第二十八話:見下す兄と弟 そして問題の姉
語り:レクス
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この大陸の常識で言えば僕は異端だ
兄や弟の態度のほうが正しいのだろう
姉は・・・多分おかしい
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騎士学校に入学した後も、僕は剣を振り続けていた。
魔銃の授業は受けるが、そちらの適正はなかったようだ。
学年の平均射程距離の半分くらいの位置からしか狙ったところに命中させれなかった。
当然、テストの採点はかなり低い。文字通り、低かった。
他の部分でそれなりの水準を維持していたからよかったが、これで引くかったらすぐに退学処分になったかもしれないくらい。
剣を振ったりしていたからか、体力は学年随一。もしかしたら上級生クラスでも勝てるかもしれないくらいだった。
そんなで騎士になった時に長期行軍とかあったら耐えれるのかと心配になるが・・・騎士団に入ってから一気に体力付けて行った人もいるそうだからあまり問題にされていない。
むしろ問題は、魔銃の命中率の低さが一番とされている。
まあ、それでも僕は剣を振り続けていた。魔銃で戦う騎士になどなるつもりはなかった。
周りはそう思ってくれなかったが・・・。
「また、そんな鉄の塊振り回しているのか」
剣を振っていると、ほぼ必ず言われるセリフだ。
この声は・・・と思って振り向くと、思い通りの人物が立っていた。
身長は当時の僕より10センチほど低い。やめろと言われても変えない長髪、今はさすがに首の後ろで縛っているが。
やたらと細い体をした男。ちゃんと食事食べてるのかと言われるが、いつも同じ食事をとっている。
我が家の3男、ラント・リーベルト。僕の弟だ。
「そんなの振り回してなにが楽しいやら・・・将来は木こりにでもなるのか?」
やたらと睨むような眼をしていつも話しかけてくる。
「楽しいから振っている」
そう言って、また剣を振る。振り方を色々とやっているうちに、少しずつ振り方が変わってきているのだ。
このままがんばれば、今よりもっと鋭い斬りつけができるようになるかもしれない。余計な会話をしている場合じゃない。
「はっ。楽しい・・・ね。こちらは、そんな兄の話を学園で聞くたびに耳の痛い思いをしているっていうのに、暢気なもんだよ」
馬鹿にしたような口調で言ってくる。それについては悪いとは思う。
けど・・・僕にも曲げれないことがある。
「ラント・・・何をしている?そんな奴に構っていないで抗議の復習をしておけ」
別の声が聞こえる。そちらを向くと、僕より年上の男性がいた。
身体はかなりしっかりした体格をしている、上級生の中でもトップに入るだろう。それだけ体力もありそうだ。
腰には、家紋の入った魔銃が吊るされている。当主・・・父に認められた証拠だ。
金髪でそれほど長くはないが短くもないっていう髪型。肩からは銃騎士の称号であるハーフマントをかけている。
リーベルト家長男。アレン・リーベルトだ。
「申し訳ございません、兄上。訓練場に行こうとしていたところ、目障りなのが見えたものでつい・・・」
「気持ちはわからんでもない。だが、それにかまかけて自分の成績に影響を及ぼすほうが愚の骨頂であろう。早く行くがよい」
「はい。失礼いたします」
そう言って、アレンには丁寧な礼をしてラントは訓練場の方に歩いて行った。
僕?あそこは魔銃の訓練場だから庭のほうでやってます。
「やれやれだ。・・・まあ、過去の私の行動を見て育った以上は仕方ないことではあるのだが」
うん?今、兄上は何か独り言をいった・・・か?
そう思っているとこちらを向いた。眼は・・・やはりあまりいいものを見ているって眼じゃないな。
「学園で聞いた。また、魔銃の成績で最下位だったそうだな?」
「・・・申し訳ございません」
侯爵家の1人として、そこは素直に謝罪しておく。なんでみんな、あんな距離で当てれるのか・・・
「その塊を振るより、少しでも魔銃の訓練をしろと言いたいのだが・・・何年言っていたか忘れたくらいの結果故、何も言わん」
そう言って、一瞬眼をつむったあと・・・何かを決意したような眼をしていた。
「だが、父上はどう思っているかわからん。それだけは先に言っておく。近々、どんなことでも構わん。結果を出しておいた方がよいとだけ伝えておく」
なんだ・・・
と思った時、足音が響いてくる。やかましい足音が。どう考えてもヒール靴で走ってる音。
まあ、いつもここにいるから当然なんだけど・・・もう終わって帰ってくる時間だったっけ?はやくね?
