第五十六話:状況は最悪になっていた
語り:レクス
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最悪を引いた
口が悪いと思われるも知れないけどあえて言います
本当に最悪のパターンを置き土産にしてくれたよあいつら
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ザシュッ
その音とともに、目の前にいた最後の中級種が倒れる。猿の巨大化したやつ。
これまで討伐してきたものは、中級種はこいつと似たようなもの。
小型種に至っては、こいつに進化する前の猿。
魔獣は、同種で縄張りみたいな構成をするので・・・森に居座っているのはこいつらとは別の種類と考えて間違いないだろう。
四足系に全く出会わないので、恐らく犬系の魔獣。
依頼にあった巨獣は、最初に情報があった狼系で間違いないと思った。
「・・・まさか、こんな短期間で殲滅してしまうとはな。わしも耄碌していたかな」
そんなことをトレーラーの窓からこちらを見上げながらウォートさんが呟いている。
「魔銃が主流のこの時代だってのに・・・こうしてみてると剣も捨てたもんじゃないなと思えてきたよ」
それは嬉しい話だね。
『まあ、物心ついたころから振るってましたから。それにこれまでも討伐依頼は受けてました』
「そういえばそうだったな。まったく・・・見る前に結論づけたのは早計であったと本当に思うよ」
そう言ってトレーラーを乗りやすい位置に寄せてくれる。
荷台にメイルを乗せてハッチ閉鎖。さて・・・村に戻りましょう。
「アース。おつかれさま」
【疲れたというレベルの相手はいなかったがな。まあ・・・あとは森にいる巨大魔獣の討伐が完了していればいいのだが】
「そうだね・・・」
そんな会話をしてから、運転席に向かう。
「・・・うむ。固定完了したようだな。では、村に戻るとするかの」
「そうですね。ある程度散らばってたから4日かかったし・・・」
「剣一本であれだけの魔獣討伐を4日で終わらせたのは異常だからの?魔銃でもソロだとそれくらいは普通にかかる数じゃったぞ?」
そうして、色々と質問されたので答えれる範囲で答えながら村へ帰還するのであった。
村に到着し、トレーラーから降りるとすぐに異変に気付いた。
入り口を守る兵士がいない・・・?
「これは・・・かなりマズイ状況になっとるのかもしれんの」
そう言って不安そうな顔をしているウォートさん。ミストさんのことが心配なのだろうな・・・。
ひとつ頷き合うと、すぐに村の中に走った。
中央広場が近づいたとき、異変の正体がおぼろげに見えた。
右腕が破損し、泥だらけになったメイルが跪いていたのである。
その傍に、1人の女性と調査に同行した数名の兵士たち。そして、1人の女性が寝転ばされている。
「ミ・・・ミスト!!」
そう言って、ウォートさんが急ぎ足で駆けよる。
続いて近づいてみてみると、多少の擦り傷と少し大きめの傷があったが命に別状はなさそうだった。
ほっとして、すぐに視線をそばにいる女性に移す。確か・・・酒場の顔合わせにいなかったアーネって人だな。
「・・・なにがありました?教えてください。それと他の人たちのことも」
有無を言わさないはっきりした口調で彼女に言う。
一瞬肩を震わせたが・・顔を上げてこちらを見ながら話をしてくれた。
それは・・・考えるだけでも最悪のケースだった。
僕とウォートさんが出発したあと、しばらくして彼女たちも森に入ったそうだ。
兵士たちは、歩調を合わせるということで馬に乗って同行したそうだ。
まずこの時点で異常だ。餌の匂いだしながら見通しの悪い森に入るなんて・・・。
ミストさんが忠告したそうだが、馬鹿4人衆が聞く耳もたず残りの無関心組も何も言わなかったので強行されたと。
気分悪くなる話だが、ここからは少し回想モードでお伝えする。
『まったく・・・うっとおしいな森の中ってのは』
ラングが愚痴をこぼす。しかも酒を飲みながら。
『まったくだねぇ。まあ、砂漠よりかは日の光を浴びなくてありがたいけどね。私の美しい肌が焼けなくて』
バレンシアがのんびりした口調で言う。
『まあ、かといって憂鬱になりそうな見通しではある。さっさと魔獣倒してここから出るとしようぜ』
ザムが携帯肉を食べながら話に加わる。
『そうだね。さっさと討伐して報酬もらって豪遊したいなぁ・・・この辺りじゃ碌なのないし、いっそファルサラにいこうかな?』
スルアが笑いながら加わる。
周りの兵士たちは、少し不愉快そうな顔をしていた。自分たちの愛する土地を「碌なのがない」と言われればそうもなるだろう。
それもわからず、各地を旅するバウンサー職についてるとは・・・兵士たちにも侮蔑の表情が浮かびそうになっていたそうだ。
『・・・ぐちぐちとうるさい奴らだ。もう少し警戒する気はないのか?』
会話に加わっていなかった男、ダンが面白くなさそうに言う。
『ケッ!いいこぶりやがって・・・警戒する必要があるのかよ?所詮大型の犬だろ?』
ラングが反論する。
『いいこぶるつもりなんてないけど、そろそろ本気で口を閉じたほうがいいよ』
アーネが周りを警戒しながら言う。
『あ?何を警戒しろってんだ?』
『犬が怖いの?だったら村でまってたらいいじゃないのよ』
ザムとバレンシアが馬鹿にしたような口調で言う。
周りを警戒していたミストさんが立ち止まり・・・そして言う。
『本気で気が付いてないの・・・?さっきからこんなに森が静かなことに』
その言葉に、全員の動きが止まる。
『おい・・・ついてきてる兵士の諸君。この森がこんな静かな時はあるのか?』
「・・・正直言って、あんたらの頭の悪い話に意識が言っていて気づいていなかった。この森は狼種がそれなりの数生息している。それがこれだけ静かということは・・・」
『・・・やべえな』
ラングが冷や汗を流しながら言う。
この中で、この状態を正確に把握できたのは彼とミスト、アーネ、ダンだけであった。
『どういうこと?それが何かおかしいの?』
スルアが何もわかっていない発言をする。
それに、ダンが回答する。
『我々はすでに、獲物として包囲されているという事だ』
『『『!?』』』
その発言に、残りの3人も周囲に視線を向ける。その行動が・・・結果を引き寄せることになるとも気づかずに。
次の瞬間、森の奥から巨大な何かが飛び出してくる!
一番周りを警戒していた者をターゲットに、その鋭い爪を振るう!
「・・・!?」
声を出す暇もなく、頭部から右腕にかけてを巨大な腕が通過する。メイルの装甲など初めからなかったかのように、簡単に切り裂かれる。
そのまま影は後方に着地し、振り向いてくる。
そして倒れるメイル。動きを止めてその一連の行動を見る者たち。
そいつらを見渡して
影は、巨大な口を開き遠吠えをした。
狩の時間を告げる遠吠えを
急なネット不調により、火曜日更新できなかったショボン




