第二話:踏み込んだが最後、予想外の依頼でしたよ
語り:レクス
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組合長の笑顔には注意しよう。
今回の依頼を受けた教訓はこれの一言。
ただ、内容を聞いた後はその教訓が正しかったのか間違っていたのか
そこについても考える必要があるようです。
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依頼人との落ち合い場所は、事前情報どおりに街はずれの小さな宿だった。
生活費の保証、ここが拠点だからという事かな。まあ、困窮してる中なので気にしません。
宿に入ると、確かにカウンターに一人の男がいた。
結構鍛えてそうな感じのする、そんな男だ。
多分、店主で間違いないと思うので依頼を受けてきたことと登録証を見せた。
「あんただけか?依頼を受けるバウンサーは」
「ソロなので」
「やたらと若いが、成人したてでバウンサーになったってところか。大丈夫か?」
「一応、登録前にとある旅団の人たちに色々と教わってます」
「なら、普通のなり立てよりかは知識はありそうだし、一緒にいる間に行動も共にしていた可能性もあること考えると実施経験もありそうだな」
「一応、簡単な依頼の時に同行したことはありますね。依頼人にももちろん許可をもらったうえで」
「なら、問題ないか。なり立てが来ることは予想してなかったが依頼内容があれだしそういうこともあるか。依頼人を呼んでこよう」
「というか、よくあの依頼内容で審査とおりましたよね?」
「まあ、そこはトップと知り合いだったってのがよかったってところだな。ぶっちゃけ、依頼表埋めてて『これやばくね?』っていうのは俺も思った。まあ、来た奴がいる以上問題なしだ」
まあ、実際に来てますしね。
生活費にこまったバウンサーが1人・・・
そういって店主が二階に上がっていった。しかし、あの店主・・・宿の店主って感じじゃないぞ?元バウンサーじゃないか?
しばらくすると、誰かを連れて戻ってきた・・・というか2人いるな。
1人は女性だ。やたらと動きやすそうな服装をしてる、金髪ロングヘアー。年齢は同い年くらいじゃないかな?スタイルは・・・今後の成長に期待かな?
もう一人は、老紳士って感じの人。髭はないけど。スーツを着てるし、執事長とか言われてもおかしくないな。見た目年齢に合わずしっかりとした足取り。まだまだ現役でいけそうな方だ。
老紳士を従えた、どこぞのお嬢様・・・
「なんか、聞いたときは疑ったけど本当に同い年くらいの子がきちゃった。大丈夫かな?あと、入ってきたときに感じた視線がなんか・・・」
・・・いきなり細目でそんなこと言われるとお嬢様って感じが飛んでいきますよ。
そして勘が鋭いご様子。気をつけよっと。
「まあ、少人数で動く方が気づかれにくいでしょうし。組合長からも事前に連絡きておりましたが大丈夫じゃないか?」
あのおっさん・・・先に連絡いれてたのか。まあ、若造バウンサー1人送るわけだし当然かな。
「しかし、連絡ではただ『使ってやって』としかなかったですぞ?」
マジですか?老紳士さん?
「え?マジで?」
「本当です」
・・・あのおっさん、まったく信用してないなこれ。
「あの組合長・・・棚から高級酒1本、今回の礼にもらってやる」
「それ、盗むことじゃないの?・・・まあ、あの人相手ならそれでもいいけど。それより正式に依頼を受けてきてくれたわけだし、彼に状況伝えるのと依頼内容を話そうよ」
「そうでしたな。とりあえずお茶を用意しましょう。きし・・・店主は彼の部屋の準備をお願いしますよ」
あ、やっぱりここが拠点になるのね。だから生活費保証か。
「とりあえず、お茶がきてから依頼の話にするけど。まずは人間関係から話ておこうか」
「お願いします」
そういうと、正面の席にお嬢様が座った。店主は・・・って手伝いにいかないのかよ。
多分あれか。いきなりやってきた相手になめられないようにって感じだろうな。
「簡単にいうと、あの組合長が今の地位にいるのは父のおかげってだけ。昔、家族一同お世話になったお礼に組合の本部に推薦書を送ったの。人柄も問題ないしね」
「めちゃくちゃ簡単だった。あの組合長、依頼を受けた時笑顔だったのはそれが理由でもあるのか・・・」
多分、あっちはあっちでそのことに恩を感じてて、今回なんとか力になりたいと思ったんだろうな。
だから、依頼受けるバウンサーがいないかもしれないと思いつつ依頼表を張り出していたのか。
・・・仕方ない。話を聞いてから棚の酒の行方は決めることにしよう。
ちなみにこの世界、飲酒は成人したら許可されるので16歳からです。・・・なる前に旅団のノリに巻き込まれて飲んだことありますハイ。
そうこうしてると、お茶をもって老紳士が、部屋の準備が終わったのか店主が戻ってきた。
「さて・・・改めて言っとくけど、これからの話は他言無用。話していい内容はあとで伝えるけど、それ以外は絶対に守秘義務を守ってほしい」
「きた以上は守るよ。依頼は確か親の遺産の回収・・・でしたかね?」
「あ、無理に敬語口調しようとしなくていいよ。そんなの気にしないから。爺やは嫌がりそうだけど、敬語口調が固定化したりすると嫌だしね」
「いえ。今の状況を考えるとそこまで口うるさくするつもりはありませんぞ?」
「了解。では改めて、依頼内容をどうぞ」
「まずは自己紹介。私の名前はアイリス。アイリス・ヒューレ。数年前、この地の領主だったヒューレ伯爵の一人娘だよ。
こちらの爺やはセバ・ス。見た目から気づいてるかもしれないけど、昔執事長をしていた。店主は父に使えていた騎士長をしていた人で、バンスさんね」
おう・・・予想の斜め上のお偉いさんだった。って、親の遺産ってまさか
「そして正式な依頼内容は『伯爵家に代々伝わるメイルの回収』です」
貴族ゆかりのメイルの回収ですか。
確かに、こちら側としては回収になるけど・・・現在の所有者にとっては盗まれたって扱いになってもおかしくない。だから失敗時のペナルティがあれだったのね。
しかし、数年前・・・
「あまり聞いていい内容とは思えないけど、少しだけ確認したい」
「いいよ。というか、多分聞きたいことはわかるから話すよ」
お茶を一口飲んで、彼女は真剣な表情でいて、少し悲しそうな顔をして話しだした。
「聞きたいことは多分、伯爵家がどうなったのか、だよね。予想してるだろうけど・・・数年前にお取り潰しになったよ。無実の罪でね」
伯爵家が無実の罪で?
疑問の残る中、彼女は話し出した。世間で語られてる話と、彼女たち側での真実を。
遺産回収って依頼は結構あったりするのかな・・・思いつつ最初の話の主題にしました。
余談ですが、この話を書くにあたってネットで爵位の順番を調べていますが
間違ってたらご指摘を。
書いてる間にもごっちゃになりそうになってた・・・