ろくろ首の話
今月号(2024年9月号)の月刊少年マガジン掲載の「虚構推理」に、ろくろ首の妖怪さん(爆乳)が登場しました。
それに関して、九郎先輩が、ろくろ首には首が伸びるタイプと首だけ分離するタイプの二種類がある、と語っていて、ちょいとエッセイに纏めてみようかという気になりましたもので。
駄文ですがお付き合いください。
ちなみに、月マガは別に定期購読しているわけではないですよ。
今回、たまたま読む機会がありましたもので(笑)。
さて、ろくろ首には二種類ある、という話ですが、これ自体は前々から知っていました。
もちろん、私も最初に「ろくろ首」という妖怪を知ったのは、首が伸びるバージョンだったのですが、首が飛ぶタイプは、小泉八雲の「怪談」で知りました。
あと、倉橋由美子先生の怪奇短編にも登場したような気が……。
確か、夜な夜な眠っているうちに首だけが飛び回る美少女と中年男性の、官能的なお話だったように記憶しています。
このような、人間の首が胴体を離れて飛び回る妖怪を「飛頭蛮」と言い、元ネタは中国の伝承です。
「飛頭蛮」というと、「うしおととら」のトラウマ級妖怪の一つ、餓眠様を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうが、あれは巨大な首だけが飛び回る妖怪で、普通の人間の胴体は無い(はず)です。
正直、読んだ当時は「俺の知ってる飛頭蛮じゃない……」と思ったものです(笑)。
飛頭蛮の出典で最も古いのは、東晋時代(317~420)に書かれた小説集「捜神記」のようです。
この中に、三国時代(184~280)の呉の武将・朱桓が雇った下女が飛頭蛮だった、という話が記されています。
内容自体は、だからどうした、というかんじのお話ですが。
元々は、当時の中国南部の少数民族の間に伝わる伝承だったようですね。
これがさらに南――マレー半島に行くと、ペナンガランという妖怪がいます。
こいつはさらに強烈で、首の下に内臓がぶら下がっているというおぞましい姿をしています。
少々脱線しますが、このペナンガラン、某ドラゴン四兄弟が主人公の小説にも登場しますね。
「天使のなっちゃん」に振り回されてボコボコにされるあいつです。
さてこの妖怪、作中では「ポンティアナ」と呼ばれていますが、ポンティアナ(ポンティアナック)というのはまた別物で、日本で言うところの産女のような妖怪を差すんですね。
知りませんでした。
ろくろ首の話に戻りましょう。
Wikipediaの記事によると、ろくろ首の語源については、陶器を作る際に用いる「ろくろ」(一番一般的なやつですね)や、井戸のろくろ(滑車)、傘のろくろ(開閉するための仕掛け)など、諸説あるようです。
原型はやはり首が分離するタイプのようです。
Wikiには様々な事例が記載されていますので、ご興味のある方は読んでみてください。
これが、首が伸びるタイプに移行したのは、元はと言えば、鳥山石燕(1712~1788)らの妖怪絵師が首と胴体を繋ぐ霊的な糸を描写したのが、首が伸びたと見間違えられてしまったため、なのだそうです。
それが今ではすっかり、ろくろ首と言えば長い首、というイメージで定着してしまいましたね。
最後にどうでもいい話。
デュラハンと飛頭蛮のハイブリッドで、首も胴体も自由に動け回れるのがいたら、最強だと思いませんか?