第二十三話:新しい旅立ち
語り:トロア
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この結末は予想できていなかった
あいつは大丈夫だろうか?
その思いをよそに、あいつは・・・
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動けなかった。俺たちは全員動けなかった。
ライヤーはただただ、目の前の光景をじっと見ていた。
エリアは涙を流しながら視線をそらしていた。
俺は後悔だけが頭の中を駆け巡っていた。
目の前に、2機のメイルがそれぞれの武器を相手に当てていた。
蒼いメイルは、その武器を黒いメイルの頭部に叩きつけていた。文字通り、斬りつけるという形ではなく叩きつける感じで。
軽量タイプだからか、装甲は吹っ飛び内部機構も破損している。
そして、遠目でもわかる。精霊炉が壊れている状態を。
そして、黒いメイルの武器は
蒼いメイルの胴体に突き刺さっていた。
共通故にわかる、その位置が、操縦席ということを。
武器の大きさゆえにわかってしまう。どれくらい刺さっているかも・・・。
1人の男の叫び声が聞こえた。メイルの拡声器を使わないでもうっすらと聞こえる叫び声だった。
黒いメイルの操縦席が内側から吹っ飛ぶ。
人がでてきて、蒼いメイルに近づく。
遠目故、どんな表情なのかわからない。
だが・・・あいつの崩れ落ちる姿を見て、想像通りの状態なんだと確信してしまった。
その日、1つの決闘が行われ、1人のメイル乗りが死んだ。
友人を助けるために、友人の乗るメイルと戦って・・・
それから俺達は男爵家に戻った。まだしばらくこの街に滞在すると言うと、追加報酬と言って滞在期間中の部屋を用意してくれたからである。
黒いメイルは頭部が完全に破損。精霊炉から武具霊の反応が消失しているので復帰は不可能。
蒼いメイルは左腕と胸部が破損。タイプが違い過ぎて、この国の技師では完全修理は不可能と判定された。
黒いメイル乗り、レヴァイはユーシスに充てられていた部屋に引きこもっていた。
食事も採っていないようとのことで、3日間まったく反応がなかった。
ちなみに、寝坊したレイには結末だけ伝えた。俺たちもそのことについて何かを言う気力がなかったので結末だけ。
翌日、詳しい内容を知りたいからと言うので説明したら・・・それまで見たことないような後悔した顔をしていた。
「一緒に行っていれば・・・2機でなら押さえつけれていたかもしれない」
あいつは、そのことを本当に悔やんでいた。
レヴァイのいる部屋の前で土下座して部屋に向かって謝っていた。許しを請うわけではない。
ただ、自分の後悔を伝えるためだけに。
4日目、レヴァイは部屋から出てきた。
「さすがに腹が減って・・・このまま飢え死にしようものなら、それこそあいつに顔を向けることができん」
そう言って食事を採っていた。
「それと、2つほど頼みがあります」
そう言って男爵に話をし、男爵もそれを了承。翌日からさっそく行動が開始された。
そういえば、1つだけ気になっていたことがあるので聞いてみた。
「決闘の時ちらっとだけ話があがったんだが・・・4件目の殺害だけ理由を聞いて説得を諦めたと言っていたが、あれは?」
「ああ、そのことか。あの次男、かなりひどい女癖の悪さだったようで。気に入った女性は貴族の権威を使って強引にだったり酷いのだと私兵に拉致させていたらしい。それで飽きたら実家に帰すではなく他国の奴隷商に売っていたとのことなので」
あいつに比べたら、その前の貴族の坊ちゃんのほうが宝石で吊ろうとしただけマシ、とも言っていた。
ついでに、その話はこちらは調べがついていなく、この国の警備隊も調べ切れていない部分だったようなのでラーク男爵に彼が持っていた証拠書類と一緒に渡した。
5日後、その貴族家はなくなった。
「いや、規格が違うから苦労しましたけど・・・なんとか形にできました」
半月ほどたって、男爵が雇っていた技師が報告をしてきた。
全員で工房に行くと、そこには1機のメイルがたたずんでいた。
