第四十三話:いらないと言われたので手伝います
語り:レクス
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僕とレヴァイ
性格が似ているのかね?
いらない言われたので勝手にすることにします
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「元々、この地は一つの王国だった。しかし、ある時国に仕えていた騎士が反乱を起こした。
自己顕示欲の高い男だったようで、一介の騎士のままでいることに我慢できないと国を乗っ取ろうとした。そんな騎士だが人望があり、その男こそ国王にふさわしいという声もあるほどだった。と言っても騎士団内の話だったと後に記述されているが。
その反乱は密かに進められ、気づいたときには手遅れ。完全包囲が完了していたそうだ。
ただ、王家専用の秘密通路だけは気づかれていなかったようで、そこから第三王子だけ逃げ延びたそうだ。
騎士はその後国王となったが、政治手腕が全くなく瞬く間に経済低迷。王家専用メイルを売り払って資金作りしたようだが足りず。そのまま崩壊、わずか数年の王位だったそうだ」
そう言って話してくれるのは、合流したメイル職人のおやじさん。シィンさんの知り合いで正体を知ってる人だということ。
「それで、その売り払われたメイルがここにあるのはなぜ?」
目の前でおやじさん一同が修理にいそしんでるのがその話題になったメイルだ。
くすんだ色になっているが、銀色にあしらわれた鎧は見事な装飾が施され、頭部デザインもまさに騎士といった感じである。
ボロボロになってはいるがマントをつけていたと思える背中。
・・・これで武器が両腰に装着されている魔銃じゃなければ完璧だったと思うのは僕だけだろうかね?
「売り払われた言っても、城下にあったメイル工房に売られたようだ。他国にまで売りに行く度胸がなかったようでな。王がこのメイルと引き換えに融資を求めてきたって記述があった。一鍛冶職人に土下座して金貸してという王として、工房では末代まで笑い話になっていたってよ」
「それは・・・というか、末代もそれほど長くなかったのでは?」
「いや忍者の兄ちゃん。末代まで短かったのは王家だけだぜ?国が崩壊するだろうと思った住人たちはさっさと移住していたからな。
その移住先がこの街であったり、いまやり合ってる2国だったりなわけよ。ちなみに、話題の工房の職人たちがいたのがこの工房なんだがな」
書物関係なく、語り草になってるのかよ。
それで納得だ。シィンさんが自分の身分を明かしているのはそういう背景があることを知ったからなんだな。
あと、現在進行形なんだから「笑い話になっていた」っておかしいでしょうに。
「王家のメイルを出したと言ってもそれで2国が争いをやめるとは思えません。けれど、このメイルをもつということを前面に出し、ここにコンシュ小国を立ち上げる形をとることで2国の争いを止めようと思っております」
「それは簡単にはいかないのでは?それだけで小国の設立を認められるとは思えない」
「はい。わたし達の計画はこうなります。
一つ目、両国が争うきっかけとなった事件があります。その事件の究明に全面協力を申し上げます。
武力による行軍は不許可としますが、事件に関連性のあることが分かった場所には2国とも調査に参加してもらう事も許可します。
二つ目。両国は交易路から少しずれてしまっているのでその恩恵が少ない部分があるようです。
なので、この交易都市で2国の商会が今までより多くの取引ができる用に利用場所の拡大を行います。
利用料金をいただいてますが・・・それについては現状と同じ額とします。まあ、新しい商人との交渉にはこちらの国も話に参加させていただくことを条件としますが。
この2つを条件として、2国に設立の後ろ盾となってもらうように依頼をします」
「二つ目はいいと思うけど・・・一つ目はそれほど重要なの?」
「重要ですよ。なにしろ、その事件で片側の国は王族を1人失っているのですから」
そりゃ・・・戦争まっしぐらになってもおかしくないね。
そして王族の殺害の真相究明か・・・それに第三者の視点を入れるのはいいかと思える。
