第九話:時間稼ぎと悲劇
語り:レクス
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とりあえずの目的は時間稼ぎ
彼女たちが目的を達成するまでの
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館が見えてきた。
とりあえず、無茶させないようにそろそろ速度を落として近づいていくかな・・・。
そう思っていたら、館のほうから30機ほどのメイルがやってくるのが見えた。
ちぐはぐな装甲をつけて、武器も統一感のない魔銃。一部は装甲をあつめて固めたのかっていうような不格好な盾をもっていた。
どうやら、雇われ盗賊たちのご様子。
『あーあー。近づいてくるメイルに告げる。ここをバーゼ子爵様の館と知っての行動であろうか?速やかに当領地より立ち退くことを勧告する。従う意思が見られない場合、我々は直属騎士として対応せざるを得なくなるぞ』
なんか言ってきた?
「そんな統一感のない子爵お抱えの騎士団がいるわけないだろ?王家簒奪をもくろむ悪党に与する盗賊ですって感じに見えるが?」
とりあえず、お前らが何か知ってるぞといった感じで・・・と。
『・・・どうやらただの通りがかりのってわけじゃねーようだな。なら始末するしかないな』
そう言った直後に魔弾が飛んできた!
ドンッドンッドンッ!
何発かは見当違いの方向に飛んで行ったが、数発は当たったようだ。
と言っても威力の無い魔銃をさらに距離あけて撃つもんだから全然効果がない。
・・・戦闘経験なしか?
「当たった以上威嚇攻撃とは言えない。こちらも攻撃させていただく!」
そして、メイルを走らせた。まずは一番前にいるやつから!
『なっ!?はや・・・』
言ってる間に接近、一気に左手に持っていた件で斬りつける!
ザンッ!
装甲もやわなのか、一撃で頭部を真っ二つにできた。
そのまま倒れそうになってるのを、胸部あたりを思いきり蹴り飛ばして倒してやった。
倒れたメイルはそのまま動かなくなった。
ここで一つ。メイルの重要部分が二か所。頭部と胸部より少し下あたり。
胸部下には人の乗るスペースがある。搭乗席の位置だ。
そして頭部には、メイルを動かすのに必要不可欠な精霊炉が存在する。
精霊炉とは、この世界に存在する「武具精霊」が宿る場所。メイルはその宿った武具精霊の「核の強さ」で性能が大きく変わる。強い聖霊が宿ると、メイルも必然と強くなる。
最初の一撃でそれを破壊、胸部あたりに蹴りを与えることで搭乗席の入り口が開きにくくする効果が期待できる。逃げにくくするためだね。
あ、精霊炉が壊れても中の精霊が消滅したりはしない。壊れた時点でその精霊炉との契約がきれて立ち去るだけだ。
仲間がやられたので同様してるのか、動きが止まってるのが何機かいるな。
そいつらから優先するため、メイルを走らせ確実に剣を叩きつけてやった。
ついでにきっちり、胸部にも蹴りをいれておく。
まあ、そんな感じで5体くらい倒したんだが・・・中には少し統率能力があるのがいるみたいで。
『そいつは剣しか持ってないようだ!周りを一定距離開けて囲んで攻撃をくらわしてやれ!動こうとしたのに気づいた奴は誰でもいい!足元に撃ち込んでやれ!』
といった感じにされてしまってそれ以降撃破数が上げれなかった・・・。上手いことしてきやがる。
『・・おい!騎士団がやってきたぞ!?』
しばらくして、盗賊の1人が西を見ながら叫んでいた。確かにそちらを見ると騎士団がやってきていた。
多いな・・・多分、50機くらいはいるぞ・・・?
もしかして、あれ・・・
『・・・あ?あれは子爵様の家紋つけてるじゃないか。計画のために呼んでる私兵たちじゃねーか』
やっぱりか・・・自分たちを殺すためにやってきた奴らだってのに。そのあたりの計画は当然教えられてないか・・・。
『レクス殿!!』
館のほうから、声を拡声させる魔法具を使った時特有の声が聞こえた。
そちらを見ると、潜入したみんながいた。
あと、ほっぺたに殴られた跡がある偉そうな感じのおっさんと、鼻血だしとる僕より少し年上くらいの男。
その2人は、縄で縛られていた。間違いなくあいつらが主犯だな。男はあのおっさんの息子か?
『・・げっ!?子爵様のやつ、捕まってやがるぞ!』
盗賊もそれに気づいて少し同様している。私兵も見えるところまで来ているがそこで立ち止まっていた。
どうやら、時間稼ぎはおしまいかな・・・。
しかし、気になる。
今、僕を呼んだのはセバ執事長さんだ。
アイリスさんは、とても喋れるような状況には見えない・・・それくらい、泣いている。
バンス騎士長に支えられてないと歩けないようにも思える・・・なにがあった?