黒色を基本色とし、ところどころ修正されたと思われる場所は蒼色になっていた。
元々もっていたクナイは技師たちの頑張りの結晶なのか、前より少し大型化していた。
魔銃は短銃が2丁。色的に属性は「火」と「風」のようだ。
そしてその横には、胴体の傷の修理がされていない、さらに一部のパーツが欠落したメイルが座っていた。
「要望通り、蒼いメイルのパーツ使って黒いメイルの修理を行いました。まあ、事前に言ってもらっていたように、蒼いメイルから使えるパーツを移植しただけなんですが。
基本型が同じ故にできたことですね。頭部の移植も成功、精霊炉の起動も問題なしです。一番苦労したのは武器の大型化ですね」
「ありがとう。これからを考えると少し大型化してもいいかと思ったので。無理そうなら前のままでもといったが、この国の技師の技術力を見誤っていたようだ」
そう言って、レヴァイは技師に依頼料を支払っていた。3割は男爵が負担してくれたが、7割に関してはこの国の依頼協力でキール男爵からもらっていた報酬を全て使って
支払ったようだった。
「しかしよかったのかね?私としては、別に全額はらってもよかったのだが」
「いえ。拙者はあなた方を襲撃した者。そちらに刃を向けた以上、そのようなことをしてもらうわけにはいきません。足りない分払っていただいただけでも申し訳ないのに・・・。
それに、もう一つの依頼に関して発生する料金を全額支払っていただいただけで十分すぎます。・・・そちらの件、よろしくお願いします」
「もちろんだ。必ず」
レヴァイの依頼は2つ。一つはメイルの修理。この国の技術での修理が不可能だが、同じ技術で作られたものからパーツを使って修理ならできないかということで依頼。
結果は、目の前にあるメイルがそれだな。
そしてもう一つの依頼。パーツ取りの終わった完全に起動しなくなったメイルと、その搭乗者の遺体、それに自分からの手紙をそえて
故郷の組織に向けて送ってほしいというものだった。場所は聞いているし、先に早文を出して簡単に状況を伝えているそうなので問題なく受け入れてもらえるだろうと。
こちらも、明日手続きを行い、トレーラーへの積み込み作業を行って明後日には出発するそうだ。
俺達が請け負うと言おうと思ったのだが・・・この国に来た目的を思い出したので言えなかった。
そして、それを見送った翌日
「本当に、世話になった。この恩、決して忘れない」
そう言ってレヴァイは元々乗ってきていたトレーラーにメイルを乗せ、旅立ちの支度をしていた。
「もう少し、ゆっくりしていってもよかったのだがね・・・」
ラーク男爵がそういうが
「いえ。ここまででもお世話になりっぱなしです。これ以上は過剰受け取りですよ」
そう言って、レヴァイは笑っていた。
「そちらの4人も、滞在期間世話になった。いずれまた会った時、この恩に報いさせていただく」
「いや、それはいいが・・・本当に大丈夫か?」
レイが少し心配そうに言う。実際、レヴァイは夜にうなされていたりするとの話だ。
「大丈夫かどうかで言うなら怪しいと回答する。だが・・・それでも拙者は旅立つ。あいつに・・・友に再び会った時の拙者も成長したぞと話をする。そして、旅先での話をするためにもな」
そう言って、彼は笑顔を向けていた。
「気をつけてな」
俺はそういうしかなかった。
「うむ。そちらも、達者でな。またいずれ会おう!」
そう言って、彼は旅立っていった。
人を殺せない男
初めて人殺しをした相手が友だった男
自分の後悔を忘れないために、あえて黒いメイルに乗り続けることを選んだ男。
友の姿を忘れないため、友の残した言葉を忘れないため、友のメイルのパーツを使って修理した
友を手にかけたメイルと共に、彼は旅立った。
レヴァイ
友人の墓に土産話をしてやるぞと、国に帰らず旅立っていく。
実際は、自身の乗っていたメイルと共通規格が多かったこととに加えて奇跡的に精霊炉の移植ができたので黒いメイルが再起動できた故に旅立つことを決めた。
新しいメイル「黒蒼牙」と共に今後も登場が確定している。




