第二十五話:2つ目の物語の終幕
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影に生きることを目指し、日の当たる世界に飛び出した者の物語
これにて終幕です
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「長。先にきていた早文の荷物、さきほど到着したと知らせが」
「わかった」
黒づくめの男からの報告を、1人の老人は静かに聞いた。
「・・・よもや、このような結果になろうとは」
同席していた一人の老人が目をつむりながら言葉を紡いだ。両手でもっていた湯呑をゆっくり持ち上げ、静かにお茶を飲む。
「ふん・・・だから、あの場であやつに真実を話してやるのが一番と申したであろうに。それを却下したがゆえの結末よ」
同じく同席していた一人の男性が腕を組みながら険しい表情のまま言った。
「今となってはそれも結果論。あの時言っていたとしても、感情の高ぶったあやつの耳に届いたかどうかもわからぬよ」
同席していた最後の1人がため息とともに発言する。
「どちらにしろ、我々は1人の優秀なメイル乗りを失ったことに関しては事実・・・メイルの損失も痛いが、人の損失以上に痛いものもない」
長と呼ばれていた老人が静かに告げる。
「我々の目指すは裏の世界。だからといって、命を簡単に扱うのが正しいことでもない。
我々の刃を振るう者達は、日の当たる世界より日の当たらぬ世界に行ってもらうべき者達だけ」
そう言い、天を見上げる。
「双方の言い分、間違いは無かろう。だが、結果は結果。今の事実のみを受けいれ、今後を話し合わねばならぬ」
そう言って、長は正面に視線を戻した。
「メイルに関しては現状生産を続けている故補填は可能。あのメイルなみの性能かどうかは別だがな。
故にまず考えねばならないのは、実行員の補充問題よ」
そういうと、4人は目をつぶりしばし熟考したあと・・・
全員同時にため息をついた。
「・・・とはいうが、最近の若い奴ら、なんか新しいアンカーから知識を仕入れたか。『影の世界を生きる者とかちゅーにびょうって奴になるみたいでいやだ』とかほざいとるんじゃがなぁ。なんなんじゃ?ちゅーにびょうって」
長がため息の後、それまでの威厳がなかったかのような、呆れたような表情をして言った。
「ちゅーにびょうってのがなんなかわからんが、もやしっ子が増えたみたいで貧弱な体のまま成長しとるガキが増えよったわい!わしらの時代の訓練に比べたら、体が全く出来上がっておらんのばかり!」
老人が、先ほど両手でもってゆっくり飲んでいたお茶を・・・片手でもって一気に飲み干して言った。
ついでに湯呑を机に叩きつける。壊れなくてよかった。
「・・・あやつら、ちょっと訓練内容厳しくしたら泣き言言って逃げよるし・・・。鍛え方が甘いのは認めるが・・・それでもなぁ・・・。一応その・・・できる範囲では厳しく・・・なってるのか怪しくはあるが・・・」
威厳たっぷりだった男は・・・やたらと縮こまった感じになってビクビクしていた。
ちなみに、となりで机に叩きつけられた音を聞いて少し涙目になりかけ。
「まあ、今の現場指導員もそのもやしっ子時代の奴らじゃからなぁ・・・仕方ないと言えばそうとしか言えん。年老いた教育係もほとんど残っとらんから、現場指導員の教育も質が年々落ちていくしの・・・」
最後の老人が、背もたれに体重預けて天井見ながら言う。椅子の前部が宙に浮く。そのまま後ろに倒れないか少し心配。
この組織、レヴァイやユーシスの教育をしていた時代より少し前から人材不足に悩まされていたのであった。
厳しい訓練から逃げ、のんびり育った構成員が多くなり、それに比例して訓練内容が甘くなっていった。徐々に。その訓練を受けて合格した者が次の訓練担当をしたりするものだから・・・一時に比べて訓練内容がどんどん簡略化していき難易度が比例して下がっていた。
むしろ、その訓練で2人があれだけの実力者になったのは、幹部である彼らにとっては本当に嬉しい誤算だったのである。
・・・2人の訓練結果を見て、全員で夜通し騒いだくらいには嬉しかったようだ。
レヴァイにも、構成員としての試験は不合格判定したが、特例で指導員の最高責任者になって訓練内容を見直してもらおうと思っていた。
しかし、現在・・・2人ともいなくなった。
この組織の今後がどうなるのか・・・未来はとても暗そうであった。
余談だが、この4人、現役の新人や訓練生よりかは体力がある。
「はっくしょん!」
1人の男が、トレーラーの上でくしゃみをしていた。
「ぬぅ・・・別に拙者、寒さなど感じないのだが・・・?」
噂によるくしゃみ、という考え方はこの世界の人々にはない。
「それより・・・金に困りそうなのも事実。ここは彼らにならってバウンサーという職業になるのが一番かなぁ」
故郷を飛び出した時に持っていた路銀と、トレーラーに残っていた不要なパーツを売って少しのお金はできた。
しかし、一月もつかどうかくらいであった。
こんな事なら厚意に甘えてメイルの改修費、全額払ってもらえばよかったなと思えるくらいには乏しい状況に陥っていた。
「・・・善は急げ。次の街についたら、さっそく登録依頼をするでござるな」
そういって、彼は旅立った。
目指すは北。北には別大陸へ渡る港が存在する。
友に再会した時に、別大陸にいってきたと自慢するため。
彼は、旅だった。
そして、彼は
進先にある街のいくつかを、気づかずに通り過ぎていた
バウンサー組合のない村に着いたときに知り、路銀が尽きたのであった。
村人の好意により1食もらった彼は、そのまま北へ。
2つの小国が争いをしている間に挟まれた地に行くのであった。
その先に運命が待ち構えていた出会いはよかったのかどうか・・・
これにて「主人公がいない」第一章、終焉です。
第二章は本来、この話の最後に付け足す予定だったのですが・・・
話膨らんだので丸々一章分に加筆しました。
次章、主人公でます。少しだけ




