満足そうだけど、ぼくは謎で仕方がない。


「んと、おむきゃえ?だえにょ?」


 だから迷わず、誰の迎えに行くのかを聞いた。


 マクシムさんが『おふたり』っていうのは、大体カルヴィンとカシムのことなんだけど、でも、ふたりが向かったのはマグレイン王国で、ここからだと行くだけで数日はかかる距離。


 つまり、未だ行きの旅の途中で、目的地であるマグレイン王国に辿り着いてもいないはずなのに、誰を迎えるというのか。


「もちろん。お出迎えするのは、クロフォード公爵子息とサモフィラス国第二王子殿下です」


 だけどマクシムさんは、にこにこしたまま、当然だというようにふたりの名前を口にした。


 やっぱりな名前だけど、やっぱりじゃない。


「らけろ、ヴぃ、かちむ、とおく、いった」


 マグレイン王国へ行くには、馬車で数日はかかると聞いているぼくが言えば、マクシムさんが、ああと頷く。


「ジェイミー様は、本当に賢くていらっしゃいますね。確かに、通常の移動であれば数日かかりますが、おふたりは、転移の魔法陣をお使いになりましたので」


「ふぁ!」


 


 そうか!


 転移の魔法陣!




「この王城には、マグレイン王国のクロフォード公爵家に通じる魔法陣がございます」


「しょっか」


 そこは、マグレイン王国の王城じゃないんだなと思いつつ、ぼくは納得とマクシムさんに笑みを見せた。


「はい。クロフォード公爵家は本当に素晴らしい魔力、魔法陣の才をお持ちで。この王城にも、多くの魔道具をご提供くださっています」


「ヴぃ、ヴぃにょ、おうち、しゅごい」


 カルヴィンも、クロフォード公爵家も凄いのだと、何故かぼくが胸を張れば、マクシムさんがにこにことぼくを見つめる。


「はい。ですので、マグレイン王国の新たな国王に、クロフォード公爵がたたれること、我らヘリセの民は大変に嬉しく思っております」


 マグレイン王国の現国王が退位し、異母弟であるクロフォード公爵が即位することを、近隣の国は大歓迎していると聞いて、ぼくは思わず苦笑した。




 ぼくが生まれた国の王家って、そんなに問題視されていたのか。 


 まあ、国王と第一王子は酷かったもんな。


 でも、第二王子はまともだってカルヴィン言っていたけど。




「さあ、ジェイミー様。参りましょう」


「う!」


 転移の魔法陣で、カルヴィンとカシムが帰って来る。


 そう聞いたぼくは、現金にも物凄く元気になって、ぴょんぴょんと跳びながら、マクシムさんと庭を歩き、回廊を歩いて、魔法陣がある部屋へと向かった。








「ヴぃ!かちむ!おきゃえり!」


 マクシムさんに連れて行ってもらった、転移の魔法陣が設置された部屋に着いてまもなく、魔法陣が光ってカルヴィンとカシムが戻って来た。


「ジェイ!ただいま!」


「ジェイミー。戻りましたよ」


 そして、ふたりが転移の魔法陣から出るのも待ちきれないぼくは、駆け寄って思い切りカルヴィンに抱き付き、カシムを見上げる。


 


 やっぱり、ふたりが居ると、物凄く安心する。




「よかった、ジェイ。お怒りは解けたかな?」


「あ」


 そして『らっこちて』とカルヴィンにねだり、すぐさま叶えてもらったぼくは、拗ねまくって、カルヴィンともカシムとも、まともに口をきいていなかったことを思い出した。




 ああ。


 ぼくの鳥頭め。




ありがとうございます。

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