第十二話:ひとつのエピローグと
語り:アイリス・ヒューレ
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1つの事件が終わり
1つの事件の真実が暴かれ
そして、1つの謎が残りました
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「では、明日に出発されるのですね」
目の前には、この事件の解決に大きく貢献していただいたトロアさんが。
彼もバウンサー。依頼を受けて生活している以上新しい依頼を求めて旅立つは必定。
むしろ、ここまで手を貸していただいたことに感謝しかありません。
「ええ。それに、調べたいこともできましたからね」
そういって、客間でお茶をしながら最後の日を迎えております。
「しかし、この国もこれからしばらく大変でしょうね」
「そうですね・・・トップが複数人入れ替わったこともありますが、3つの領地で管理者が変わることになりましたから。それはいいんですが、3つともかなり前のがやらかしてて立て直しに時間かかりそうなのがね」
そう。クズ共の執行がされて国王陛下が交代された報告のためこられたジーン伯爵が3つの領についての話ももってこられた。
あ、ジーン男爵だったんだけど・・・口調?丁寧にいうのが面倒になってきた。
でジーン男爵だけど今回の功績で伯爵になった。本人は捉えただけだから恐れ多いと言ってたけど。子爵すっ飛ばしたし。ついでに、現在のヒューレ領も見てくれている。一月に数回、こちらの街にもきて復興状況も確認している。必要そうな資材があれば手配も行ってくれるので助かっている。セバはそこまで詳しく元の伝手を知らないみたいだったから。まあ、知ってても騒動の終了時に家督を息子に譲ってる可能性が高い家々だろうからってのもあるけど。
まず、ヒューレ侯爵領は私が代理として就くことに。この国では女性は領主になれないからいずれは夫を迎えることになるだろうけど、
とりあえず爵位なしは問題だからと名義上は男爵の位を与えられた。夫を迎えた時、正式に男爵家として登録されると。
つづいてバーゼ子爵領。こちらはバーゼ夫人がしばらく領地安定に努めることになり、新しい領主が今王都で選抜されている。
決まったら子爵領にそのまま男爵として就任されるとのこと。男爵領から子爵領となり男爵領となるわけだ。
娘さんが「いい人だったら嫁入りしようかな?」とか言ってた。
夫人は、新しく来られた後は貴族位を返上してこちらの街にきてのんびりと暮らすって言ってる。縁を切ったとはいえ罪人と元夫婦だから貴族位もってても害にしかならないと言っている。
ドルド侯爵領だけど、ここは私の兄が新領主となることになった。なんでも捕まってる間に世話係をしてくれていた女性と恋仲になっていたようで、年も近かったと。
そのまま結婚して、反旗ひるがえした騎士たちも兄を慕ってくれる人たちだったようなのでそのまま兄の元で領内の平定に尽力してくれるとのこと。
兄は男爵家の位をもらうこととなり、領民たちのためにがんばっていくと言っていた。
それぞれ爵位がころころ変わったけど、とりあえずは3つとも「男爵領」から再出発ということだね。
「しかし・・・情報届けただけなのに、普通の依頼料じゃ考えられない報酬もらってちょっとどうしようかと思うな」報酬がかなりびっくりの金額でしたもんね。トロアさん、少し顔が引きつってた。
「道中、襲われたことがあるという過去がありましたし。大半はこちらからじゃなく王国からだから気にしないでもらっていいと思いますよ」
まあ、新国王からの「この件、あまり公表しないでね」って意味もあるだろうけど。王家が侯爵家を無実でつぶしたなんて外聞悪すぎだろうから。
「・・・それで、調べたいことというのは、彼のことですね?」
そう。この場にいておかしくない、彼。レクスさん。
彼が依頼を受けてくれ、彼が最初の行動を決めてくれ、そして援軍を得ることができて事件の決着をつけることができた。
彼のおかげで全てが解決したといっても過言ではない。
なのに、報酬の渡す段取りがついたら受け取ってさっさと旅立ってしまった。
まあ、「あのメイル」のことを聞かれたくなかったのかもしれないけど・・・もう少しいてくれてもという気持ちもある。
「ええ。話を聞くだけで見てないから何ともですけど・・・気になることがありすぎて」
「なにか、わかったことは?」
「わかったというか、そうじゃないかなという疑惑とあいつの生い立ちについての疑問・・・ですかね」
「生い立ち?」
「時間あったからあいつを拾った時のことを思い出してて気づいたんですが・・・あいつの立ち止まっていた位置と進んできたであろう進行方向。他の国をまたいでいないというのなら、その先にある国が『ファルサラ』なんですよね」
「そこは・・・!」
ファルサラ。この世界で知らない人は大陸の向こうの国であってもないと思われるほど有名な国。
なにしろ「メイルが初めて作られた国」である。現在は超大国と言ってもいいくらいの国土を保有している、話を聞く限りだと大げさに言われてるんじゃないかと思えるくらいの国。
「国が国って言うのもあるんですが、それ以上に気になることがあの国にはあるんです」
「それは?」
「あそこには、一つ語り続けられてる話がありまして・・・」
なんだろ?すごく気になる・・・
そして、トロアさんが語りだした話は驚く内容だった。
「 武具霊たちの加護を受けメイルは誕生した。
数多の武器の姿をもつ精霊たちの力を受けて。
その精霊たちにも格が存在していた。
格の高い武具霊の宿りしメイル
一騎当千とも思える強さを発揮。
神のごとき力とはまさにこのこと。
ゆえにその鎧『神衣』と名付ける 」
「神衣・・・!」
彼があの戦場で言った言葉。・・・言われても違和感を感じないレベルの強さ・・・だった・・・かな。
「けど、あいつと一緒に行動していた時整備士に聞いたんだが・・・あいつのメイルはかなり年代物ではあったそうだが、そこまでめちゃくちゃ古い作りではないそうでした」
「それは・・・おかしくない?語り継がれているメイルなんでしょ・・・?」
「それに関しては、過去に存在していただけって感じであの国にそんなメイルが安置されているって話はないそうだ」
「つまり・・・なにかあると」
「そう。・・・そしてあいつなんだが、結構高い知識を持ってるみたいだ。『一般家庭が通う学園』では教えられないような内容も」
「彼は、貴族・・・?」
「貴族しか家名を持たないので決定的なものはないけど、そうだと思ってる。そして関係があるとすればまず最初に思いついたのがファルサラだ。なので、とりあえず行ってみることにします」
「ですね・・・もし、何かわかりましたら気が向いたときにでも教えに来てくれませんか?」
それに彼は了承してくれた。
そして、翌日、彼も旅立っていった。
バウンサー。
すこしあこがれるけど・・・お父様やお母様の眠るこの地を守るため、私はこの地を私の戦いの場とすることにします。
機会がありましたら、またお会いしましょう。
アイリス・ヒューレ
後に首都からやってきた新しい領主・・・の息子と恋仲になり結婚。送られてきた新領主が高齢だったこともあり、しばらくして男爵夫人となる。傷は完全には消えなかったが、ほぼ元通りに戻ったメイルとともに領地運営を行う。とある村に引っ越してきた女性と色々と領地のことで聞いたり助言をもらったりしながら、その後は特に大きな事件もなく幸せな生活を送っている。唯一の悩みは、騎士団長の酒癖の悪さくらいだろうか?
※余談ですが、一番最初に物語を考えた時はこの作品のヒロインとなる予定でした。
ヒロインから外れる理由は「この後旅に出ることに対しての理由の弱さ」です。ここの領地での貴族の生存者が少数になったので「旅に出る理由」より「残る理由」のほうが強くなりましたから。




