魔法のお水
まさか猫に転生するとは...。
予想も何もあったもんじゃない事態に驚愕しながら、近くの湖のそばに近づいた。
どうやら転生した先、最初にいたのは森だ。だけど、どうも普通の森とは違う。なんだかこう、漫画の中に出てくる、キラキラ光ってて青緑っぽい色の森だ。
湖といってもそれほど大きいわけではないし、どこを見ても森ばかり。
うんざりである。
それにしても、視界が鮮やかだ。
普通の猫は色覚が人間ほど綺麗では無いはず。なのに前世人間だった頃より色彩感覚が鮮明なんて、何か普通の猫ではない気がする。
……ちなみに、この世界での私の名前は
【ネリネ・ラ・ヴェネチアルア】。
何故分かるのかは本当に分からない。気づいたらこれだけはハッキリとわかっていた。
そして、毛や瞳の色は、
白銀色の毛に瞳は金色。水面に映って見えている。
綺麗な見た目してるなぁ...って呑気なこと考えてたけど、今の私は子猫といえど生まれたてのような大きさでは無い。
生まれて生後1ヶ月~2ヶ月ほどの大きさだ。
どうして生まれたての大きさじゃないんだろう?
普通の猫じゃありえない見た目をしているのは何故?
様々な疑問があるが、暫く考えていたらなんだかどうでも良くなってきてしまった。
これについては後々考えることにしよう。
水面に写っている自分の姿を見ながら、まずは喋れないか試してみる。
"どうしてこうなっちゃったの?"
「にゃう...にゃ..みゃあぅ?」
高くて透明感のある鳴き声だけが響く。
………喋れたりしないかは諦めることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
───数週間後
ふわふわふかふかの場所の上で目が覚める。
日の出方の感じを見るに、朝だろう。
初日の夜は、周りが見えなくならないか心配だったけど、なぜか周りは見えた。
猫の目って夜の中で光ってたし、たぶんそんな感じなのかな?
それはそうと、初日の夜、寝る前に木の葉をたくさん集めてきて、その上に乗って寝た。
この森の木の葉は、少しもふもふしていたから、集めて上で寝ればふかふかだった。それからはこの上で寝ている。
そのあと、喉が渇いたので、湖の方に行った。
驚く程美しい水に、視界を吸い寄せられた。
透明でキラキラと光っていて、あまり深くないからなのか透明だからなのか、底まで見える。
ゴミ1つ見えないし、富士山の天然水並に美味しそうだ。わかりづらいかもしれないけど。
よーく見てみると、陽の光の反射で光っていたのかと思っていたけど、明らかに違う光もあった。
こう、水が自ら輝いているような。
見ていると、不思議と本能的に飲みたくなる。
喉も乾いたし、初めていくらか飲んでみる。
すると、なんだか力が湧き上がってくる感じになった。
なんだろう───今ならなんだってできそうな気がする。
だから、探検に行こうと思った。そしてそのまま湖から離れ、前から気になっていた奥にある建物に走った。