第三十四話:剣の願いと侯爵の誤り
語り:デスティン・リーベルト
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少し過去の回想含めて話をしよう
数代前、最後にあの武具霊がメイルに宿っていた時代を含めて
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数代前、具体的な年数を言うならおよそ200年前ほどだと思われる。
この国で最後に「神衣」が確認された時代がそのあたりらしいからな。
その時代あたりから、徐々に今のメイルの時代になっていた。
魔銃が主流となり、それ以外の武器をもったメイルの姿が消え始めていったそうだ。
当時、あの武具霊・・・リッターはまだメイルに宿っていた。そのメイルも修理不可能と言われるほどになっておったそうだが。
先にも言ったように、メイル自体にも影響がでるというのは当時の技師の記録から判明したことでな。
既存のメイルとかなり違う内部形状になっていた部分もあったそうで、修理不可のところもあったと記述が残っておる。
故に、メイルの寿命といった感じの時代。
リッターは行きたい場所があると話したそうだ。
そこは、自分のような意思疎通のできる武具霊たちが最後に向かう場所とのこと。
これからの時代、自分のような力を使おうと思う騎士が現れないかもしれないと思い、そこに向かうことを決めたそうだ。
だが・・・少し遅かった。向かう準備をしていたその最中、メイルが瓦解した。
リッターは一度宿った精霊炉から他の精霊炉への移動ができないそうだ。その精霊炉もその時代ですでに使われていない技術によって生成されていたとのこと。
精霊炉だけ持っていくという方法も検討されたそうだが、他の武具霊と同じく自分の足でそこに向かいたいと。
そして過去の文献を漁り、なんとか動く形にできるところまで研究ができあがりいざ修復されることになったのだが・・・今度は修復途中で乗り手の騎士が戦死した。
どうやら、魔獣の群れが王都に迫っていたそうでな。別のメイルに乗って静止を振り切り出撃したそうだ・・・正義感の強い男だったと。
結果、修復途中で止めるのもということでメイル自体は完成したのだが、その騎士ほどリッターの乗り手として戦えるものがいなかったそうだ。
戦えない騎士を乗せて向かうのも・・・ということで断念。新しい騎士が誕生することを待ち望むこととなった。我こそはと名乗りを上げた騎士もいたそうだが・・・出発されなかったことを考えるとどうやら断念するという選択肢しかとれない結果となってしまったようだな。
これは、この国では侯爵以上なら全員に伝えられている話だ。
我々にはこの話を伝え続けることと、剣を扱う騎士が誕生したら国に報告する義務が課せられていた。
その者がリッターに選ばれることを祈りつつ、その時を待ち続けることとなった。
そして、あの運命の日がきた。
「侯爵様、お話がございます」
その日、夜遅い時間だが執事長が部屋を訪ねてきた。
「珍しいな。お前がこのような時間に面会を求めてくるのは・・・それも急いで話をしないといけないという雰囲気で」
わしは、正直予想できなかった。
「実は、レクス様のことでお話が」
「レクス?あいつが何か悪さでもしよったのか?それとも異常事態が起きて魔銃の扱いが上達したとか?」
その頃からすでにあいつには魔銃の使う技術がないと思っていた。それがまさかな・・・
「異常事態ではありますが・・・それとは別件で緊急事態でございます」
「要領を得ないな。手短に話せ」
「はい。単刀直入に申しまして・・・レクス様はリンカーでございます」
「ほう・・・まさか我が家からリンカーが生まれるとは思わなかったぞ。それが緊急事態か・・・それとも、それに関連したことが緊急事態か?」
「関連したことにございます」
そう言って、彼は姿勢を正し真っすぐにわしを見て言った。
「レクス様は『騎士なら手にするのは剣だ!』と申して、倉庫に眠っていた剣を持ち出し素振りを始めておられます」
その言葉を聞いたとき、わしは驚愕した。
