第三十話:追放という名の旅立ち
語り:レクス
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そして学園生活最後のイベント
対抗試験の結果は今更言うまでもないだろう
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学年別対抗試験。
1学期半の訓練の成果を見せる催しである。
同学年で1対1での対戦を行う。
ルールは、相手の肩にある学年を表すエンブレムを破壊すること。
武器は自由。と言っても、大概は銃だけか2丁銃か銃と盾かの3択である。
僕のように剣1本というやつは他にはいない。
ちなみに、メイルは個人支給である。メイル乗りを目指す者たちはそのほとんどが騎士団入団を目標にしている。
故に、入学時点から個人に与えられ、個人で自分に合わせて調整していくのがこの国の普通である。決して、この世界の普通ではないのであしからず。
さて、そんな僕にも個人支給されているのだが・・・ずっと思ってたことだが一世代くらい前のメイルだよなこれ。
装甲も古くなってるし、動きもぎこちない時がある。正直、学園からの嫌がらせとしか思えない。
これで結果を出せと言われてもという気持ちもあるが、言っても仕方がない。
対戦前に少し動かしてならしておくか・・・。
しかし、気のせいか・・・頭部がすこし変わってる気がするんだけどな。
そう思ってメイルに搭乗、起動させた時だ。
違和感があった。いつもよい格段にメイルの起動が早い。いつも乗ってから数分かかるのに・・・?
不思議に思って歩かせてみると、さらに驚いた。結構スムーズに歩く。なんだこれ?誰か整備した?
けど、僕のメイルの整備を担当してくれる人はいなかったはず・・・どうなってるんだ?
スムーズに動く機体に戸惑いつつ動かしていると、いきなり声が聞こえた。
【・・・む?休眠状態から目覚めたらいきなりレクスがいた】
「その声・・・リッターか?」
【うむ、私だ】
なんでリッターがこのメイルの中にいるんだ?
「おまえ・・・勝手にこのメイルに宿ったのか?一応学園の備品だぞ?」
【問題ない。というか、これは君に与えられたものだったとはな。昨晩だったか?このメイルの頭部が交換されたようだが、精霊炉に武具霊が宿っていなかったぞ。・・・おまけに旧式のメイルとはな。驚いたぞ。おかげで四肢の調整に時間がかかってしまった】
「調整って・・・これはおまえがやってくれたのか?」
【うむ。長年メイルと付き合ってるのでな。自分の体でもあるし、ある程度自己調整できるようになっているよ】
すごい・・・純粋にすごいな。
【といっても、私ができるのは調整だけだ。細かい部分はやはり人の手を借りなければどうしようもない。また、やはりこちら側からだけで調整するのも限度がある】
そうか・・・万能ではないってことか。
【しかし、今日はなにかあるのか?いつもといる場所が違うようだが・・・?】
「ああ・・・今日は・・・」
そうして今日はどういう日なのか、また僕の直近で起きた話もした。
そして、対戦開始時間までに方針を決めることができた。
始まる対戦。といっても、対戦と言えるものでもない。
「はじめ」の合図で撃たれた魔銃。その銃弾は外れることなく肩のエンブレムを破壊した。
レクス・リーベルト 学年別対抗戦 1回戦敗北 試合時間僅か3秒
学園始まって以来の記録更新という結果を残し、僕の学園生活と侯爵家での生活は終わった。
それから瞬く間に時間が過ぎて行った。
持ち出しの許された私物を鞄に詰め込み、部屋の片づけをすること2日。
だれの見送りもないまま、僕は侯爵家を後にした。
さすがにそのまま放り出すことはされなかったようで、持ち出し可能品の中にメイルが1機だけ許可された。
なので、迷わず学園で使っていたメイルを依頼、型が古かったこともありあっさり許可された。
そして受け取り場所に行ったとき・・・予期せぬことがあった。
「・・・なんか、形がかわってる・・・どういうこと?」
学園で使われて言う時はスマートな体形だったのだが・・・そのメイルには巨大な肩当がついていた。
肩当というか、前面だけに展開されたマント型装甲のついた巨大な肩当。両腕にもなんか小手みたいなデザインのものがついている。
