第七十五話:負けずに勝つな
語り:レヴァイ
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なんとも奇妙な縁でござる
なにもこんな時に再会することもないであろうに
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「なんと!レクス殿も間違えられたと!・・・本当に奇妙な縁でござるな」
「まったくだね。まあ・・・なんかこっちは知らないうちに疑い晴れたけど」
そう。
レクス殿も間違った渡航先のチケットを渡されてこの国にきたそうでござった。
同じ国に間違って飛ばされて再会するとは・・・出来過ぎた偶然でござるな。
「というか、こっちとしては2人が知り合いだってことが意外だった」
「そうだね。まさかあのまま北に進んでたら、争いに巻き込まれたけどすぐに依頼完了だったのも含めて」
そういうのは、トロア殿とエリア殿。
2人・・・というか一緒に活動していたレイ殿とライヤー殿含めて4人ともレクス殿と知り合いだったのでござる。
なんでも、以前少しの間とはいえ同じ旅団にいたとか。
本当に奇妙な縁でござるなぁ。
「しかし・・・それはそうと、この国の騎士の戦い方はなんというか迫力が違うな」
レイ殿が横を見ながら言う。
つられて全員でそちらを見ると、模擬戦が始まっており激しいぶつかり合いが起こっていた。
「兵士たちにより模擬戦は見たことがあるけど・・・メイル同士の近接戦がここまで迫力がでるとはね」
エリア殿もびっくりした目をしながら見ている。
恐らく、拙者とレクス殿みたいな人物だけだろうな。あまり驚かないのは。
いや、実際は驚いているでござるよ?
接近戦をするとはいえ、ここまでの戦いはそうそうお目にかかれるものではないでござるからな。
あちらだと、魔銃の銃身をいかに逸らすように移動しながら自分の攻撃を当てるという戦い方になるでござる。目の前に行われているのはそれと違って、ただ接近しての斬り合いでござる。正直、拙者達のいる大陸の騎士たちがどれだけ対応できることやら。絶えず動きながらの戦いではなく、足を止めてのぶつかり合いでござるからな。距離感違い過ぎて避けるどころか防ぐための盾の構えが間に合うか不安になりそうでござるよ。
そう思ってると、拙者がここにくる原因んとなった女性騎士がやってきたでござる。
「あ、ここにいましたか。レヴァイさん、そろそろ時間ですよ」
「あ・・・了解でござる」
依頼を受けたとはいえ・・・何とも気の乗らない依頼でござるよ。
その表情を察したのか、このあと同じように模擬戦の代理をすることがいつの間にか決まっていたというレクス殿が女性騎士に聞いている。
「気になるんだけど・・・この模擬戦って勝利すると何かあるんですか?」
「ああ、別の大陸から来た人ならわからないですね。この国とグリアスはそれぞれ女性騎士、男性騎士が強いのはご存知でしょうか?」
「それは一応」
「それで、お互いの国の出生率が低下していることは?」
「なんとなく」
「その上、お互いの騎士が『自分より強い騎士を伴侶にしたい』って言っているのは?」
「・・・あ、それでなんとなくわかった」
他の4人も気づいた表情をしているでござるな。
「そうです。勝利した者は伴侶を選ぶ権利を得、敗北した者は対戦した相手を伴侶に選ぶことができます」
「・・・お見合いを模擬戦でしとるようなもんか」
「まあ、間違ってはいませんね。ちなみに、勝利した者が相手を気に入ってるならそのまま国に連れて帰ることもあります。敗北した者側からの申し出が受理された場合も勝利した側の国にいくことになりますね。実際、我が国にそういった男性騎士がおりますから。ただ、次年度の模擬戦でその方を代理に選ぶことはできません」
「代理に選ぶことができるのは、他国からきた者・・・条件が合いそうなのはバウンサー職だけかな」
「ですね。また、こちら側でも向こう側でも、そういった方がそのまま永住するケースもありますよ。その子供たちが国に仕える騎士になる場合もありますし」
「なるほどね。・・・で、あなたは?」
「わたし・・・ですか?」
「レヴァイを代理に選んだのってそういう理由があったりするの?」
5人とも興味津々といった表情で聞いているでござるよ。
すまぬが、それは聞かないでほしかったでござるなぁ・・・
「え?全然」
「「「「「はいっ?」」」」」
「わたしの騎士としての実力より彼のほうが強そうだったからお願いしただけですね。今回の相手、興味のない方ですし。戦っても勝てそうもない相手なのでどうしようかと」
「ああ・・・勝ってもらったら選ぶ権利を得るから選ばないという選択肢をとれるのか・・・」
「ええ。ただ、この場合代理者にも権利があって『戦ってみてわかったが、彼は信頼できそうな人物だよ』と言って押される場合もありまして」
「そういうパターンもあるのね・・・で?」
「面倒なので、彼には『負けずに勝つな』って言いました」
5人の顔がこちらを向く。
哀れな人物に向ける目をしながら。
まあ・・・拙者も、彼女には全く好意をもてないので問題ないでござるが。
そもそも、この参加自体「理由なき渡航について目をつむってもらう」という交換条件を提示されたが故なのでござるからなぁ。
そんなことを思いながら、胸にぶら下げているメダルに視線を向け・・・我がメイルに向かうのでござった。
「?・・・あのメダルをなぜ」
そんな声が聞こえたような気がしないでもないでござるが、この時は完全にスルーしておったでござる。
ちなみに模擬戦は、騎士との戦いを経験したかったがやる気力が全くわかなかったので。
相手の騎士殿、なかなかの手練れの様子で普通なら戦ってみたい気持ちがでただろうに・・・無念でござる。
速攻で相打ち判定として終わらせたでござる。
彼女は嬉しそうな顔をしておったが、なんというか感情がはっきりとわかる笑顔でござった。
「よくやった」って言ってるだけの笑顔向けられてもなぁ・・・って感じでござるよ。
「・・・おつかれ」
レクス殿が憐れみを感じさせる笑顔で見てくる。
分からんでもないが、次はお主の番だぞ?
拙者と同じような境遇であればなんというか・・・うん?
あ・・・微妙な感じだけど少なくとも拙者と同じにはならぬな。
彼女の視線・・・少なくとも、何かを期待しているような目を向けているようでござる。
いったい、何があると言うのでござろうかな・・・?
レヴァイに代理を指名した女性騎士(19歳)
年下好み。それも10歳前後。
犯罪者を騎士の中から出そうで怖かったから、模擬戦に強制参加させたと筆頭騎士が供述。
ただ、結局代理を出された上にこの結果だったので目論見が外れた残念だったとのこと。
また、この模擬戦結果を狙ってやったということがわかっていないので
ただ純粋に「言ったとおりにやってくれてよかった」としか思っていないようである。