「なんと・・・確かに緊急事態だ。すぐに報告書をまとめよ。明日の朝一で王城に届けに行く」
「かしこまりました。すぐに」
そう言って彼が退出したあと、この日が来たことに喜びを感じたと同時に少しの悲しみを抱いた。
「『彼』の願いをかなえるものが、まさかわしの息子とはな・・・」
もちろん、リッターに選ばれないという結果もあるかもしれなかった。だが・・・もしかしてという考えもあった。
わしは悩んだ。全てを話して全面的に支援して国を挙げて送り出してやるべきかどうか。
だが・・・現代の国の事情を考えると、それは現実的ではなかった。
騎士といえば銃騎士。剣をもつ騎士を国を挙げてというのには事情を知らない貴族や国民の反発は避けられない。
なにしろ、我が家でさえ息子たちの間に亀裂が生まれようとしておったからな。
故に、時が来るまで何も話さずただその日を迎えようと。その際に全てを話して支援を行い送り出してやろうと。
そう思っておったのだが・・・そう上手くいく話ではなかった。
アレンはその当時から物分かりもよく、話を聞いてそのことについて考えるだけのことができるようになっていた。
なので、時期を見て全てを話した。話したのだが・・・タイミングが遅かったと後に後悔した。
アレンが騎士団に入団するというタイミングで話をした。わしの所有する騎士団への入団であり、騎士団にはこの話をしておったからな。
知らないまま行かせるのも・・・と思ったのだが、それまで待ってしまったのが悪かった。
三男のラントは、アレンを見て育った。レクスではなくアレンを。
事情を説明する前のアレンは、レクスを・・・簡単に言えば虐めていた。罵っていた。「侯爵家の恥だ」と。
ラントはそんな兄の行動を見て「それが普通の行動なんだ」と思いよった。自分で考えて行動しないで兄の行動を真似して育っておった弊害だった。
結果、兄弟間で亀裂ができてしまっていた。
娘?あれはそんなの関係ない性格だ。先の話し合いでもわかると思うがの・・・。
問題は、学園でもラントが同じような行動をしていたことにある。事情を知るアレンが卒業したあと、レクスの味方がいなくなった。
結果、陰で色々とやられておったそうだ。まあ・・・あやつが旅立った後に王家のほうから首都の全貴族に話が伝えられたことによって一気に色々とやっておった奴らの未来が真っ暗になったそうだがな。
だが、それも少し遅かった。
しばらくして、レクスがリッターと会話しているという情報が協会から届けられた。あやつは選ばれたのだ。
リッターの宿るメイルが現代のものより旧型ということもあり、常に剣を持たせていたことからあやつに与えられるメイルに選ぶのに不都合はなかった。
メイルについては、部分的な修理は可能だった故そのまま与えることとなった。
旅立ちの時、そのまま持っていくという事にもまったく問題は起きなかった。騎士を目指すものには1機支給されるのがファルサラ王国の伝統。どのような形になろうともな。
だが・・・移動に使うトレーラーはそ奴らが用意していたそうだ。不良品で解体場に持っていかれていたトレーラーをな。
そして最大のわしの失態。
それは・・・レクスの旅立ちが予想以上に早かったことだ。数日は準備に時間をかけて出発すると思っておった。
だが、先の理由によりトレーラーの準備が完了した知らせを受け取った矢先に出発してしまった。
あまりに時間がなかったので、あやつに渡す予定だった手紙を荷物に紛れ込ませるのがやっとだった。先に準備しておいてよかった。
一安心かと思ったのだが・・・
我が家のバカ娘のおかげで、また一つ問題が発生したところまでが、わしの失態と言えるのかもしれないな・・・
閑話にしてもよさそうだと思ったけどそのままにしました。
追記:お先真っ暗になった最大の理由は、勝手にトレーラーを持ち出した上に碌な確認も取らないまま「整備完了」として渡したことが発覚したから。さすがに他の国にたどり着けかもしれないと思わせるようなことをしたのは、話を知らなかったでは済ませれないこととなった。
加担したメンバーは、家柄関係なく下級騎士か伝令兵にしかなれなかったそうだ。




