第三十五話:侯爵家の母親
語り:トロア
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あいつの旅立ちの理由はわかった
とんでもないすれ違いを残して
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ラントくんがうなだれている。どうやら、貴族に話がいったタイミングで教えられたそうだ。
結局、兄に何も言えずに会えなくなったわけで・・・罪悪感が残っているそうだ。
口数減らしてるのもそれが理由かな。多分、口開くと余計な事いいそうだと思ってるんだろう。
先ほどの対応を見ると、将来は大丈夫と思える。姉の足を犠牲にして。
デスティン侯爵は、頭を押さえてため息をついている。
先ほどの話の流れからして・・・なんか相当ひどい結果がまってそうな気がしてくる。
娘さんは素知らぬ顔をしている。
うん。多分、現況はこの人だろうな。
「父上、残念ながら母上はすでに城を後にしておりま・・・し・・・」
ちょうどそのタイミングでアレン殿が戻ってきた。
家族の状態を見て一瞬動きを止めたが、次の瞬間にはため息をついて先ほどの席に戻った。
「改めて父上、母上はすでに城を後にしておりまして・・・でたタイミングから推測するにそろそろお戻りになられるかと。一応、連絡員に先ほどのメイルのことを伝えたところ、現在手の空いている司書達で文献を漁るとのことです」
「そうか。まあ・・・明日には何かしら情報がくるかもしれないな。彼らは調べだしたら徹夜が普通になるから」
「ですね。・・・で、状況から推測するにレクスが旅立ったタイミングまで説明が終わったかと思うのですが・・・」
「察しがよくて助かる。これから、あの頭の痛い話をするところだ・・・」
頭が痛い・・・?バカ娘とか言ってたくらいだし、それが関係しているのかな・・・?
「・・・では、その頭痛を引き起こす話は私から説明しましょうか」
初めて聞く声が聞こえた。
部屋の入口に視線を向けると、1人の女性が立っていた。
一目で高貴な方とわかる衣装を着ておられ、傍に2人メイドを従えている。
この方が侯爵夫人ということかな・・・?
「ああ、戻ったのか。報告ありがとう」
顔を上げた侯爵が礼を述べる。やっぱりこの人が・・・
「いえ、これも務めですから。で・・・我が家きってのバカ娘の所業の説明でしたわね?」
「お母様、バカ娘というのはさすがに・・・」
「黙りなさい。あの行動の結果、引き起こしたことを考えるとバカ娘でも可愛い方ですわ」
「ひどい・・・シクシク」
「姉上・・・もう少しマシなウソ泣きしてください」
「ラントちゃんもひどい!」
なんだ・・・なんなんだ・・・?
混乱しているこちらのことお構いなしに、彼女はラントの隣に座り用意された紅茶を一口飲んだ。
「さて、混乱しているでしょうしまずは自己紹介を。私の名はリヴィア・リーベルト。この子達の母です」
そう言って頭を下げられた。慌ててこちらも頭を下げる。
「まずは、レクスの情報を知らせていただき感謝いたします。我が家はどうしても、あの子の行先を知る必要がありましてね」
「俺たち・・・というか、トロアも前回の依頼で偶然会ったってだけでして・・・。今いる場所の正確な位置はわかりませんよ?」
レイが質問する。確かに、気づいたら旅立っていたからどっち行ったかもわかっていない。
「それでも、まだこの大陸にいたということが分かっただけでもありがたいのです。各地にいる我が国の諜報員と連絡を取って確認していく許可がいただけましたから」
「それもわからないうちは、さすがにそこまで費用がかけれないと国王にもダメだし受けていてな。助かったことは事実なのだよ」
「つまり・・・あいつに何か伝えないといけないことが残っていると」
まあ、旅立ちの経緯を知ると何か残っていてもおかしくはないな。
「その通りですわ。夫から話を聞いたのでしたら、すでにリッターの願いをかなえるため旅立ったことはご存知でしょう。問題はその場所なのです」
