第三十二話:愉快な侯爵家
語り:トロア
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予想外というのはどこにでもおこるもの
それを実感する出来事だった
話があまり進まなかったのがなんともだが
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「あいつには確かに勘当と言い渡した。だがそれは表向きのこと。実際、あいつは今でもこの家の一員として名簿に登録はされておる」
そのデスティン侯爵の言葉に、あいつの事情にはどうやら表と裏があるのはわかった。
だが・・・
「申し訳ない。まずは確認するべきだったのですが・・・俺たちはレクスという名前しか知らなくて・・・」
「うん?・・・ああ、そうか。同一人物かどうかの確認をしてなかったな」
今気づいたという表情をしていた。
「まあ、同一人物かどうかの確認は簡単にすむだろうが」
簡単?
「君たちの知るレクスだが・・・剣をもっていなかったか?それもメイルに乗った時でも同じように」
「あ・・・もってます」
「なら、同一人物であろう。この大陸広いとはいえ、今の時代にメイル乗りで剣を持ったものは、わしはあいつ以外知らないからな」
「まあ・・・俺たちも色々と旅してますが、確かにあいつ以外に見た覚えないですね」
うん、同一人物で間違いないだろう。
と、思った時だった。
「・・・あいつあいつって、2人とも可愛いレクスちゃんに対して失礼じゃないですか?」
女性の声がした。正面から。
その声を聴いて、3人はそれぞれ別の反応を示した。
デスティン侯爵はため息をついた。アレン殿は天井を見上げた。ラントくんは「がくり」と音がしそうな勢いでうつむいた。
なんだ・・・その反応。
「そもそも、最初にレクスちゃんかどうかは確認するべきです。まあ、レクスちゃんの可愛い名前がそんなに多く使われてるとは思えませんが・・・いえ可愛いからこそ広く使われている可能性もありますね。というか、どんな武器を使おうとそれはレクスちゃんの自由であってこちらが強制するいわれはないと思いますよ。
それはそうと、どのあたりでお会いになったのでしょうか?そこがすごく気になります。急げばもしかしたらレクスちゃんを見つけることができ・・・っ痛い!?」
早口で話していたと思ったら、ビクッってなって大声上げた。
なんだ・・・目の前の美人は。最初の印象がえらい崩れそうだ。
レイも唖然とした顔してるし、ライヤーはいつもどおりの表情か。エリアは・・・眼を丸くしてるな。
「・・・痛いですわ、ラントちゃん。いきなり足をけらないでくださいます?」
「いや、止めないといつまでも話しそうだし・・・というか、許可だすまで口開くなって言われてたでしょうに」
「可愛い弟の話を聞いて、聞くだけなんて無体ですわ。まあ、ラントちゃんも可愛い弟ですが、さすがに今のは痛かったので少し抑えてほしいと思いますよ?」
「それを言うなら、姉さんのほうが喋るのおさえてよ・・・お客様たち、驚いた顔して固まってるよ・・・?」
「あら?失礼」
そういって普通に正面向いて笑顔を向けてくる。うん、先ほどのが無ければ美人の笑顔で終わるところなんだが・・・
そう思ってると、アレン殿が頭を下げてきた。
「申し訳ない。話を途切れさせることになって。妹はその・・・家族愛が強い・・・というか強すぎて」
ああ、そういうことね。
「いえ、いいことだと思いますよ。仲良しなのはとても」
「だね。好印象をもてる家族ですよ。貴族は家族の間でも権力争いしてる場合があったりで・・・って、失礼しました」
エリアが途中で止めて謝罪している。うん、今のは少しね。
「気にしてませんよ。実際、この国でも頻繁にあることですから。当家はわたしが年が少し離れているのでそんな問題ありませんがね」
なるほど。それはいいことだ。
「そうでしょそうでしょ!家族仲良しはとてもいいことなんです!なので・・・わたくしとお兄様が結婚することも問題なんてありませんよね!」
「いや・・・それはあるでしょ」
「なんでぇ!?」
レイのツッコミに、心外なって顔で返事してくる。普通にないでしょ・・・血縁関係の婚姻を認めてる国の存在なんて知らないぞ。
しかし・・・彼女の眼は本気のように思える。お兄さん・・・頑張ってください。
「・・・そろそろ、話を戻してもいいかな?」
デスティン侯爵の言葉に3人とも椅子に座り直す。
こちらも、姿勢とただす。
「はあ・・・こうなるから話すなと言っておいたのに・・・我慢のできん娘だ」
盛大にため息ついておられる。
なるほど。会話に参加させたら盛大に脱線することになるのは予想済みだっというわけですね。
苦労してるんだな・・・。
「と・・・どこまで話したか・・・同一人物の確認が終わっただけか」
「そうですね。とりあえず同一人物として話を進めましょう」
「すまないな。さて・・・と思ったが、時間もよさそうだし先に昼食としようか」
結局、午前中はレクスが侯爵家の人間だと教えられただけになった。
「うまい!うまい!」
「もう少し落ち着いて食べれないかなこいつ・・・けど、本当においしいですね」
「ありがとうございます。当家の料理長の腕は我々も満足のものでして、純粋に褒められると嬉しい限りですよ」
「野宿やトレーラー生活だと、味わえないおいしさですね」
「では、料理長に頼んで野宿やトレーラー内でも簡単にできる味付けを教えていただけるように話をしましょうか?料理長も騎士団生活していた時にやっていたことだそうですわよ」
「あ、それは嬉しいです。ぜひ、お願いします。私も料理してるので」
「まあ、門外不出というわけではないので問題ないでしょう。お父様、よろしいですわね?」
「それは、先に確認することだろ。まあ、彼が問題ないならかまわんが」
という会話を聞きながら、貴族の昼食場とは思えないくらい賑やかだった。
あ、料理はとても美味しかった。貴族だからって感じの料理じゃなく、一般家庭でも出てきそうな食べやすい感じのものでとても良かった。
後で聞いたら、ファルサラの貴族家の昼食は大体こんな感じらしい。朝と夜にしっかり食べて、昼食は軽くって感じで。
その後、少し食休みしてから話の続きをということになったが・・・
レーアさんがレクスのことを色々と聞いてきたのでその話をすることになった。
間で屋敷にいたころにレクスの話をしてくれた。こちらの倍くらい。個人的感想込みで。
おかげで同一人物だと確信できたわけだが・・・とても疲れた。
まあ、俺が最初に接触したわけだし前の事件でも少し一緒だったから仕方ないのだが・・・
書いてたらこんな性格の人になりました、ということで最初に紹介
レーア・リーベルト
普通の侯爵家ご令嬢として登場予定だったけど・・・話を辛気臭いままで行くのもと思ったのでブレイカー役になってもらう事にしたらこうなりました。
美人ではあり、他の貴族家から申し出も多数受けているのだが、返事が一貫して
「将来はお兄様のお嫁さんになるので」で終わっている。
ちなみに、この世界でも血縁関係での婚姻は認められていない。親戚なら認められる場所もあるが、ファルサラはどちらも不許可なのでその未来がくることはない。
この国で「一番婚期を逃す人物」として有名になっている。