そして 告げられた 真実
「子爵は捕縛し、メイルは見つかりました!・・・しかし・・・メイルは・・・」
視点変更:セバ
「・・・そ・・・そんな・・・」
アイリスお嬢様がその場で涙を流しながら崩れ落ちております。
しかし、私もバンスさんも今はただ、呆然と目の前の光景を見ることしかできません。
見取り図を頼りに、該当すると思われる地下室。そこに行けば目的のものが見つかるかもしれないと進んだ先で見た光景。
私たちが地下室に到着した時、そこは予想より明るい部屋でした。
それ故、目の前にあるものをはっきりと認識するしかなかったのです。
そう・・・破壊されたとしか思えないメイルの残骸の山と一緒にある
探し求めていた「盾」の
無残な傷をつけられた姿を・・・。
中央に何回にもわたって刃のようなもので斬りつけられたのでしょう、そうしてできた巨大な傷。
美術品としても王国より賞賛されたその盾にもはや価値などないと言わんばかりの傷。
それを目にした瞬間、お嬢様は涙を流しながら崩れ落ちました。
「おやおや・・・勝手に我が館に侵入したものがいるかと思えば・・・重罪人の娘と付き人達でしたか」
そう言って扉を開けて入ってきたのは、にっくき男とお嬢様より少し年上と思える青年。そして、3名の騎士でした。
「・・・バーゼ」
「子爵様と呼べ、たかが執事ごときに呼び捨てにする権利などないぞ?」
普段ならすることもない、どんなに毛嫌いする相手にも最低限の礼儀をする私ですが、この男にだけはそれをすることができそうもありませんでした。
「まったく、罪人に雇われていた男らしいね。立場が分かっていないってのは。父上、さっさと邪魔な2人を」
「そうだな・・・いや、牢屋にでも括り付けて最低限の命の保証だけしてやれば娘のほうも安心してお前との子作りに励むかもしれんな」
「それもそうだね。今のままだと、父上が殺した女と同じになっちゃうかもしれないや。前侯爵の血ってのを僕らに加えないとこの領地の奴らがめんどくさいもんね」
そう言っていやらしい顔を浮かべ、傍にいた騎士たちが指示を受けてこちらにきます。
どうやら、教育が必要・・・
「黙って聞いてれば!言いたい放題いいやがって!この、クズ親子が!!」
私が行動するより前に、怒りが頂点にまで達したバンスさんが動いてしまいました。
あの人、騎士長の立場に至った経緯が「一人で盗賊20人を素手で殴り倒して捕まえた」だったり「小型の魔獣を素手で殴り倒した」だったりするんですよね・・・。
「ぐえっ!」「ぎゃあっ!」「え・・・なにがぁ!?」
案の定、向かってくるのが騎士とはいえ3人、あっという間に殴り飛ばして意識を奪ってしまいました。
「「・・・えっ?」」
惚けてるバカ親子がおりますが、その隙はいただけない。
すぐに近づいて、親には頬を、子は左目あたりに強烈な拳を叩き込んでおりました。
「「ぐぎゃっ!?」」
親子そろって同じ悲鳴浴びて吹っ飛んでます。
さて・・・私も少々怒りがありますので追撃しますかな・・・
「・・・あらあら。とんでもないことをしでかしてますわね」
そう上の方から声が聞こえてきました。バカ親子もそろって上を見ます。
「・・・あ!お前は!」
「母上!?」
「おだまり。一月前にわたくしは子爵家と縁を切る書類を提出済みですから。ついでに子供の相続権も放棄するって書いておりますので」
「なんだと!?そんな話、わしは聞いてないぞ!」
「それはそうでしょう。あなたはそれより前からずーーーっとこちらにこもりっきり。書斎あさって家紋入りの印鑑勝手に借りまして王都に送っておきました。返事待ち状態ですが、まあ問題なく受理されることでしょう。家紋入りの印鑑ですし」
「おまえ!あれほど、わしの部屋に勝手に入るなと・・・」
「ああ、そうそう。その時一緒に面白い紙の束も見つけまして、そちらのお嬢様にお渡ししてますので。あとで国王にお渡ししてくださいって。まあ・・・この目の前の光景をあなたが指示したってのを伝えるだけでおしまいなのですが・・・」
「どういうことだ・・・?」
「それには私が答えましょう。まあ、簡単なことで。このメイルなのですが、公にはしておりませんが一応国宝に指定されているのですよ」
「なっ!!」
そう、この地を守り王国の盾となったメイル、ただ美術品として飾ってるだけのわけありません。功績を称える意味も込めて国宝として指定を受けております。
それを壊したなんて、国に反旗を翻しますって意味にしかとられないでしょうね・・・。
「まあ、そのあたりのお話はあとでゆっくりとするとしまして・・・このクズを捕まえたことを外にいる彼に伝えませんとね。・・・この結果も」
それを聞いて
確実に 自分の中にあった
怒りの感情が爆発したのをはっきりと感じ取った
そして、もう一つの怒りが爆発したのもはっきりと感じ取った・・・
次回 主人公機 覚醒
今回も2話分まとめた都合上、次話は短いです