「場所が問題・・・難しい場所なんですか?」
エリアが不思議そうな顔で聞く。
それに対して、リヴィアさんは頷いて回答とする。
「我が国がその願いを聞いてから調査した結果、彼の望む場所はどうやらこの大陸にはないということが判明いたしました」
「つまり、別の大陸にあると・・・それは大変ですね」
ライヤーが何かに気づいたようだ。
「ライヤー、大変って言うのはどういうことだ?」
「簡単なことですよ、レイ。大陸間の船は出ておりますが、その渡航費用がとんでもない高額なのです」
「あー・・・思い出した。旅団時代に別の大陸に行ってみようかなんて話あったけどその船代知って秒で却下されたんだったな」
あ、思い出した。メイルの運送も含めると旅団が全力で活動しても1年の収入が全部飛びかねない金額だったんだよな・・・。
「それは船をちゃんと選ばなかったことも関係してそうですわね・・・。こだわらなければ、もう少し金額は抑えれますわよ?」
リヴィアさんが不思議そうな顔をして聞いてくる。その発言に俺たちは全員横を向くしかなかった。
当時、行先を決める話し合いの参加者の中にやたらと見栄を気にする奴がいたから・・・仕方なかったんだ。
「ごほん・・・。話を戻しますが、この大陸にないという情報とレクスに伝えることがあるというのはどういった関係が・・・?」
咳払いひとつ、ライヤーが話をそらした。
お前だもんな・・・移動手段に見栄もとめる筆頭は・・・。
「なんとなく事情は察しましたが、スルーしておきましょう。問題はレクスの荷物に忍ばせた手紙にあるのです」
手紙・・・デスティン侯爵が言ってたやつか。
「本来、その手紙にはこちらで用意した引き換え用の渡航チケットと事情説明し北の大陸に向かうようにと説明した手紙が入っているはずでした」
北の大陸にあるのも掴んでいるのか・・・すごい情報収集能力だな。それだけ真剣に調べていたってことか。
・・・しかし「はず」というのはどういうことだ?
「それを読んでもらい、がんばってリッターの願いをかなえてあげてほしいということと、終わったら我が家に帰ってきて旅の話を聞かせてほしいと書いていたのですが・・・」
そう言って立ち上がり・・・いきなりレーアさんの頭を掴んだ!?
「・・・いたい・・・・痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイ!?お母様、力入れすぎーーーーっ!?」
「このいい言い方をすれば家族思いにあふれた自慢の娘、悪い言い方をすれば家族愛を理由に暴走するバカ娘のおかげで・・・レクスに手紙が渡っていないのです」
「手紙が渡っていない・・・?けど、さきほど侯爵は忍び込ませたと」
「時間がなかったと言っただろう?中を確認せずに封書を荷物に忍び込ませる時間だけがやっとだったのだよ」
「あ・・・なんとなくわかりました。つまり、その中身が・・・」
エリアさんが残念そうな顔をして聞く。俺たちも多分、似たような顔をしていることだろうなぁ
「このバカ娘、自分も弟と一緒に旅をするんだとか言って渡航チケットを購入して・・・金額的にはあれですが個人の使える分で購入したのでいいとしまして。
問題はあろうことか、あの子に渡した封書にチケットを忍び込ませたのです。それだけならまだよかったのですが・・・自分が説明するんだとか言ってその手紙を封書から抜き取っていたのです」
ひどい話だ。
涙目で頭の上の手を必死にどけようとしている見た目美人さんを、残念な人という表情で見るしかなかった・・・。
この辺りは、最初の想定とかなり話の流れは変わっております。
初期案では同じ大陸内にすることになってましたが、話が膨れ上がったので「いっそ、別大陸の話も出してしまえ」となりました。まあ、それ以外にも理由が1つあるのですが・・・そちらは投稿続けるならおいおいという事で。
なお、家族構成が出来上がった瞬間に、レーア嬢にはこの話の生贄になってもらう事になりました。




