第四十六話:野望の終わり①
語り:コンシュ地方騎士団長クアス
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色々と調査はしておりました
しかし、結果はこのとおりです
あとはただ主のため力を振るだけ
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ただ、時間を稼げればよかった。そう思っていた。
わたしの名はクアス。
国として認められていないこの地で、騎士団を率いている団長です。
国として認められていないのに騎士団というのも変化もしれませんが、元々存在していた王国に残っていた騎士団の一部隊、その子孫で構成されているということで騎士団と名乗っております。
かつての王家の生き残りの存在、そして王家のメイルの復活。
それによって、この地の立場が少しは改善されるだろう・・・そう信じてこれまで頑張ってきました。
ゲリラ活動のように、2国の争いに横やりを入れる形で疲弊させ時間を稼ぐ。
その結果がついに実を結ぶときが来たと思ったのですが・・・
「これは予想できませんでしたね・・・」
そう言ってうなだれている我が主、シィン様。
代々伝わるメイル、その復元をもってこの地を小国として再興させる。
1つにするというわけではない。ただここも「国」として立ち上げたかった。
その思いのみで今まで頑張ってこられたが・・・
「やはり、このメイルがあったとしても、簡単に国を立ち上げることはできないということですね・・・」
そう言って背後を見上げる。
復元された、見事な装飾の施された装甲に身を包む銀色の巨人。
「こうなれば、後はできるだけこの地に戦火を広げず事態の収拾を図ることくらい・・・」
「かといって、住人を避難させる場所なんてないぜ・・・?」
「そうだね・・・となると全面降伏かな?」
そう言って微妙な笑顔を見せるシィン様。
違う・・・わたくしの見たかった笑顔はこんな顔ではない・・・。
「申し訳ございませんがそれはできません。その場合、シィン様のお命は絶たれることになります。
向こうの進軍理由を知れば、そこだけはどうあっても免れることかと」
そう。バルドの将軍から宣戦布告と共に送られた書簡。
そこには3点の要求があった。
1点目、交易都市ルークの全譲渡。
2点目、復元した王家のメイル。
3点目、王家最後の血の断絶。
そのまま受け取るなら、シィン様の命を絶つという事にしか思えない。
それだけは、できない。
「しかし、わたしの命でこの地の人々が助かるなら・・・」
「この地の人々にどれだけシィン様が尽力していたことか。彼らもそれは望まないことかと。
なにより・・・ともに王国から逃げ延びた騎士の子孫として、断じてそれは受け入れられません」
そして、わたくしは彼女に「最後の」騎士の礼をする。
「わたくしにお任せください。全て上手くまとめてみせます」
「なにを・・・」
シィン様が何か言おうとしているが、話を聞いたりしている時間も惜しい。
そのまま背中を向けて、己のメイルに向かう。
その傍には、わたくしと同じ決意の目をした部下たちがいた。彼らも・・・彼女らも同じ気持ちか。
ならば行こう、この地の騎士団最後の戦場へ・・・
3日後、我々はバルド軍と向かい合っていた。
正面には、件の将軍が搭乗するメイルが立っている。
『・・・貴様らか?度々わが軍に横やりを入れる形で損害を与えていたコソ泥共は?』
コソ泥呼ばわりですか・・・ただ、やっていたことがやっていたことなので否定はいたしません。
「お初にお目にかかります。コンシュ地方交易都市ルークにて唯一存在する騎士団を束ねる隊長、クアスと申します」
そう言って、メイルに騎士の礼を取らせる。それに合わせて、部下たちも同様の礼を。
「先ほどのお言葉ですが・・・軍の行軍許可のお話をいただいておらず、そのうえで国としては認可されていない地ではありますが他国と言っても過言ではない場所にて戦端を開かれておればそれに対処させていただくまで。やっていた行動については申し開きいたしませんが、その点だけはご理解いただければと思います」
『ふむ・・・国と認可されていないことと踏まえての発言か。だが、確かに行軍の話をしていなかったのはこちらの落ち度ではあるな。その点については、国の騎士団を預かる者としては謝罪の意を示すが道理というもの』
そう言うと、将軍のメイルは頭を下げた。
この行動については、正直予想外だった・・・この反応が返ってくるとは思ってなかった。
もしかしたら、誠心誠意話せばシィン様に命は救われるのでは・・・
そう、思ったのは間違いだったとすぐに知ることになった。
『だが、たとえそうであれこちらの軍に損害を与えたことは事実。よってその行動を攻撃の意思とし、わが軍はそちらの騎士団殲滅行動をとらせていただく』
淡々と告げられる言葉。
わたくしが領地の被害拡大を防ぐためととった行動が、向こうに攻撃の理由を与えてしまうことになっていたとは・・・!
ならば・・・
「確かに、その点を考えますとそちらの言い分は間違いないでしょう。・・・この命をもって贖うことに異論はありません。ですが、せめてわたくしの最後の願いを聞き届けていただきたく思います」
この命をもって、シィン様の身の安全だけでもなんとか・・・!
『貴様の命は、わが軍の損失の贖いである。なぜに願いを聞く必要がある?貴様の命は2つあるのか?
言っておくが、後ろのお前の部下共の命で・・・などと聞くつもりなどない!』
そう言って、将軍のそばに立っていたメイルが片手をあげる。同時に、後続が展開移動を開始する。
どうやら、ここでわたくしたちを皆殺しにしたあとそのまま交易都市まで前進するようですね・・・。
それによく見ると、彼らの持っている武器・・・今までとデザインの違う魔銃のように思える。
あれが強化されたものだとするなら、こいつらをこの先に進ませるわけにはいかない!
せめて、シィン様の脱出の時間稼ぎだけでも・・・。
『・・・将軍、やつらは殲滅で問題ないという事でよろしいですか?』
『かまわぬ。だが・・・これまでワシに尽くしてくれて来た騎士たちにも何かしらの報酬がなければやる気も起きないだろうからな。
目の前の騎士共の処遇はお前たちに任せる。全員殺しても構わぬし、女だけ残すもよし。どうせこ奴らはこの場で死んだことになるからな』
クズ共が・・・ならばこの身をもって願いをと思いはしたが「死んだことになるから」という言葉を考えると無駄な行為か。
ならば、せめて一人でも多くのものを道連れにしてやる!
そう思って、こちらも部隊を展開しようとしたその時だった。
『・・・黙って最初から話を聞いていたら、一方的な言い分だな?』
知らない声が聞こえた。
目の前の軍の後ろから。
よく見ると、軍の後ろに一機のメイルが見えた。
マントのような装甲をつけた、片手に剣をもった見たことがないメイルが。
新武装を携えて、我が道を行く将軍のご登場。
果たして、その威力とは・・・?




