微生物以外のなにものでもない
顕微鏡を通して
微生物たちのうごめきを観察しているのは
ぼくではなくて
ぼくは
その
うごめいている微生物たちのうち
特に小さいほうの一匹だって
受け入れなきゃ
円いペトリ皿の内側を
電車が走っている
車窓から朱い夕暮れの街を
眺める
頭の痛い憂いごとを
ゆっくりと腹の奥へしまい込んだあと
目をつむる
からだを硬くして
防御の姿勢を保ち
眠る
微生物たちがうごめいている夢
重なり
引き裂き
踏みにじり合ってばかりいる
こいつら一匹一匹
迷子
今日よりも明日が良くなって欲しいと
怠惰に夢を見ている
こいつらとともに