第十話: 最強という存在はこういうものなのだろう
語り:アイリス
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思い出を踏みにじられた
思い出を壊された
その悲しみが呼んだのだろうか
それは涙を吹き飛ばしてしまうような存在だった
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セバが一通り伝えてくれた・・・まだ悲しみが治まらない。
『ちっ。役に立たない雇い主様だな。・・・まあいい。おい!そっちの子爵様を捕まえてるやつ。今すぐ解放したら目の前の奴を見逃してやってもいいぞ?』
盗賊の1人がそんなことを言ってきた。
確かに、彼は包囲されている。このままだと危険かもしれない。
「そちらこそ現状を理解されているのですか?あなた方の雇い主は捕縛しております。これ以上の抵抗は無意味。何かしようものなら全てあなた方の罪となるでしょう。そちらのメイルの包囲をとき、武装解除して投降することをお勧めいたしますよ」
夫人が反論する。確かに、盗賊の奴らだと思うけどこれ以上の抵抗をしないなら一応手心を加えられる可能性がないわけじゃない。もっとも、雇われていた理由が彼らに不利益な内容でなければ。元領民の不審死に関わってなければだろうけど。
『そちらこそ、自分たちの行っていることがわかっているのですかね?』
やってきた騎士団の先頭にいたメイルから声がした。私兵団の隊長だろう。
『明確な理由もなく、当主様の館に不法侵入して傷を負わせたことは明確。すぐに開放することを伝える。さもないと、法に照らした処罰をくだすことになりますぞ?』
やってきた私兵の先頭にいるのが言ってきた。
そちらが先に、でっち上げの理由で父を・・・。
「明確な理由があるから館に侵入もしたし、貴族様もぶん殴ったんだよ!こちらの掴んでいる内容を公表したらお前たちもまとめて後がなくなるだけだぞ!」
バンスが声を大にして反論する。
『それが正しいかどうかは後程わかること。今はただ領主館に侵入した不審者たちということだけだ。無駄な抵抗をするようなら力づくでということになるまで。そうなった場合の安全の保障はできないと思われる故、そちらからの解放と投降を呼びかけているのだぞ?』
隊長は変わらずこちらが一方的に犯罪者だと言っている。確かに不法侵入だけ見るならこちら側が加害者になるが、こいつのやったことを知らないのか・・・?
「私たちが見つけたこの地下にあるものを見ても、同じ意見が言えますか!?」
娘さんが言う。地下にある破壊された国宝のことを。
『地下・・・?この屋敷に地下などないぞ?何を言っているんだ?』
・・・え?
私兵の隊長が知らない・・・?
『いえ隊長。地下に一室だけあるじゃないですが』
『あったか?地下室など』
隊長のセリフに、話しかけた私兵が
笑いの含んだ声で 言った
『あるじゃないですか。この前壊してやったやつの置かれた「ゴミ置き場」が』
!!
『ああ・・・そういえばあったな。屑鉄を固めるための部屋が』
隊長の声にも笑いが含まれる・・・。
こいつらが・・・こいつらが・・・思い出のメイルを・・・!
『・・・どうやら、想像以上のクズの集まりだったようだ』
そんな、静かな怒りの声が聞こえてきた。彼だった。
『きさま・・・状況がわかってるのか?』
『わかってるさ・・・お前ら全員、クズの集まりだってことがな』
『・・・なんだと?』
その声に怒ったのか、私兵たちが歩みを始めた。盗賊たちも彼に魔銃を一斉に向けた。なんでそんな煽るようなことを・・・
『てめぇ・・・どうやら死にたいようだな・・・』
『だまれ、小悪党どもが。お前らこそ牢屋にいく準備はできたんだろうな?いや、やったことの規模を考えると断頭台がふさわしいか』
『・・・てめぇ・・・!』
今にも攻撃が再開しそうな・・・だめだ・・・彼はただ、巻き込んでしまっただけで・・・
それも剣を手放して・・・てばな・・・
なんで、その状況で彼は相手を煽るような言い方を?