「あとは、細かい条件などあれば話し合いをし可能な限り双方納得のいく形に落ち着けることができれば行けるかなと思います」
最後はでたとこ勝負ですか。とんだお姫様みたいだな。
「ずっと工房の野郎どもとやんちゃして育ったからな・・・交渉とか大丈夫か心配ではある」
「そこは・・・仕方ないと思ってなんとかがんばります」
そう言って、彼女は2つの袋を持ってきて僕たちに渡した。
「依頼は遺跡攻略までです。こちらは報酬の宝石となります。一緒に小さい魔石が入ってますが、使うなり売るなりはお任せします。
予想以上に早い目標達成に最大限の感謝・・・にしてはあれなのですが、もらってください」
そう言って受け取った僕たちに対して、彼女は深々と頭を下げてきた。
「本当にありがとうございました。このパーツを元に、かならずメイルは復活させてみせることを誓います」
一応依頼達成ということで、レヴァイと酒場にきて食事をとることにした。
2人とも酒は飲めないので普通に食べるだけ。
ただ、少し話をしたかったから簡単につまめるものだけ頼んだ。飲まないのにアテばかり頼んだ。
「それで、話とは?」
レヴァイが聞いてくる。
「依頼は完了と言われたけど・・・少し気になったことがある」
「ふむ・・・お聞きしよう」
「王族が殺されたって事件。なぜこの地方に視察しに来た時に起きたのか」
「それは、この地にその国を恨む人々がいたからなのではないでござるか?」
「普通に考えるとそうだ。けど、その後戦争状態になったのはこの地を挟んだ両国だ。元々国でもないこの地に他国の王族が視察に来ている状況がよくわからない。
おまけに争っているのはこの地の人は間接的にであって、対岸同士が別の土地使って争っているのが今の状況だ。王族が殺害されたので報復攻撃というのはわかるけど、犯人もわかっていないのに向こうの国だと決めつけて攻撃、しかも何度も言うけど争いの場は別の土地でやってる」
厳密にいえば、北の街道を挟むように存在する2国。最初に争いが始まったのはそこだったようだ。そこが王族殺殺害現場らしい。
その後、この地にちゃんとした領主がいないということで好き勝手に侵入してきては戦闘しているとのこと。僕が来る時に見たのもそんな戦闘の1つらしい。
「この地のだれかが犯人だとすれば、その2国での戦争になるとはあまり思えない」
「首謀者が、相手側の国が暗躍していたと言いそれを広めれば起こることではないでござるか?」
「まあ・・・確かにそうなんだけど。けど、そうすれば戦地がこの地方になる可能性が一番高かったと思う。首謀者がこの地を無くしたいというのなら先の手段は有りえたと思うんだけど・・・この地にいるメイル乗りが奇襲攻撃という形でも両軍と戦ってるからどうもそう思えないんだ」
「ふむ。・・・逆に、彼女が首謀者で両国の戦力を疲弊させて交渉を有利に進めるのが目的だったという考え方も有りえると思うのでござるがな」
そうなんだよ・・・それは僕も考えた。
ぶっちゃけ、それが一番可能性が高そうだと思ってる。
「レクス殿。そなたは彼女が一番首謀者の条件を満たしていそうだと思っているでござる。だが、わずか数日とはいえ共にした相手を疑いたくないといったところでござるか」
「まあ、簡単に言ってしまえばそういうことなんです」
そう言うと、レヴァイは一口水を飲むと頷いた。
「ならば、まとめて全て調べてしまえば問題ないという事でござるな」
「・・・え?」
「ぬ?違うのか?彼女の潔白を証明するか首謀者と断定するか、そして首謀者でなければ裏で暗躍しているものをとっちめるから協力してほしいという話なのではないでござるか?」
「いや、協力は依頼したかったんだけど・・・いいの?」
「問題ない。どうせこのまま北に進んでも戦闘状態だったりしたら通れないかもしれぬ。ならば後顧の憂いをたって気兼ねなく北に進めるようにしようではござらんか」
こんな「ただ彼女を信じたい」というだけの理由でしかないことに協力してもらえるとは思ってなかった。
本当に、いい出会いをしたものだと思った。
協力はこれまでです。調査協力はいりません。
では、勝手にやらせていただきましょう。
数々の作品を読んでこられた方々ならば、すでに首謀者がどこにいるのかはわかっていることでしょう。




