第四十話:依頼受けたら先約がいた
語り:レクス
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依頼の二重受付はたまに起こるもの
その場合はどちらかが譲るのが普通なのだが
切羽詰まった2人の場合はそうはいかない
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交易都市ルーク。
コンシュ地方たった一つの交易都市である。
村は複数あるが、街と呼べる規模のはここしかない。
しかし・・・交易都市という割には活気がなかった。
「商人が少ないな・・・」
そう。商人が少ない。本当に少ない。
見たところ、かなり大人数の商人グループで行動しているようだが人数だけ見ると多く感じるだろう。
実際はその規模が3つ4つあるだけなので全体としては少ない。
なんでこんなに・・・?
「すまない。その薬は今回仕入れることができなかった」
「本当かよ?まいったな・・・次の商会くるまでもつかな」
「この作物、前より少し仕入れが少なくなってない?」
「すまないね、奥さん。ちょうど戦闘地帯がその辺りまで伸びててね。危険をおかせなかった」
「そりゃ、仕方ないね。あんたの所がいなくなると困っちまうし」
「すまないが、以前魔獣被害が出た時のケガがまだ治ってない奴がいて・・・包帯もうすこしないか?」
「向こうの商隊も仕入れてるのを見たぜ。一度行ってみてくれ」
・・・物資も潤沢とは言えないが気になる会話がいくつかあるな。
一つ目は戦闘地帯が伸びてること。この辺りは特殊で決まった領主がいない。
なので、他の国がこの地方で戦争してもぶっちゃけ文句を言える立場の存在がないのである。
それをいいことに戦争場所を拡大しているのだとすると2つの小国の評価は最底辺だよ。
二つ目は魔獣被害。このあたりの魔獣はそれほど凶暴という話は聞いたことがない。ぶっちゃけるとそばを通っても繁殖期じゃなければ襲われないというくらい。
ではなぜ襲われたのか?今が繁殖期なわけがない。
恐らくだけど、戦争の場所が拡大したのが原因だろう。魔獣・・・この辺りでは普通の獣と同じあつかいらしいけど、その獣達の住処が襲われたとかじゃないかな。
もしくは追い出されたか・・・どちらにしろ、人を襲う動機にはなりそう。
自分たちの住処を奪われたんだ。報復攻撃を行いのもわからなくもない。人だって「領土を取り返すぞ」って理由で戦争起こしたりするんだからな。
バウンサー組合の支部に到着したけど、活気があるように見えない。
先にも言ったように獣達の被害はほとんどない。なので討伐依頼はほとんどない。繁殖期辺りに凶暴な魔獣討伐くらいだろう。
あるのはもっぱら商人の護衛依頼。
そう思って中に入って、受付で証明書を提示。この地方での注意点を聞いていざ掲示板へ。
・・・予想の斜め上レベルで依頼があった。といっても、商人の護衛依頼がたんまりと。
戦争状態というのは間違いなさそうだ。獣よりそっちのほうからの護衛がメインのようだな。
とりわけ、複数名で活動している募集が大半だった。少ない人数でも4人以上。
魔獣被害が増えてる話だが、現在の状況ではそちらは余程じゃないと入っていないようだ。戦争が落ち着いて元の生活圏に戻ったら大丈夫だろうと安直に考えている感じもする。
それ以上に、どうやら元々共存していたような存在になっていたっていうのが大きいようである。隣人をむやみやたらに殺したくないってところだろうな。
ちなみに、余程の状態というのは「商人たちを集団で襲う」獣たちが対象になるので・・・ぶっちゃけ商人の護衛についたやつが一緒に受けるパターンになっているようだ。
結果。
だめだ・・・受けれる依頼がない。
と思ったら、一枚だけ受けれそうなのがあった。
依頼:遺跡の奥への護衛
内容:遺跡の奥に目的のものがあるので取りに行きたい。
内部には命令を受け付けなくなったゴーレムが多数あり。
ゴーレムの破壊及び道中のトラップ対処がメイン。
人数:少人数であればあるほどありがたい
期間:受けていただいた翌日からすぐに遺跡に向かう予定。必要物資はある程度調達済み
遺跡に潜り戻るまでを見積もって最長10日以内。
報酬:500ゼル相当の宝石2個
2人家族が1か月ほど暮らせるくらいの金額が報酬。危険手当込みってことかな?
他に受けれる依頼ないし・・・というわけで依頼表引っぺがして受付に持っていこ。
夕方だったけど、そのまま依頼人のところに行くことにした。
街外れにある小さな家だった。横に巨大な倉庫があるのが少し気になった。
あと・・・その前に一台のトレーラーが止まっているのも気になるね。
とりあえず、扉をノック。
しばらくすると、扉が開いて一人の女性が顔をだした。
年は多分同じくらい・・・かな?少し暗いめの黄色の髪の毛をショートにしている。
身長は160前後かな?スタイルは・・・うん。ノーコメントで。
コメントすると、そっちに視線が行きそうだとだけ言っておこう。
「はい?どなたですか?」
おっと、視線が行きかけた。
「バウンサーです。依頼を受けてきました」
そう言って依頼書を見せると、女の子は眼を見開いた。
「・・・え?あれ?・・・どうして?」
ん?なんかおかしい反応。
「依頼表、1枚しか掲示しないように言ってたのに・・・なんでもう1人来ちゃったんだろ・・・」
1枚しか掲示しない?もう1人?
・・・自分が遭遇するとは思わなかった。依頼の被り受注だ。
「うーん・・・とりあえずまだ間に合うし、バウンサー組合に連絡しよ、うん。・・・あ、立ったままって言うのもあれだし中に入ってください」
そう言って家に招かれたので入ることにした。
すると、正面に依頼を先に受けたと思えるバウンサーが立っていた。
多分、来客につられて出てきたんだろうけど・・・驚きだよ。
見たことある黒い髪に日焼けした肌。忍者と思える装束の上にジャケット羽織って熱くないのかと言いたくなるマフラーをつけた男が立っていたんだ。
「おお!そなたはあの時の恩人!」
予想外に早い、レヴァイさんとの再会だった。
バウンサー協会(組合)
リンカーが適当に覚えていた言葉を当てはめており、地方によって違った呼び名で定着したまま統合されたので場所によって変わる面倒な組織。
やってることは人助けなので、面倒になった人たちは「バウンサー」としか言わなくなっている。
組織の建物に依頼を持っていき、達成報酬の定時と依頼受け付け料を支払ってもらう。その受け付け料が基本的に運営資金になっている。よって、場所によっては赤字で活動しているところも・・・それで大丈夫なのかと不安の高まる組織でもある。




