携帯も無いのに
情報が回るのが早いですね。
「マリ、卒業パーティーのエスコート、どうするんだい?」
学園から戻ると、やけに機嫌が良いミカリスお兄様とラファエルお兄様が我が家の応接室で寛いでいる。
「……ルシルお兄様にお願いしようかと思ってます」
お父様に相談すると解決が早いですが、今回の話、何処まで筒抜けになってるんでしょうか。
ウィリアム陛下がご存知ならば、かなり知れ渡っているかも。
携帯も無いのに、情報が回るのが早いですね。
「あーあ、従兄で無ければ僕達がマリの婚約者になれたのに」
ミカリスもラファエルの言葉に頷いている。
魔力が強い者同士が結婚すれば、子供も強い魔力を持って生まれるが、血が近いと精神に重大な欠陥を持つ子供が生まれる為、アレキサンド王国では法律で血族結婚を禁じている為、従兄達は生まれた時から私の結婚相手から外されていた。
「ルシルなら無難だね」
「だが、ルシルはアレクセイ殿下の側近としてパーティーに行くんだろ」
既に2人とも官僚として王宮勤めをしているから、その手のスケジュールは把握済みだ。
「そうですか。では、無理は通せませんからね。下手な方に頼むより、1人で行くべきなんでしょうか」
「ならばユリアスと行きなさい。彼は、まだ婚約者居ないし」
ミカリスお兄様の提案に一瞬遠い目をしてしまった。
ユリアス様は宰相でもあるジルコン公爵家の嫡男で、ジルコン公爵家とはお祖母様の義理の姉、カノコ様が嫁いだ先なので子供の頃から行き来はしていたが、どうもユリアス様とは上手くいってない。
憎まれてるのか?と思うほど無視をされたり嫌味を言われていたせいか、上手く話せないのだ。
「ユリアス様には……」
「ユリアスの方もちょっと学園内の面倒に巻き込まれたみたいで、な」
ミカリスお兄様、いつから内政にまで首を突っ込んでいるんですか?
まぁ、学園は治外法権ですから、官僚でもほいほい入れないですからね。
何があったのでしょう?
「わかりました。では、私からお願いをします」
「流石マリ。話が早くて助かるよ」
憂鬱ですが、卒業後私も官僚になりますし、お兄様達のお役に立つなら頑張ります。
ブックマークを押して下さってありがとうございます。
定期的に読んでくださる方がいると張り合いがあります。