一緒に持っていけと渡されたトレーラーに乗り込み、よくわからないままさっそく出発。
王都を離れた時に、彼の声がした。
【どうだ?これから外でも戦うことになるだろうから少し装甲をつけて見たのだが】
「・・・自分でつけたのかよ。本当にすごいな」
【まあ、廃材があったのでな。完全に処分する予定のものらしい声が聞こえたからもらっても問題ないかと思い流用させてもらった】
「盗人呼ばわりされてなければいいけど・・・まあ、今更か」
トレーラーがガタガタ音をたてる。
【しかし、トレーラーもかなり古いようだな・・・早く資金集めして買い直した方がよさそうだ】
「僕もそう思う。この国から出たらさっさとバウンサー登録しよう」
【バウンサー?】
「昔はなかったのかな・・・?人々の依頼を受けて仕事をする者達だよ。多岐にわたる仕事をこなすから『傭兵』というのは違うという事でバウンサーと過去のリンカーが名乗りだしたのが始まりらしい。結構古くからある組織なんだけどな・・・」
【外の情報を仕入れなくなって数百年たつようだからな・・・その間にできたのだろう】
そういやそうだった。彼はメイル誕生の時代からいるんだったな・・・。
【しかし、それは君でもなれるのか?】
「問題ない・・・わけなかった」
忘れてた。バウンサーは成人してからしかなれないんだった。
【それは・・・もう少し時期を調整してほしかったものだな・・・】
なんか小声で独り言を言ってる。なんだ?調整?
「まあ、成人迎えたらさっそく登録するから。言っても数か月、持ちだした貴金属を売ればなんとか生活できるだろう。それまで修理とか後回しになるけど勘弁な」
【まあ、君に倒れられても困る故それは理解できた。それはそうと・・・ひとつ頼みがある】
「なんだ?珍しい」
【私に名前をつけてくれないか?過去の名をそのまま名乗っていると、どうもな・・・いないとは思うが過去を知るものに出会うと面倒にならないとは言えん】
「なるほど・・・」
ペットに名前を付ける感じ?・・・いや、ペット扱いは彼に失礼だな。
「そうだな・・・じゃあ『アースリッター』でどうだ?」
【頭に文字が追加されただけのようだが・・・?】
「普段は『アース』と呼ばせてもらうよ」
【意味があるのか?】
「リンカーとしての記憶だが、前世の住んでいた星の呼び方だ」
【大層な名前を付けられた感じだが・・・いいのか?】
「あまり思いつかないからそれで納得してくれ」
【ふむ・・・いいか。では、本日より私の名は『アースリッター』だ】
よかった。正直別の名前言われてもどうしようか思ってた。
「そういえば、一人称が変わったな。なんか理由あるのか?」
【君は貴族ではなくなったわけだし、あまり仰々しいのは使わないでもいいかと思ってな】
「そりゃそうだ」
貴族ではなくなった・・・。思うところがないわけじゃないけど、今更だしな。
それに固い貴族の付き合いとか苦手だったし。
「さて・・・一応、上手く行ったわけだし。がんばって探すとするよ」
【ありがとう。長い旅になるかもしれない。よろしく頼む】
そう。試験での初撃敗北は狙っていた。アースに色々と教えられながら練習していた成果か、一発目の魔銃の弾道は見えていた。
1学年故にそれほど力が強くないからこそだが、見えてるから剣で防ぐことはできた。
けど彼の、アースリッターの願いをかなえるためにはこの国にいてはできないことだった。
だから、今回の件を利用させてもらった。国から追放処分と言われているので大手を振って国外にでられる。
面倒な手続きもなにもいらない、普通に国外にでられる方法が目の前に提示されていたのだ。
だから、初撃敗北を狙った。微妙に射線がずれてたから少し肩の位置をずらして当たりにいったけど、多分だれも気づいていないだろう。
彼には色々と教えてもらった恩がある。これからのことを思うとこちらの方が割合高そうだけどね。
けど、僕はこの道を選んだ。彼の願いをかなえる手伝いをする道を。
バウンサー
作品によっては「冒険者」という位置づけになるかと。某オンラインゲームに登場するクラスの一つで、作者がメインで使っているので愛着がありこの名をつけさせていただいた。
よく知らずに使い始めたけど、調べたら意外な意味もあって少し驚いた。




