第八十六話:迎える者たちと帰る者たち
語り:
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新しい出会いの予感と
旅立ちの予感
そしてとんでもない帰国
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技術都市レイセリオ
その日、1人の女性がようやくといった感じに帰ってきた。
「・・・ただいまー」
そんな彼女の前には、メダルを片手で持って突き出している男性がいた。
年は初老に差し掛かったといったところだろうか?
年を感じさせない佇まいをしており・・・それとなく怒気を感じる。
「えーと・・・ただいまー」
彼女は聞こえなかったと思ったのか、もう一度声をかける。
男性は・・・その状態のままだった。
「えーと・・・怒ってます?」
恐る恐る聞く。
「・・・怒ってないとでも?」
「思ってませんごめんなさい!」
彼女はすぐさま謝罪し頭を下げた。
それを見て男性は1つため息をついたのち、彼女にメダルを渡した。
「まったく・・・これで何度目でしょうかね?局員も呆れてましたよ」
「・・・切れやすい紐が悪いと自分は思うのですよ」
次の瞬間、頭上にげんこつが落ちた。
「いったっ!?」
頭を押さえてしゃがみ込む。若干涙目。
「その言い訳も何度聞いたことか・・・まったく、もう少し気をつけてください。頼むこちらの身にもなってほしいですな」
そう言って男性はため息を再度。
「・・・ごめんなさい!」
彼女は涙目で頭を押さえながら、再度謝罪するのであった。
「それで・・・簡単にしか聞いておりませんでしたが、間違いないのですか?」
部屋に入って荷物を広げながら、男性は聞いた。
「・・・うん?・・・ああ、あの事だね」
彼女は一瞬なんのことだったか忘れていたが、すぐに思い出した。
「船の上でも噂話レベルって言ったけどね・・・その程度の情報だよ」
「ただし、信ぴょう性のある話だったのですかな?」
そう聞くと、彼女は笑顔になって答えた。
「船の上じゃ詳しく話せなかったけど、聞けた情報は2点。
1点目、数十機のメイルをたったの1機で撃破した。
2点目、そのメイルは両腕に光る剣を装備していた」
「1点目だけだと弱いですが、2点目でほぼ確定ではありませんか!?」
男性は驚いた。もう少し判断に悩む内容の話だろうと思っていたのである。
「どこが噂話レベルですか・・・」
「人数の問題。確認とれただけで5人くらいなんだよ、その光景を見たって人が」
「そのメイルに乗っていた人は全員死亡したのですか?」
「うん。と言っても、その国で重罪犯したり野党ばかりだったみたい。みんな仲良く首チョップ!」
「それは聞けませんな」
そう言いながらも手を休めず、荷物整理をする。
「それで、こちらの情報は何かあった?」
「そうですね・・・本局のほうで長距離通信により緊急連絡が入ったということを聞きましたが、内容までは」
「そっか。後で聞きに行くよ」
「頼みます。『リーデル秘級技術士』様」
「・・・様付けやめて!似合わないから!」
港町ラスティアート行き船内
「・・・食器はそちらの魔道具のスイッチを入れていただきますと係の者が取りにきますのでよろしくお願いします。それでは、ごゆっくりと。失礼いたします」
そう言って、配膳担当者は扉のところで一礼して部屋から退出していった。
見ただけでわかる豪華な部屋、船内で食べる食事としては最高とさえ言えるだろう料理。
そして・・・それを見て冷や汗をかいている4人。
「・・・よかったな、ライヤー。自慢できるぞ」
「・・・さすがにここまでくると、正気を疑われそうなので無言を貫きます」
「だね・・・おいしそうなんだけど・・・なんだけど・・・」
「・・・これは、旅団時代でも無理だ」
レイ、ライヤー、エリア、トロアの4人であった。
旅立ちを見送った後、船に乗って帰国することになっていたのだが・・・。
『色々と楽しい話も聞けたし、彼のことも色々と聞けてよかった。それに、手紙一通届けるためにここまで来てくれるというその心意気も素晴らしい。合わせてのせめてものお礼をさせてもらいたい』
そう、女王が言って筆頭騎士から渡されたのが乗船チケットであった。
「船のチケット」と言われただけだったので、素直に礼をして受け取ったのだが・・・。
「・・・まさか特別ルームの乗船チケットだったなんて、ね」
エリアさんが遠い目をしている。
船に乗るとき、何気なくチケットを渡したら受付担当があわてて船内に走っていったのである。
何事かと思って待っていると、城で雇われている執事長みたいな人がやってきて部屋に案内されたのであった。
高級チケットから船内での食事利用ができるようになるのだが・・・特別ルームの客はそれ以上である。
船の一番見晴らしのいい場所に部屋があり、その広さも下手すれば20人くらい泊まれるくらい。
シャワールームどころか普通に入浴スペースが別室でついており、寝室も別室扱い。
食事は最高級のものを、部屋まで届けてくれるというもの。ある程度必要なものはルームサービスで提供される。
はっきり言おう。
多分、普通に利用できるのは公爵以上・・・つまり王族くらいなもの。
一応、女王が船長あての手紙を書いていてくれたので問題など起きなかったが、彼らが普通に利用できるような部屋ではなかった。
「・・・やばい。うまいとしか言えない」
「ですね。・・・二度と味わえないでしょうから、ゆっくり食べましょう」
「だね。再現はまず無理。しっかり味わって食べよう」
「そうだな」
4人は、二度と味わえないであろう料理を堪能するのであった。
「そういえば・・・レクスからなんか袋もらってなかったか?」
レイが食後、くつろいでいるときにふと思い出して聞く。
「ああ。なんかお礼って言ってくれたな・・・固いのが入ってるみたいだが・・・」
トロアがそう言って袋からそれを取りだした瞬間
再び部屋から音が消えた。
「・・・あいつ・・・なんてものを渡してるんだよっ!!?」
それは、希少価値の高い宝石として知られているブルークリスタルであった。
序章から登場してここまで色々と活動してくれたトロアさん、おつかれさまでした。
元の大陸に戻るので、本編内での彼らの登場はこれにて終了です。
仲間を得て、本格的に旅の始まった主人公。
次章は新しい出会い、新しい力の登場となります。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今年の投稿はこの話で終了、新章開始は年明けよりとなります。




