願わくば
その建物はこじんまりしていたけれど、真っ白で、神殿みたいな構造だった。
中に入ると、20畳ほどの祈る場所?みたいな所だった。
長方形の形をしていて、入口から正面にある1番奥の場所にステンドグラスがあった。そして、その下に祭壇のような物があって、おそらくそこに上がって膝をつき祈るのだろう。
───だけど、その瞬間、何が何だかわからなかった。
勝手に体が動いた。
不思議な感覚だった。
湖の時と同じような…いや、もっと強い、吸い寄せられるような、本能。
そろり、そろり...と祭壇の方へ歩いて行った。
ゆっくりゆっくり祭壇の上へ上がる。
歩く度に肉球がキュムキュムとなって、猫になったんだといつも実感する。
普段歩いている森とは違う、冷たくて固い大理石らしい地面を踏んでいく。
上がってみると、ステンドグラスからは朝の陽の光が入ってきて、すごく幻想的だ。まるで、魔法の世界に来たみたい。
上がった途端に、祭壇の上で寝転がり丸まった。
そして目をつぶった。
本当に、なぜそんな体制になったかわからない。
けれど、確かに聞こえた気がした。
───願いを叶えてやる。───
そう言われた気がした。
───だから、祈ったんだ。
『人間になりたい』と。
そして、自由に暮らしたいと。
前世みたいに虐待を受けるような人生にはしたくない。
「役立たず」「こんなこともできないの?」「本当バカね」「生きてる価値ないわ」「死ねばいいのよッッ!!!」
そんなことを言われて育って、身体中に痣や傷ができて。
...そんな人生、嫌だ。
自由に生きたい。
優等生になろうと努力しなくても、バカでも、不細工でも、変でも、ありのままの私でいられる人生。そんな人生にしていきたいんだ。
そうやって、強く強く祈った。
本当に一瞬で、短い出来事だった。
だけど、それはあまりにも鮮明で、美しくて、非現実的で、そして、幻想的だった。
同時に、本当に本当に嬉しくて堪らなかった。
「あ、あ...!!」
高くて透明感があって、可愛らしい声が神殿 (と仮定する)に響き渡った。
───なれたんだ。神様が、私が人間として再び自由に生きられるように、してくれたんだ。
そして、そのあとすぐに、謎の声が響き渡った。
『幸運の娘、ネリネ・ラ・ヴェネチアルアよ。どうか、健やかに、穏やかに。───』
それだけ言って、声は途絶えた。とても綺麗な声だったけれど、本当になんだったんだろうか。
だが、きっと、願いを叶えてくれた人の声だろう。そんな気がする。
あまりの急展開に脳が追いつかないけれど、とりあえず、湖に行って姿を確認してみよう。
前よりも高い目線で、たたた...と走って行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ああ...やっとお会い出来る...!
そして、あの力を我が物にッ゛...!」
ローブを着た謎の老人が、ニタリと不気味に笑う。
彼の足元にある魔法陣は、紫や黒に禍々しく光っており、場所はどうやら地下施設のようだ。
「この力を使えば、あの方にも。
...黒魔術が違法だなんて、そんなのは関係ない───」
クックック...と今度は声を出して気味が悪く笑うと、興奮したような声色でこう声にした。
「神獣様ッ!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
白銀色でショート、ぱっつん前髪なサラサラな髪の毛、金色にキラキラと輝いている瞳。
可愛らしい顔立ちで、背は2歳~3歳くらいの大きさだ。
「あ...われなあら、かーいい」
我ながら可愛いって言ったから!!!!!
...それはそうと、かなり可愛い見た目になってるね。
髪の色と瞳の色は、猫だった時と一緒。
顔立ちも、目が大きくて、鼻も小さくて、バランスのいいすごくすごく可愛い顔立ちになってる。
そして!!今着てる服だ。
白いワンピースはお腹あたりのつなぎ目がなくなっていて、裾にはフリルの代わりにもこもこな綿?がついている。
長袖の袖は金色の模様がついていて、スカートの下らへんにも同じ模様がある。
胸元にはピンク色の大きなリボンが下にたれている。
白いベレー帽にも金の模様はついていて、金色と白とピンクで作られた服はとても可愛らしい。
ロリータファッション好きにはたまらない!
神様...と思われる願いを叶えてくれた人が与えてくれた服に喜びながら、生活をする準備を開始した。