その後、まったく予想していなかった・・・いや、予想なんてできないことが起こった・・・
『起きてくれ《アース》。こいつらを徹底的に叩く』
【了解だ、我が騎士よ。もっとも、少し前から起きていたがな】
彼が発言したと思ったら、同じ拡声具から別の声が聞こえた。
それに驚いたのか、全員の動きが止まった。
【感じたところ、宿る武具精霊も意思なき存在だな。あまり気にせず剣を振るえるのはありがたいことだ】
『だな。遠方からやってくる一団があるようだ。あまり見られたくないだろうから、一気に制圧するぞ』
【了解だ。弐刀をもって制圧する】
なに・・・?なにが・・・
【『神衣起動』】
その言葉のあと、彼のメイルに動きがあった。
突如、両肩のマント型装甲が変形した。
横に少し伸びたと思うとそのまま180度回転。後ろ側に回ったマント型装甲が開くことで羽根のような形になった。
そして、頭部のヘルメットのバイザーに当たる部分が上にあがり・・・
まるで 人の目のように
光が二つ 灯った
『『・・・なっ・・・なんだそれは・・・!?』』
二か所からの声が重なって聞こえた時、更なる動きが起こった。
変身した彼のメイルの両腕についていた小手の先端から光が伸びた。それは形を整え、剣の形となった。
人のような目をもった 羽根をもつ 2本の剣を腕につけたメイル
姿を変えるメイルなんて聞いたことがない!?
そして
メイルがその二振りの剣を振るった時
盗賊のメイル 6機の頭部が飛び 胴体が上下に別れていた
「「「・・・」」」
夫人も何も言えないって顔をしてるくらい、こちらは全員あっけにとられた。
そうこしてるうちに、流れるような動きで両腕が振るわれ、気づいたときには盗賊のメイルは全機同じ姿となっていた・・・。25機いたのが・・・一瞬で・・・。
すこし装甲を厚くしてるように思えるものも関係なし。振るった数だけ盗賊のメイルは切れていた。
いや・・・一振りで数機切り裂いたりしてるから振るった数はもう少し少ないかもしれないくらい・・・
『・・・な・・・なんだ・・・あれは・・・』
私兵のほうからも声が聞こえるが、明らかに現実を認識できているようには思えない。
次の瞬間、ここまで走ってきたとき以上の速度で彼のメイルは走り、私兵団に接近。
慌てて私兵団から魔銃による攻撃が開始されるが、彼はそれを避けながら進んだ。
何発か当たってるようだけど、まったくダメージになっていないような感じで・・・
あとは、盗賊のメイルと同じ姿となるまで、数分かかったかどうかって感じだった。
盗賊と違って連携的な動きをしている者達もいたけど、関係なかった。
多少、地面に倒れるまでの時間が長引いただけだった。
ただ一発も当てることができずに、全機破壊されていた。
何事もなかったかのように、再び元の姿に戻っていくメイルを眺めながら
私たちは、それでもなお、現実の光景に追い付いていなかった。
現実に追い付いたのは、北の方からくる騎士の集団を見た時だった・・・。
主人公機の変形プロセスはいくつか案がありました。
1,マント型装甲の一部がはずれ残った部分が開く
没にした理由:戦闘後、外れたパーツ壊れてたらもとに戻れないんじゃない?
2,マント型装甲の後ろ部分が外れ、180度肩アーマーが回転して前面部分で羽根のような形に
没にした理由:上と一緒。学習しようよ?
で、マント型装甲を前面だけにして今回のような変形方法にしました。
頭部も、額のパーツが最初は胸部中央についている形にしようかと思いましたが
「外れたパーツが自動的に別の場所につく」を自分の描く世界の技術でできるのかという疑問が生まれたので却下、騎士のヘルメットみたいにバイザーを上にあげる形にしました。




