第九十三話:技術都市レイセリオ最大の危機
語り:リーデル
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話を聞くと最悪の状況だ
現状だと手の打ちようがないかもしれない
唯一、その状況を打開できるとすれば
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「ど・・・どういうことですか!?縄張り争いが終わっていたというのは・・・いったい」
ヴァドがあたふたしている。
それは自分も同じかもしれない。
彼が何を言いたいのかがよくわからない。
そんな思いをよそに、彼、レクスは話を始めた。
「恐らく、今現在向かってきている最終部隊が本命だ。1匹だけいる大型の猿獣、恐らくそいつは『猿神』だ」
その名を聞いて、いや、その名を聞いただけで確かにすべてが繋がった!
それは、ヴァドも同じようだ。彼にも魔獣の生態については教えている。
ラウニィだけがまだ理解に及んでいないようだ。
すぐに通信魔道具を全方位拡散型にして、この会話を他の人々にも聞こえるようにする。
混乱を招くかもしれないけど、正確に状況を把握してもらう!
「向かってきているのがレクス、君のいう猿神で間違いないとすれば・・・縄張り争いはすでに猿獣の勝利で終わっているという事だね」
「そうだ。猿神の知能はかなり高い。狼獣側にそのクラスが誕生していないのなら・・・とっくに勝利側は確定していた。狼たちは、敗北すればその場所を縄張りとする全個体が一気にその魔獣の配下となる。つまり・・・狼たちは猿獣の配下になっている!」
『『!!?』』
通信魔道具越しに驚愕の反応が返ってくる。
「縄張り争いが終結していることはそれで説明できますじゃ。だが・・・この状況の説明については?」
ヴァドがそう聞いてくる。
どうやら、彼は「そこまでしか」わかっていなかったようだね。
だから、まず自分から話を切り出す
「南でとある時期から起きてたこと・・・人を襲撃するのが狼のほうが多い理由はそれだよ。猿の配下になってるんだ、襲えと言われたら拒否することはしない。猿が数は少ないけど襲ってくるのは、縄張り争い中でその領域に入ってきたからというのを思わせるため!」
「元々、縄張り争いは終わっていたんだ。なら両種が共闘して襲ってくるのも当たり前。
最初は襲撃場所が狼側に偏っているのかと思ったけど・・・単に奴らは配下だっただけなんだ」
「な・・・なんと」
「・・・うん。レクスがここに来る時言った、猿獣が奥の方にいたのが襲ってこなかったのは」
「この襲撃のために戦力を温存していたんだよ。猿種は狼種より成長に時間がかかる。
狼種は繁殖力が高い。その上餌を潤沢に上げればすぐにでも数を増やすことができる。
襲撃された商人や旅人、バウンサーや騎士の遺体のほとんどが狼側に流れていたのはそれが理由だよ」
『会話中失礼します!結局、この状況の説明ですが、両種が共闘して襲ってきたことはわかりました!
では・・・奴らの、いえ、ヤツの目的はいったい!?』
通信魔道具から放送担当の子の焦った声が聞こえる。
レクスと顔を合わせて頷き、2人同時に答える。
「「猿神の狙いは塔に集まっている魔力!王の称号をもった魔獣は、体内に魔力をため込むことでさらに力を増す!」」
『な・・・っ!?』
「さらに、やつは恐らくだいぶ前からこの都市の塔に狙いを定めていたんだろう。だからこそ縄張り争いはさっさと終わりにしたかったはず。
時間がかかったがそれが終わったことで、今度はこの都市の情報を見ていたんだ。それくらいの知能は持つ」
「そして、知ったんだと思う。この都市の塔に最短でいける道!その道が数日はそのままだという事も!」
『つ・・・つまり・・・』
「「最後の奴らが向かっているのは、つい最近下した都市中心地への直通橋だ!!」」
最悪としか言えない。まさか、猿神があの山に生息していたなんて・・・!
普通のメイルを探索に派遣しても返り討ちに会うだけだっただろうけど・・・もっと調べておくべきだった!
猿神は、ほかの巨獣や大型魔獣よりかは小さい。けど、その知能だけは他を圧倒している。。
はっきり言って、ヤツに率いられた群れは並みの騎士団クラスの統率力と戦術をしてくるときがある。
『こちらレヴァイ!最終組が目撃されてから、やたらと距離を取るようにしているでござるよ!明らかな時間稼ぎ行動でござる!』
『こちらアンキセス!こちらも同じだ!しかも、他のメイル乗りを別の場所に移動させようとすると、そいつを優先して襲おうとする!戦力の分散も困難な状況だ!』
『こちら南門担当指揮官!こちらはそういう動きはないが・・・狼どもなので数が多すぎる!今でもカバーしながらで被害が出ないように何とかしているが・・・別の所に行かせることが無理だ!』
・・・終わった。
どうすれば・・・どうすれば・・・。
打つ手がない・・・いや、1つだけある。けど・・・それは・・・
「アース・・・すまない」
【いや。この危機を目の前にして、このままここにいることなどできぬよ】
「っ!!」
慌ててそちらを見ると、レクスがアースリッターに乗り込もうとしていた。
「ちょ・・・ちょっとまって!アースリッターは・・・」
「わかってる。できるのが通常戦闘くらい。それで猿神を倒せるかどうかは怪しいことも。だが・・・今動けるのが僕たちだけならやるしかない。最悪、時間稼ぎだけでもさせてもらうよ」
だめだ・・・聖武具霊を、彼の願いを!こんなところで!
なにか・・・。
「・・・うん。一緒に行く」
・・・え?
「・・・うん。スクワイアを繋げて」
ラウニィが真剣な表情でそこにいた。
彼女の能力は不明・・・けど・・・なんだろ。
なぜかはわからない。けど、これが現状の最適解だとそう思える。
「・・・わかった!1分だけまって!ヴァド急いで!!」
「了解ですじゃ!」
直ぐに反応して、彼は年を感じさせない動きで接続準備を開始してくれる。
この都市を守る、最後の剣。
その準備にだけ今は注力する!!
神狼と猿神の違いについて
そもそも「神」の名をつけて呼ばれるようになる魔獣はその種類での最強の魔獣を意味して付けられる。
しかし、種類ごとにその傾向は大きく変わる。
狼の場合「ため込んだ魔力を自身の身体的強化に全て費やす」。それ故にその体はどんどんと巨大化していく。ただし、それにつれて魔力の暴走に陥る確率が高くなる。結果、体が耐えきれずに死亡する個体が発見されたりするのが一番多い魔獣である。
一方、猿の場合は「ため込んだ魔力を自身の強化に費やす」と似たようなもの意味ではあるが、その強化に知能に関しても含まれる。魔力を脳に与え続けることで活性化し、回りの状況を見ることで考える力をつけていく。さらに月日をかけることによって見た状況を推察するようにもなる。猿神に至った魔獣に関しては、発見次第すぐに討伐することが推奨されているが身体強化もされていっているので討伐が困難になると極めて厄介な存在である。ただ、脳に与える魔力は相当量が必要なようであり体は狼ほど巨大化しない。
次回「コネクト」