と思っていると、兄上も盛大にため息をついていた。あ・・・これ、兄上も予想外だったみたい。
「レークースーちゃーーーーーーーーんっ!!」
大声で名前呼びながら、1人の女性が手を振り回しながら走ってくる。
案の定、ヒール靴だ。ドレス姿のヒール靴で器用に全力疾走してくる女性。言ってて異常だと思える。
長い金髪をなびかせ、スタイルも前世で言うならモデルとかいうやつか?そんな見事なスタイル。
満面の笑顔は、おそらく10人の男性がすれ違えば全員振り向いてもおかしくないくらいの美人の笑顔。
大声で自慢したくなる完璧な女性。僕の姉、長女レーア・リーベルトだ。
問題は・・・
「つかまえた!」
そのままの勢いでタックルかましてくる姉。そのまま抱き着かれて、そのまま頭を撫でられまくる。
もう少し身長が低かったら胸に顔をうずめる形になりそうな・・・うらやましいだろ?
完璧と言いたい姉。ただ・・・ブラコン。
3人ともに対して。ラントは普通に顔面うずめて窒息しかけるからと、姿を見たら逃走するか僕か兄上を盾にしてくる。
兄上に対しても「将来、お嫁さんにして!」とか普通に言われているそうだ。さすがに血縁関係で結婚はできんよ姉。
抵抗するだけ無駄なのでしばらくそのままの態勢でいる。決して、嬉しいからではない。嬉しいことは嬉しいがそれだけではない。
ぶっちゃけ、僕も昔、窒息しかけたことがある・・・。
「・・・満足したなら、そろそろ離れろ」
しばらくして兄上が言ってくれる。傍にいるときは頼るのが一番。兄上が言うとすぐに離れるから。
「お兄様も今日もカッコいいですわね。騎士団との合同訓練のお帰りですか?」
笑顔のまま話しかける。最初の登場がなければ淑女ってイメージが周りに与えるかもしれないな。
「そうだが・・・お前はいいのか?」
「いやですわ、お前だなんて・・・お嫁さんにしていただけるということですわね!」
兄上、二度目のため息。姉、そのやり取りは何度目だ?
そして・・・学習しよう。
「確か今の時間、次の伯爵家開催のダンスパーティーに向けての練習時間だったと記憶しているが・・・?」
そう。なので、姉上がこの場にいるはずがなかったんだが・・・いるんだよね。
そのセリフに、姉上が笑顔のまま固まった。冷や汗がでてる。これは・・・いつものパターンか。
「その顔を見て把握した。・・・また忘れていたな」
姉上、目線が高速で左右にぶれておりますぞ。いつもながらの図星ですな。
「はあ・・・今ならまだそれほど遅くなっておらんだろう。父上には言っておくから、早く行くがよい」
「失礼しますわ!」
礼!の後、一気にさっきと同じように走っていった。靴・・・壊れないかな?
「兄上。言っておくと言いましても、あれだけ大きな靴音を立てていれば・・・」
「いつもどおりだから、いつもどおりにしか言わんよ」
ため息をついたあと、本館に向かって歩き出した。父上に報告かな。お疲れ様です。
「先の件、頭の片隅にでも記憶しておけ」
それだけ言って、歩き去った。
思えば、この時の兄上はもしかしたら気づいていたのかもしれない。
僕がもしかしたら勘当されるかもしれないことを。それ故の忠告だったかもしれない。
その時の僕は「どんなことでもいいから、結果だせ言われても・・・」という感じに剣を振っていた。
それから学期末テストを迎え、なんとか総合で上位組には入れた。
それから夏季休暇に入り、僕は剣を振り続けていた。
父上からは何度か呼び出され、一言二言小言を言われていたが・・・兄上が懸念していた事態にはならなかった。
そして、2学期目に突入して1週間後
僕の運命を決める出会いがあった。
本来、兄弟の設定は出る予定はありませんでした。
ただ、この章を1つの構成にするとしたらどうしても登場人物増やす必要あるかと思い
その結果、リーベルト侯爵家の家族構成が誕生しました。
本来、父にダイジェストで語られて依頼渡されて終わりだったんですがね・・・




