第九十二話:繋がった危機
語り:レクス
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長いこと時間をかけたのだろう
待ち続けていたのだろうこの時を
そしてその時が来たのがちょうど今日だった
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1夜開けて翌日。
「レクスとラウニィは都市の住宅地へ行くんだっけ?」
リーデルさんが聞いてくる。
「そのつもりです。特に何かを見るというわけじゃないんですが・・・現状はまだ手伝いできる状況じゃないそうだし」
「・・・うん。都市の作りを見てみたい」
「りょーかい!レヴァイは昨日調整したメイルの状態確認してね。違和感あったら再調整するから」
「心得た。朝食後にすぐにさせていただくでござるよ」
「わしは、リーデル師匠と一緒にアース殿の調整計画の検討じゃな」
「だね!アンキセスは・・・どうする?」
少し考えて、彼は答えた。
「そうだな・・・レヴァイのメイルの確認に立ち会おうかと。それが終わったら、また門のところに行ってこようかと」
どうやら昨日の情報がやはり気になっているようだ。
直接そのあたりの話を聞いたり、外壁から外を見るのもいいかな・・・。
そう思っていた時に、その音は突如響いた。
「な・・・なんだ!?このけたたましい音は!」
アンキセスが耳を防ぎながら叫ぶ。
叫ばないと聞こえないくらいに大音響が聞こえる。
なんだ?鐘を盛大に打ち鳴らしまくってる音。しかも、すぐそばで。
「・・・あ、音量調整が作業中状態だった!」
そう言ってリーデルさんが音を少し小さくする。
しかし・・・そういう彼女の顔に余裕はなさそうだった。
「・・・なにかありましたね?」
そう言うと、彼女は真剣な表情で頷いた。
「そろそろ、都市全域放送で詳細が伝えられると思う!」
そう言った次の瞬間、通信魔道具が起動し声が聞こえた。
『レイセリオ全住民及び滞在中の全客人に伝える!現在、南より大量の魔獣がこの都市を目指して向かってきている!
種別は、猿獣と狼獣!種類的に南の森と南西の山にいる魔獣たちで間違いないと思われる!
とにかく、数が多い!レイセリオ警備隊のメイルは全機起動!準備ができたものから迎撃を開始してくれ!
また、バウンサーや商人の護衛としてやってきた滞在中のメイル乗り!すまないが協力をお願いしたい!!』
その放送が流れて少しして、遠くの方から振動が伝わってきた。
どうやら、かなりの数のメイルが一斉に走っていったようだなこれ。
「・・・これは、異常事態だな」
アンキセスが険しい表情で言う。
「両種が共闘して一か所を襲撃しにくるなど・・・今までのことを考えると全くわからん」
確かに。
縄張り争いしていた2種が同時に同じ場所を・・・?
なんだ・・・何を見落としている。
そう思ってしばらくすると、次の報告が上がる。
『さらに緊急連絡!西門と東門に猿獣が襲撃!そこそこの数!
出撃の遅れていたメイルが数機向かうが手が回らないかもしれない!
現在、まだ都市内にメイルがいればそちらの救援をお願いしたい!』
振動が止まった・・・と思った直後に再び。
今度はさっきよりは響かない。正面にやはりかなりの数が移動していったようだな。
・・・まずい。
なにか繋がりそうになってきた。
もしかしてという答えがでた気がする。
だが、それがまだ確信が持てない。
確信が持てた時、間に合わないかもしれないが。
けど・・・今はそれより現在の状況の対処か。
「・・・どうやら、立ち合いをしている場合じゃないようだ」
アンキセスがライトセイバーに向かう。
「俺は東門に向かう」
その時だ。
「・・・いや。アンキセス殿は西門に向かってもらいたいでござる。拙者のほうが早いゆえ、距離のある東門へは拙者が向かう」
レヴァイが立ち上がり、メイルに向かう。
「いや・・・確認のとれていないメイルで出撃する気か!?」
アンキセスが驚いて聞くが、レヴァイは真剣な表情で頷いた。
「今は戦力を出し惜しみしている場合ではござらん。都市内の最低限の防衛メイルを除いて全機で当たるべきと思うでござる。
なら拙者は、調整してくれた彼女の腕を信じるまで。・・・なあに、これまでも調整不十分で戦っていたのでござる。無茶はせぬよ」
そう言ってこちらを見る。
リーデルさんが頷く。
「まずいと思ったらすぐに戻ってきて!本当なら調整確認していないのを出撃させたくないけど・・・今は頼らせてもらう!」
それにレヴァイははっきりと頷く。
2機が出撃していく。
・・・通常戦闘ならいけるし、最悪は僕も防衛に参加するか。
そう思っていた時、さらなる報告が上がった。
『さらに増援!山の麓を北に沿って走る魔獣の群れを発見!数は今までで一番少ないが・・・なんだ?
他の場所で確認できない猿獣が1匹混ざっている!他の個体より大きい!?・・・そのままコース変更、都市の北側を回りこむように移動しようとしてる様子です!なんで近い東側じゃないんだこいつ!?』
それを聞いた瞬間、嫌な予感が現実となり、確信が繋がった。
先ほど出した答えの回答が正解だったと。
「・・・なんてこった」
僕は唖然と呟いた。
ラウニィが心配そうな表情で見てくる。
リーデルさんとヴァドさんもこちらを見てくる。
「これが、狙いだったんだ・・・くそ!最悪の結果を想定していたのに、それを見越した配置を進言しなかったのがさらに最悪すぎる!!」
僕はそう言って拳を机に打ちつける。
「よくわからない。どういう状況なのかわかったのなら、教えてほしい!」
リーデルさんが真剣な表情で聞いてくる。
なので、こちらも教える。手遅れになっていなければいいけどという思いと共に。
「南の魔獣たちの縄張り争い・・・そんなの、かなり前に決着がついていたってことだ」
全話の後書きの、作者なりの回答
「最終目標に向けて行動を開始する前兆」
この世界の魔獣は「強くなる」ほど体内に魔力を蓄積します。過剰摂取は自壊の元ですが、稀にその魔力に耐え抜き強靭な力を得る個体が存在します。第一部にもおりました、そういう奴が。
そして、ワンランク上の存在に進化した魔獣は「ほぼ無制限」に魔力をため込むことができるようになり「ため込んだ魔力の量」によって力を増していきます。
なお、「ほぼ無制限」となるのはやはり限界ラインはあるようで・・・。ただそのラインが同じ種類の魔獣でも上下幅がひどいので正確に把握することができない故の表記です。




